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有元美津世のGet Global!

ゴールデンビザ--長期滞在・投資ビザ(1)2024.01.23

 

これまで、デジタルノマドビザ(DNV)に関しては、何度か書いてきましたが、DNVの場合、多くの場合、滞在期間は最長で1年、更新できて2年です。外国で1年以上の長期滞在をするには”Golden Visa”などの長期滞在ビザを取得するという方法もあります。

"Golden Visa"というのは、渡航先の国で規定の投資を行なうことで取得可能な長期の在留資格のことを指します。国によっては、永住権や市民権(国籍)を取得できる場合もあります。

現在、30ほどの国がGolden Visaを発給しているようですが、今回は、日本からも人気の東南アジアの例を紹介したいと思います。

 

インドネシア

 

一番最近では、昨年、インドネシアがGolden Visaの発給を開始しました。同国内で法人を設立しない個人の場合、国内で35万米ドル以上の預金や株式投資などを行えば5年間の在留資格、70万米ドルの預金や投資を行えば10年の在留資格が得られるというものです。不動産購入の場合、100万ドル以上の物件というのが条件です。

Golden Visa発給開始から1週間後、最初に取得したのが、OpenAIのCEO、Sam Altmanで、同ビザで海外からの投資を招致したいインドネシア政府にとって、世界的に大々的なPRとなりました。

なお、インドネシアでは、2022年に5~10年滞在できる”Second Home Visa”の発給も始めましたが、国内の銀行に13万ドルを預金するというのが条件です。不動産購入でも取得可能ですが、バリ島であれば32.5万ドル以上の物件、その他の島であれば13万ドル以上の物件である必要があります。

Second Home Visaの方が必要な資金が低いので、個人投資家の場合、わざわざハードルの高いGolden Visaを取得する人がいるのかという疑問があります。

なお、インドネシアでは、デジタルノマドビザは導入されていませんが、最高半年まで滞在できるビジネスビザ(B211)を取得して、ノマドをしている外国人は多数います。

 

マレーシア

 

Second Home Visaといえば、マレーシアが2002年に導入したMM2H(Malaysia My Second Home)ビザが有名です。(※1)ところが、(対象を富裕層に絞るため)2021年に発給条件が改定され、必要な収入が月1万リンギッド(RM)から4倍のRM4万に引き上げられました。RM4万といえば、当時のレートで100万円以上だったので、クリアできる人が減り、申請者数が激減しました。

一方、ボルネオ島の自治州サラワク州も、以前から独自のMM2Hビザを発給していますが、連邦政府のものより条件が緩いのです。さらに、昨年、隣のサバ州でも独自のMM2Hビザの発給を開始しましたが、やはり連邦政府より条件が緩いものです。

自治州に入境する際には、マレーシア国籍でも入国審査が必要となりますが、反対に自治州から(クアラルンプールやペナンのある)半島に入境する際には国内移動扱いなので、サラワク(Sarawak)やサバ(Sabah)のMM2Hを取得して、半島に滞在する人もいるようです。

こうした中、MM2Hの人気を回復するため、マレーシア政府は、昨年12月に、再度MM2Hを改定し、発給条件を緩和しました。新たに3つのランクが設けられ、最低のランク(シルバー)では、国内の定期預金にRM50万(約1600万円)を預金すれば、5年の在留資格が得られ、更新も可能です。最高のプラチナでは永住権の取得も可能となりました。

マレーシア政府の一番のターゲットは中国の富裕層なのですが(2018年時点で取得者の3割が中国人)、(※2) 2018年には中国からのMM2Hビザ取得者が5600人以上だったのが、改定後の2021年には400人にも満たなかったそうです。中国の場合、国外に持ち出せる資産に上限があるため、マレーシア国内での定期預金高RM100万以上という条件引き上げがネックとなりました。

ところで、日本ではMM2Hといえばリタイアメントビザと考えられることが多いですが、今回、受給資格が35歳から39歳に引き下げられ、皆さんのような現役世代でも取得は可能です。サラワク州やサバ州のMM2Hも、30歳から取得が可能です(条件は年齢で異なります)。

なお、マレーシアでは、2022年に最高1年滞在可能なデジタルノマドビザも開始しましたが、職種がITやデジタル関係に限られます。必要な所得は年2万4000ドルなのでハードルは低いです。(母子留学する際に、父親も帯同するためにデジタルノマドビザを取得するといったケースもあるようです。)

 

タイ

 

マレーシアが、新たなMM2Hプログラムに、プラチナ、ゴールド、シルバーというランクを導入したのは、タイが、昨年から開始した”Thailand Privilege”会員権の真似をしたのではないかと思います。(このプログラムの前身だったElite Visaは、2023年9月で終了。)このプログラムは、5~20年の在留許可(ビザ)を特典付き会員権として切り売りするものです。

これ以外にも、最高10年滞在可能な長期滞在者向けLong-Term Resident Visaがあり、富裕層、裕福な年金生活者、リモートワーカー(年収8万米ドル以上、そうでない場合、修士号取得などの条件あり)、高スキル人材(指定の業界勤務)などを対象としています。

タイには、以前からリタイアメントビザがありますが、対象が50歳以上なので、それ未満の人が長期滞在するのが非常に難しかったようです。(ビザ免除の滞在期間が90日のマレーシアと違い、タイは30日のみで、ビザを延長したりvisa runをして最長60~90日。)

欧米人にも人気のタイは、コロナ前、母国に帰る航空運賃も払えない路上生活者やbegpackerが問題になっていましたが、「そういう人たちには来ていただきたくない」ということなのでしょう。



(※1)実は、私も2016年に、MM2Hビザを取得しようと思って、無犯罪証明を含め必要書類を用意したのだが、試験的にペナンに半年滞在して、結局、申請しないことに。移住する前に、こうして少なくとも数ヵ月は滞在してみることは必須。
(※2)次に多かったのが日本人(11%)

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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