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タカシの外資系物語

外資の手口にご用心 ! ( 外資系銀行のケース )2002.04.12

ほんの 1 週間ほど前のこと、私の会社の近くに新しい銀行が開店しました。その銀行は、 1 年前に破綻し、外資系の投資組合に買収された後、「外資の手法を取り入れた銀行」として新たなスタートを切ったのです。私は金融 IT コンサルタントの端くれとして、業界調査のためにその新しくできた「外資系銀行」の「偵察」に行くことにしました。


開店初日、銀行サイドが人集め策として、「ゴルフボール」と「アロマオイル」をばらまいたため、すでに銀行の周りには多くの人が集まっていました。しかし大半の人は、その「景品」をもらうと、足早に去っていきます。実際に店内に入っていく人は少ないようです。さて、人々はなぜこれほどまでに、その銀行に立ち入ることを警戒しているのでしょうか ? それは、その銀行が、「窓口の全くない」「銀行員が客と 1 対 1 で応対する ( いわゆるコンサルティング型 ) 」銀行だったからです。


「うぬぅぅぅ …… 」私もたじろぎました。それはまるで、黒船を初めて見た日本人のように。しかし、次の瞬間、思い切って足を踏み入れていたのです。


( 受付嬢 ) 「いらっしゃいませ ! 」


な、なんと、その受付嬢はヘッドアップのヘッドフォンをしているではありませんか ! ( 「一体、だれに何を報告するのだろうか …… 」) しばらくすると、店内からブランドものに身を固めた、銀行員がやって来ました。


( 銀行員 ) 「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で ? 」


( 「ど、どのようなご用件だとぉぉ …… 開店したての銀行に来とるんだから、口座開設に決まっとるやんけ …… 」)


( 私 ) 「こ、口座開設を …… 」


( 銀行員 ) 「了解いたしました。では、お二階に方で手続きいたしますので、どうぞ」


やたらぐるぐる回るらせん階段を上り、 2 階にたどりついた私を迎えてくれたのは 10 台程度のソファと最新鋭の PC でした。


( 銀行員 ) 「どうぞ、おかけになって、ヘッドフォンをつけてお待ちになって下さい。」


( 「客にまで、ヘッドフォンだとぉぉ …… マ、マイクまでついとる。 DJ か、わしは …… 」)


ヘッドフォンをつけると、きれいな女性の声が聞こえてきました。


( 女性の声 ) 「本日は、○○銀行にご来店いただきましてまことにありがとうございます。これから口座開設の手続きを進めさせていただきます。まず、お客様のお名前をお話ください」


(「このマイクに向かって、しゃ、しゃべれとな ? なんと、こっ恥ずかしい事になったものか …… 」)


( 私 )「なら … たかし … 、です。」


( 女性の声 )「申し訳ございません。もう少し、大きな声ではっきりとお話ください」


( 「にゃ、にゃんだとぉー ! 」 )


( 私 ) 「奈良タカシ ! 」


( 女性の声 ) 「次は住所です」


( 私 ) 「て、手で書かせてくれませんか、ね ? 」


( 女性の声 ) 「申し訳ございません。もう少し、大きな声ではっきりとお話ください」


( 私 ) 「………」 ( 「頼むから、早く帰らせてくれ … 」 )


…………


「ありがとうございましたぁー。またのお越しをー ! 」


結局、最新鋭の「口座開設マシン」を拒否した私は、手書きで口座開設書類に記入し逃げ去るように銀行を後にしました。


さて、以上のエピソードは、若干大げさに表現しましたが、ここで言いたかったことは、外資系企業の日本進出においては、「日本に適用できるかどうかの見極めが重要」だということです。一般大衆や私の反応を見てもわかる通り、この銀行のコンセプトは日本人に受け入れられにくいようです。まぁ、結果がどうなるか、もう少し時間がかかるところでしょうが。


外資系企業にとっては、日本は巨大で魅力的な市場なのかもしれません。しかしその反面、非常に攻略が難しい市場であることも理解せねばなりません。同時に、外資系企業に転職するみなさんも、「外資系だから何もかも OK 」というわけではなく、「そのやり方が、日本の市場で通用するかどうか」について、厳しい目で判断する必要があると思います。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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