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タカシの外資系物語

日本は今こそ Philippine に学べ?!(その4)2017.10.17

Taoさんは何語を話しているか?!


(前回の続き)アプリの開発・保守をアウトソースとして請け負う、“オフショア” 大国としてのフィリピン。フィリピンがオフショア大国になりえたその理由とは?

 

私 「Hi, Tao !」

Taoさん 「Hi, Takashi ! はじめまして、よろしくお願いします!」

 

今回の出張において、現地の案内係をお願いしているTaoさんは、中華系のフィリピン人です。アテネオ大学でコンピュータ・サイエンスを学んだとのこと。

 

ちなみに、フィリピンの大学事情をご説明しておくと、レベル的には、フィリピン大学がNo1だと思います。Taoさんが卒業したアテネオ大学は、それに次ぐイメージなので、日本でいえば、早慶に該当するレベル。いずれにしても、名門であることは間違いないでしょう。

 

私 「それにしても、すごい建物ですね。いったい、何名ぐらいの人が働いているんですか?」

Taoさん 「だいたい、2,000名ですかね」

私 「に、2,000名っ!!」

Taoさん 「同じ規模のセンターが、フィリピン中部のセブ島にもあります・・・」

 

さて、ここでみなさんに問題です。Taoさんと私は何語で会話しているでしょうか? 日本語で書いているので、全くわからんでしょうが・・・。正解は、日本語です。Taoさん、めっちゃ流暢な日本語話します。私がこれまでに話をした外国人の中でも、屈指のレベル。こりゃ、電話口で話しても、外国人と気付く人はいないんじゃないでしょうか。

 

で、Taoさんは、オフィスでは英語を話します。これも、流暢かつ超スタンダードな英語です。アジアの大陸(ex シンガポール)でも、当然みなさん英語を話すわけですが、結構強いアクセントがある。しかし、Taoさんには、なまりがほとんどない。英会話のテープを聴いているようです。

 

実は、これがフィリピンをオフショア大国とならしめている、大きな要素なのです。つまり、スタンダードな英語と日本語でコミュニケーションできる人材が、フィリピンには多数存在するのです。

日本の外国語教育の問題点とは?!


私 「英語と日本語は、いつから勉強しているのですか?」

Taoさん 「英語は中学、日本語は高校からですね。」

私 「私も中学から英語を勉強してるんですが・・・(T-T) どのように勉強したら、そんなに流暢に話せるようになるんだろ・・・(T-T)(T-T)」

Taoさん 「それは多分、“教科書”の問題だと思います」

私 「“教科書”っ?!」

 

Taoさんの言い分はこうです。フィリピンでは、英語を学ぶ際には、英語で書かれた教科書を使って、完全に英語の環境で学習します。日本語を学ぶ際も同様です。

 

一方、日本人が外国語を学ぶ際には、日本語で記載された外国語の教科書を用います。かつ、学校教育においては、日本人が、日本語で、外国語を教えます。だから上達しないのだ、とTaoさんは言います。

 

Taoさん 「英語の先生は、本当に英語しかできない人ばかりなので、生徒側が英語を理解しないと、授業で何を話しているのかわからないのです。日本語も同じでした。授業についていけないと、落第になりますから、生徒はみんな必死で勉強するんですよね。もし、タガログ語(フィリピンの現地語の1つ)で授業されていたら、決して上達しなかったと思います・・・」

 

ま、そういうことなんでしょうな。もちろん、日本でも、英会話教室や専門学校では、ネイティブの先生から学ぶことも可能です。学校教育の場でも、ネイティブの先生から学ぶ機会は徐々に増えている。しかし! 全然足りないのです、多分・・・。日本人教師の教え方が悪いんじゃなくて、教わっちゃいかんのです、短期間に外国語をモノにしたいのならば! 結構、目からウロコの指摘でした・・・。

中国がフィリピンに負ける理由とは?!


日本語と英語の双方がネイティブ級で、高等教育を受けた人材が多数存在する・・・ 実は、このような要件を備えた国の元祖は、フィリピンではありませんでした。

 

私 「オフショアで、ITのアウトソースを受託する、という意味では、中国は競合先ではないのですか?」

Taoさん 「かつては、そうでしたね・・・。でも今は、この分野では、フィリピンの方が圧倒的に強いです」

私 「どうしてだろ?」

Taoさん 「人件費の問題ですね」

 

確かに、私が以前勤めていた会社では、中国に大規模なITオフショアの拠点を持っていました。しかし、ここ数年ほどの間に、規模を相当程度、縮小したと聞いています。

 

Taoさん 「中国人の人件費が高くなりすぎたんで、先進国からアウトソースに出すメリットがなくなったんです。だから、人件費の安い、フィリピンが強くなったんですよ」

私 「なるほどねぇ・・・ でも、フィリピン国内でも、競合先との競争、例えば、人材の引き抜き合戦とか、大変じゃないの?」

Taoさん 「その通りですね。だから、いろいろと、“工夫”をしているのです・・・」

 

さて、Taoさんが言う人材のリテンション(引き留め)のための“工夫”とは、何なのか? それこそが、フィリピンの強さを物語っている本質ともいえるのです。

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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