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今月に入り、米IBMのCEOが、「AIで置き換えられる職種に関しては、採用を停止する予定だ」と発言しました。これは、主に顧客と対面しない人事などのバックオフィスなどの職種が対象で、「この5年でAIや自動化の影響で、採用停止するのは全体の3割くらいになり得る」ということです。IBMの社員数は世界的に26万人ほどなので、7800人の計算になります。
一方、ハリウッドでは、ChatGPTを含むAIを映画製作に利用しようという映画製作会社に対し、今月、全米脚本家組合が抗議ストを行いました。
いよいよAIによる淘汰が現実味を帯びてきました。今後、こうして採用を減らす企業は増えるのでしょう。
AIの影響を受ける職リストが次から次に出てきますが、今月、出てきたのは世界経済フォーラム(WEF)が2年ごとに発行する雇用予測レポート(2023年度版)です。
2022年11月から2023年2月にかけて、45か国の27業界の企業803社(計1130万人を雇用)を対象にアンケート調査をしたところ、今後5年で23%の職が何らかの影響を受けるという結果でした。ここ5年で、8300万の職が消え、6900万の職が新たに生まれるということで、差し引き1400万(2%)の職が減るというのです。(なお、同レポートでは国別のデータも掲載されており、日本では24%の職が何らかの影響を受けるということです。)
一部の職が淘汰・創出される要因には、AIなどの技術革新だけでなく、気候変動も含まれています。ただし、回答企業が「一部の職が淘汰される最大の要因はAI」と考えており、今後5年で75%近くが自社で「AIやビッグデータ、クラウドコンピューティングを導入する」 と答えています。「その結果、仕事が創出される」と考える企業は50%で、「仕事が奪われる」と考えているのは25%でした。
そして、雇用創出を牽引するのが、ビッグデータ・アナリティックス、気候変動・環境管理技術、エンクリプション、サイバーセキュリティといった分野です。
下記は、今後5年で増加幅(割合)がもっとも大きい職種と、減少幅(割合)がもっとも大きい職トップ10です。なお、これは世界の平均値です。
増加幅が最大の職種 | 減少幅が最大の職種 | |
---|---|---|
1 | AIおよび機械学習スペシャリスト(40%増) | 銀行窓口および関連業務(40%減) |
2 | サステナビリティスペシャリスト | 郵便業務 |
3 | BIアナリスト(35%) | レジ・発券業務 |
4 | 情報セキュリティアナリスト | データ入力業務 |
5 | フィンテックエンジニア | 秘書業務(35%減) |
6 | データアナリストおよび科学者(34%増) | 資材・在庫管理業務 |
7 | ロボティックエンジニア | 会計・経理・給与計算事務(29%減) |
8 | 電気工学エンジニア | 立法者・議員 |
9 | 農業機械士 | 統計・財務・保険業務 |
10 | DXスペシャリスト(32%増) | 訪問セール、新聞売店、露天商関連業務 |
(世界経済フォーラム“Future of Jobs 2023”のデータにて作成)
もっとも急速に増える職の9位に「農業機械士」が入っているのが面白いですね。実は、絶対数では、これがもっとも増える職種なのです。続いて、トラックおよびバス運転手、職業訓練指導員、整備士、機械修理工の増加数が最大で、2023~207年の間に200万職増える見込みだそうです。
減少する職種も、絶対数では、データ入力業務がダントツ一位で、今後5年で800万職減るという推定です。これと、秘書業務と会計・経理事務を含めた3分野が減少する職の半数以上を占めています。
実は、国別データを見ると、国によって、結構、ランキングが違い、概して先進国と非先進国で大きな違いがあります。日本のデータを見ると、下記のとおりです。
日本での増減トップ5
増加幅が最大の職種 | 減少幅が最大の職種 | |
---|---|---|
1 | データアナリストおよび科学者(53%増) | 会計・経理・給与計算事務業務(36%減) |
2 | AIおよび機械学習スペシャリスト(30%増) | 秘書業務(27%減) |
3 | ビジネス開発スペシャリスト(28%増) | 工場製造業務(24%減) |
4 | DXスペシャリスト(26%増) | 一般・業務管理業務(17%減) |
5 | プロジェクトマネジャー(17%増) | ビジネスサービス・管理業務 |
(世界経済フォーラム“Future of Jobs 2023”のデータにて作成)
誰もがデータ科学者やAI技術者になれるとは思いませんし、なる必要もないと思いますが、少なくとも将来先細りの職種を選ぶのは避けたいものです。
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大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。