グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

『自由』 の中の 『責任』2002.05.31

今回は、私がある社内ミーティングの企画をしたときの話をします。


私は上司の Jim から、ある会計ソフトについて社内勉強会を開くように指示されていました。幸い、そのソフトを開発しているメーカーに知り合いがいたので、私は彼に「出張デモ」の依頼をし、早速段取りに取りかかりました。


まず日程を決め、次は会議室を予約します。「せっかくだから、 30 人収容の部屋を使って、大々的にやろう !」私はオフィスで一番大きい会議室をおさえ、私が所属する部門全員に以下のメールを発信しました。


「みなさん、来る○月X日に、△△ソフトのデモを実施します。参加希望の方は、返信ください ( 先着 30 名 ! )。なお、講師は社外の方ですのでくれぐれも失礼のなきよう …」


△△ソフトは業界で注目を浴びているソフトでもあり、メールを出した翌日に、参加希望者は 30 名を超えました。


「みなさん、△△ソフトのデモにつきましては、希望者が定員を超えましたので、締め切ります」


よしよし、うまくいきそうだ … 私は気分よくデモ当日を迎えました。


デモ当日、クライアントとの外部ミーティングを終え、私は急いで会場に向かいました。会場では、サポートをお願いしていたトモユキが、参加者への対応などで四苦八苦しているはずです。


「トモユキ、ごめーん。会議が長引いちゃって …… 」


「タカシさーーん、どうしましょう …… 」


トモユキは、今にも泣き出しそうな表情です。見ると、参加者であふれかえっているはずの会場には、 3 人しかいないではないですか !


ガーーーーーーーン !!!!! 「みんな来るって言ったのに …… 困ったな、とにかく何とかしなきゃ …… 」


私は自分のプロジェクトメンバー全員に声をかけ、一部は関係ない知り合いも動員し、何とか 12 名まで集めました。講師である友人も、やや不快な顔をしていましたが、まぁ許してもらえるレベルだったと思います。


その日の夜のこと。


「いやぁー、本当にヒドい目にあったよ。ほとんど無断で欠席するんだから …… 」


私は Jim に、デモのドタバタぶりを愚痴っていました。すると、Jim は血相を変え、こう言いました。


( Jim )「タカシ、欠席者の名前を教えてくれないかな。今期の評価に反映したいと思う


( タカシ )「いや、そりゃ腹は立つけど、そこまでしなくても ……」


( Jim )「会社にこれだけの『損害』を与えた人間を放っておくことはできないんだよ ! 」


( タカシ )「へ ?」


Jim が言うには、今回の件では、欠席者は 3 つの損害を会社に与えたことになるとのことでした。


まず、「機会損失」("Opportunity Loss")、つまり本来参加すべき人が参加できなかったことによる損失。確かに、 30 名を上限に、早々に締め切りましたので。


2 つめは、「評判低下」("Reputation Loss")、私の友人が「なんて失礼な会社なんだ」と思い、そのことを外部で話す可能性があるということ。


最後に、「時間のムダ」("Resource Loss")、私とトモユキが働いた時間がムダになったということ。


最後に Jim は、こう付け加えました。


「タカシ、確かにわれわれは 『自由』 なんだ。勤務時間もフレックスだし、成果物さえ出していれば、どこで仕事をしたってかまわない。だけど、『自由』 の中にだって 『責任』 は存在する。自由であればあるほど、その責任は大きくなる。それがなくなったら、単に無秩序な集団と同じじゃないか」


私にも原因がないわけではありません。忙しくて、前日に Reminder ( 催促状 ) を出せていませんでした。でも Jim は、そんなこと原因ではないと言います。「行くと言ったら行く、やると言ったらやる、それが『責任』なのだ」と ……


外資系企業では、このような「無責任さ」を厳格に評価します。その裏には、「あなたが 『くだらない』と思って軽視したことの裏には、想像もつかないほどの手間とコストがかかっている。また、些細なことが企業の評判を下げる恐れがある」という考えがあるからです。


日本企業にいるときには考えもしなかったことですが、結局のところ、企業は私たちの『責任』=コミット( やります ! ということ ) にオカネを払ってくれているのです。当たり前の話なのですが、これって、ついつい忘れがちなことですよね。


( Jim ) 「結局、会社にとってはあまり効果的なイベントではなかったわけだな。そういう意味では、本件に関するタカシの評価も高くはないな ……」


…… や、やっぱりね …… そう来ると思ってたんだよなぁ。言わなきゃ良かった。トホホ ……

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム

合わせて読みたい

---