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タカシの外資系物語

『インプロ』のすすめ2003.01.17

みなさん、明けましておめでとうございます。本年も「タカシの外資系物語」を、どうぞよろしくお願いいたします。


さて、みなさんは『インプロ』という言葉をご存知でしょうか ? インプロというのは、「インプロビゼーション (Improvisation)」の略で、「その瞬間のできごとに即興で対応していくこと」という意味です。私は学生時代に演劇をやっていたのですが、演劇の世界では「インプロ・シアター」という分野が存在しています。それは決められた台本がなく、言うなればその場の雰囲気で舞台が進行していくやり方のことをいいます。


最近、インプロの考え方がビジネスの世界にも広まってきました。実はつい先日、マネージャー・トレーニングの一環として「ミーティング・スキル」という研修を受講したのですが、そのときの外国人講師がしきりに「インプロ、インプロ」と言っていました ( そのときは何を言っているのかわからなかったのですが、家に帰ってからテキストを読み返していて理解しました。ちょっと情けないですね … )


その講師によると、日本人ビジネスマンはインプロ・スキルが低いとのこと。日本人にわかりやすくおきかえると、「アドリブがきかない」ということでしょう。ミーティングを実施している最中に、何か予期せぬことが起こったときの対応が下手なのだそうです。


「ま、そりゃそうだわな …」私はそのこと自体には、全くの同感です。日本人に即興性がない理由は大きく 2 点。ひとつには、そういう教育・訓練を受けてこなかったからです。私は、即興性を身に付けるためには、ゼミ形式の授業を数多く受ける必要があると考えています。そこでの教師 ( 教授 ) や同級生との掛け合いを通じて、いろいろなコミュニケーションのパターンを学ぶことができるのです。欧米では高校から導入されるゼミ形式の授業も、日本では大学の専門課程のごく限定された機会しか提供されません。


ふたつめは、これは根本的な話なのですが、そもそも日本では即興性をそれほど要求されないということがあげられます。例えば、会議で何かを決めることを考えてみましょう。以前から繰り返し述べているように、日本の会議は始まる前の根回しによって、ほとんどの重要な内容は事前に決められています。会議本番での即興性によって、その決定内容そのものがひっくりかえるようなことは、まずありえないのです。ですからアドリブがきくことは、「その人の司会は面白いなぁ」という評価にはつながりますが、「あの人はキレ者だなぁ」という本質的な評価にはつながりません。


わが社の幹部をはじめ、外資系企業の外国人の方々は、「日本人が実施するプレゼンテーションやミーティングは即興性がなく、面白くない」と言います。だからビジネスにスピード感がないのだとも言います。しかし一方で、全員が同意しながら物事を進めていく、「稟議・根回し」というのも手戻りがないと言う意味では優れた方法だと思います。何でもかんでもエンターテインメント方式で進めていくのは日本人には馴染みません。


ということで、私は「インプロ」を次のように定義しています。それは、「その場で出てきたアイデアを否定しない ( かといって肯定もせず、採用もしないのですが ) で議論を進めていく話術」ということです。例えば以下のような会話を考えてみましょう。


司会 「本日のテーマは、来年度のマーケティング方針についてです。何かいいアイデアはありますか ?」


A 「思い切って TVCM に打って出るというのはどうでしょうかね」


司会 「わが社では TVCM に打って出るようなマーケティング費用は許されていません。その案は対象外とします」( 1 )


これでは面白くありませんね。司会者は時間内に議論に収拾をつけるという役割があるものの、このようなやり方では斬新な発想は生まれてきません。また、 A さんの気分を害してしまうかもしれません。では、( 1 ) の会話を以下のように変えるとどうなるでしょうか。


司会 「TVCM というのは多額の費用がかかるため、様々な観点から検討する必要があります。しかし A さんの発想はこれまでなかったものですね。 A さん、わが社にとって TVCM が必要だと感じた理由は何なのでしょうかね ?」


A 「それはですね ……」


てな具合に話が展開するわけです。私の理解では、こういう話の持っていき方のことを「インプロ・スキル」というのです。


わが社の「ミーティング・スキル」テキストには、インプロの極意として、「You should not say it is an impossible job! ( 「それは不可能だよ ! 」と言ってはいけない ) 」と書かれています。つまり、一見すると実現不可能なアイデアや取るに足らない意見にこそ、問題の本質が隠されている。常識にとらわれずに、マイノリティを大事にすべし。ということを言っているのでしょう。


今年も日本経済の行く末は、不安定かつ不透明なままのようです。そんな

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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