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有元美津世のGet Global!

AI時代のキャリア選択2023.02.28

 

  最近、AIチャットボットのChatGPTが、日本を含め世界的に大きな話題になっています。

  「チャットボットなんて、前からあるよね?」という人もいるでしょう。私も、そう思っていました。現在、顧客サポートなどで使われているチャットボットって、既存のFAQをコピペするくらいで、ほぼ役に立たないんですよね。それが、この自然言語処理モデルGPT3.5を使ったChatGPTは画期的なのです。

 

ChatGPT

 

  まず、ChatGPTは、会話形式で質問に答えることができる点が、既存の検索エンジンと異なります。既存の検索エンジンでは、いくつもの選択肢が表示され、それをひとつひとつ読んで、取捨選択する必要がありますよね。

  また、たとえば、難しいコンセプトを「簡単な言葉で、10歳の子でもわかるように説明して」といったリクエストにも答えられます。

  その他、「社内イベントのアイデアを出して」「今日は疲れてるから、簡単に作れる物はないかな。冷蔵庫には〇〇と△△がある」といったリクエストも可能です。

  さらに、これまでのチャットボットと違い、長めの文章を作成することができます。詩や歌、記事やエッセイを書くこともできれば、メールや履歴書に添付するカバーレター、辞表を書くことだってできます。人間のようにクリエイティブな創作はできませんが、「川端康成のスタイルで小説を書け」「中島みゆきのような歌を書いて」といったリクエストをすれば、そうしたスタイルも可能です。現に、アマゾンのKindleストアには、今、AIで作成した電子書籍が殺到しているそうです。

  ChatGPTで作成した論文を医療学術誌に投稿したら、掲載のための査読(peer review)に合格したというケースも出てきています。論文には梗概(synopsis)をつけなければなりませんが、そうした(あまり重要でない)作業はChatGPTが簡単に作成してくれるので、もう自分でやらなくてもよくなります。

  この他、イベントの概要、リスティング掲載時の宿泊施設や不動産の概要など、ChatGPTを使えば、何百件という数を迅速に作成できます。

  いずれは、メールへの返信も自動的に作成することが可能となるでしょう。人間は、それを間違いがないかチェックして手直しをするだけでよくなるのです。

 

Microsoft Office

 

  ChatGPTを搭載したBingがすでに限定的に公開されていて話題になっていますが、ChatGPTを開発した会社には、Microsoftが、過去2回にわたって投資をしています。今年に入って、さらに数十億ドル以上の投資をすると発表しており、OutlookやOfficeを含む同社の全製品にChatGPTを搭載する計画です。

  Wordには、すでにスペルの間違いなどを指摘する機能(spell checker)が搭載されていますが、表現を変えたり、文章を簡潔にするための指摘などもできるようになりそうです。

  Wordで作成したレポートの要約をPowerPointのプレゼンに変換したり、Microsoft Teamsを使って行われたオンラインミーティングの要約を作成したりといった作業も可能となります。Power Pointも、(ChatGPTを開発した会社の)デジタルアート生成AIツールを搭載すれば、ビジュアルも自動的に作成できるようになりますし、Excelも、たとえば「石油産出国トップ5」と入力すれば、データを基に自動的にグラフを作成してくれるようになるのです。

 

人間に劣らない

 

  すでに、ChatGPTを使って試験的に記事を書いている米ITメディアもありますが、「今のところ、ChatGPTは下書きには使えるが、記事を完成させるには人間による事実チェックや編集が必要だ」という意見が多いです。人間が書いた記事でもファクトチェックや編集が入りますので、その辺は、あまり変わらないのではないでしょうか。ChatGPTより文章が下手な人なんていくらでもいます。(ジャーナリズムで有名な大学を出たアメリカ人ライターが、恐ろしい文章を書いていたのを見たことがありますが、絶対、ChatGPTの方がうまい。)

  ネット記事が主流となり、SEO(検索エンジン最適化)目的で価値の低い記事が大量に作成されるようになってから、ファクトチェックや文章の構成がひどい記事も少なくないので、ChatGPTが作成する記事は、それと変わらないと私は思っています。

  SEO目的で価値の低い記事を大量生産するコンテンツミル(content mill)は、ハウツー記事を得意としますが、ChatGPTも、小説などよりも、そうした記事の作成に適していると言えます。たとえば、投資に対するアドバイスであれば、「不況時には、市場の変動に耐えられるような分散投資ポートフォリオを築くことが重要だ」といった一般的なアドバイスならできます。(ベテラン投資家には何の役にも立たない)そんな一般的なアドバイスをしている人は、この世にいくらでもいます。

 

広告コピーも

 

  ChatGPTは、広告コピーやマーケティングメール、ソーシャルメディアのコンテンツなどの作成にも利用でき、すでにChatGPTを利用して試験的に広告スローガン作成している世界的有名ブランドもあります。

  こうしたマーケティングコピーは、私を含め大半の素人には書くのが難しいです。世間では、文章を書くのが苦手な技術者や専門職などは多数おり、とくにマーケティング用コピーは誰にでも書けるわけではありません。企業にとっては、いちいち専門のコピーライターを雇ったり、外注していたのでは、時間やコストがかかります。ChatGPTを利用すれば、人が作成するよりも、何倍ものスピードで作成できるのです。その道のプロに比べれば劣るかもしれませんが、素人よりはうまいと私は思います。少なくとも中小企業であれば、ChatGPTが作成したコピーで十分使えそうです。

  アメリカには、こうしたコピーやコンテンツ作成サービスを提供している企業はすでに存在します。日本語を含む24言語で入力でき、タグラインやソーシャルメディアのテキスト、宣伝メール、製品説明などを29言語で作成可能であるという企業もあります。

 

特別なスキルを

 

  これは、今後、AIができるようなことしかできない人間の仕事はなくなるということでもあります。

  今、日本でも、セルフレジが急速に普及していて(セルフレジしかない店舗も)、スーパーのレジ担当者が一気に減りましたよね。以前から言われてはいたけれども、実際に置き換わり始めると、こんなに急速に進むのだということを目のあたりにしました。

  上述のように、私は、下手なライター、コピーライター、 デジタルコンテンツ・クリエーターが不要になる日は近いと思います。

  上記ではライティングを中心に書きましたが、ChatGPTはコーディングやデバッグもできるので、初級レベルのコーダーなども置き換えられます。実際に、グーグルがChatGPTをテストしたところ、初級レベルのコーダーとして採用できる出来だったそうです。

  さらに、ChatGPTは、アメリカの司法試験(bar exam)には、近いうちに合格しそうですし、パラリーガル(paralegal)は置き換えそうです。私なんかは、裁判官も、過去の莫大な数の判例を瞬時のうちにチェックでき、私情の入らないAIの方がよくない?と思ったりします。

  つまり、今後、AIにはできないような、人間(自分)にしかできないようなスキルを身につけておかないと、いつ淘汰されるかわからないということです。とくに、若い皆さん、そういうことも考慮し、10年先(いや5年先か)を見越して、キャリアを選んでくださいね。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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