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タカシの外資系物語

灰色の天井を補修せよ ! ( その 2 )2009.05.18

「年功序列」 が素を作る

前回の続き) 前回のコラムでは、「グレー・シーリング(灰色の天井)」という言葉について、わが家のマンションの天井にできた「疑惑の灰色の点」を例 (?!) に挙げ、説明しました (全然、例になっていないという説もあり・・・) 「グレー・シーリング = Gray Ceiling」 とは、会社などの世代構成において、上の年齢層が詰まってしまって、若い世代が台頭できない状況を指します。“gray” には、「高齢の」という意味がありますので、まさに、「年寄りが天井で詰まっている ! 」というイメージです。


ほとんどの日系企業では、グレー・シーリングが存在している・・・ というか、その前提で人員構成が組まれています。部長・課長クラスはほぼ一定の年次で構成され、下の年次がそこに食い込むことは非常に困難。若い層は、どんなに優秀で力があってもマネージャーにはならず、「優秀な若手」としてしか扱われません。
このような状況を引き起こしている最大の理由は、やはり「年功序列」に求められるでしょう。もちろん、年功序列においても同じ年次間で、ランクに多少の差は生じます。しかし、年功序列の特徴は、「同じ年次なら 1 つの “層” を形成し、その層の中でのみ差がつく」ということだと思います。


例えば、「 部長 - 次長 - 課長 - 係長 - 主任 - ヒラ 」 という階層があった場合を想定してください。本当に実力主義が採用されているなら、同じ年次で部長がいれば、課長もいるし、ヒラもいる・・・、となるのが普通でしょう。しかし、年功序列制度においては、上も下も突出したランクが出ないように調整されます。

 

年次が同じなら、「 次長 - 課長 - 係長 」のどこかに収まっているような配分です。結果、ものすごく優秀な人が部長になれない一方で、ダメな人も係長ぐらいにはなれるという仕組み。日系の銀行に勤めていたとき、「この人はどうしようもないでしょ・・・」という人が、なぜか係長になったことがありました。よくよく聞いてみると、「同期でヒラ社員だったのはその人だけだったので、人事が配慮して、無理やり係長にした」とのこと。「無理やり」って、どないやねん・・・ 


いずれにしても、同じような年次の社員が、同じようなランクを占めることで、その層が重石となって天井を作る・・・ これが「グレー・シーリング」の素となります。

「年次の歪み」 が拍車をかける

さて、昨今問題になっているグレー・シーリングでは、上記に加えて、さらに深刻な要素があります。それは、「年次の歪み」です。ある特定の年次に偏った形で社員が構成されている場合、天井がとんでもないぐらいに膨らむケースがあるわけです。


例えば、 2007 年に定年退職が集中した「団塊の世代」や、1988~1991 年の「バブル世代」(金融機関による大量採用)、 2000 年前後の「ITバブル世代」(IT企業による大量採用)など、業種・企業毎に、人員構成はかなり歪んでいます。また、1991年後のバブル崩壊後は、各企業とも採用人数をかなり減らしたこともあり、膨らんだり、凹んだり、採用ゼロだったりと、年齢別に見た構成は、いびつな凸凹になっているケースが多い。


そんな状況の中で、上記で述べた「年功序列型の層構成」を守っていると、下層の昇進がますます遅れてしまいます。中には、「 5 年前なら課長になれたかもしれないのに、今の状況だと、あと 10 年は無理だな! もう、出世は諦めたぁーーー 」と、半ばヤケっぱちになっているような人もいるのではないでしょうかねぇ。

 

もちろん、日本型経営において、年功序列というのは、一定の役割を果たしてきたことは認められます。出る杭を叩き、下を引き上げていくことで、組織内の軋轢を押さえ、円満な風土を醸成するにはうってつけの策でした。しかし、それ一辺倒では、弊害も出てくる。今こそ、それを是正する時期のように思います。

外資にも、グレー・シーリングは存在する!

次に、外資のやり方を見てみましょう。「外資は完全実力主義だから、年功序列もグレー・シーリングもないんだろう?」 いや、そうでもありません。確かに、外資には年功序列という発想はほとんどありませんが、そんな外資でもグレー・シーリングは発生します。

 

多くの外資系企業では、実力主義=成果主義 が採られています。それは、「成果を上げた人を上に引き上げる制度」であると同時に、「成果を上げなかった人を降格する(または、解雇する)制度」ですが、「普通の人」については基本的に特別な措置は講じません。つまり、可もなく不可もない「普通の人」は、常にたまっていく傾向にあるのです。


私の所属する外資コンサルティング会社でも、その傾向は見られます。例えば、10年前からずーーっと、マネージャーという人がたくさんいる。上位のパートナーにもなりそうもないし、かと言って、クビになるほどでもない、という人。こういう人がたまってくると、何が起こるか? それは、マネージャーの人数枠はほぼ一定に決まっているために、現状のマネージャーがいなくならなければ、下からマネージャーに昇進する人の人数が限定されてしまうのです。これこそ、グレー・シーリング ではないですか! つまり、年功序列をなくしたとしても、完全なる成果主義(できる人だけを残し、それ以外の人はクビ!)としない限り、グレー・シーリングは発生するということです。しかし、完全成果主義をとるのは、多くの企業において非常に難しい。また、成果主義自体のデメリット (正当な成果指標の設定が難しい等) も考慮すると、さらに困難です。


では、どうすればいいのでしょうか。 1 つには、「定年を早める」ということが挙げられます。ただし、景気がよくない昨今においては、まだ働けるのにリタイヤする人はあまり出てこないかもしれません。次に考えられるのは、「天井にたまっている人を、他の役割に就ける」というもの。みなさんの会社にもいらっしゃると思うのですが、「部長」「担当部長」「部付部長」等々、部内に「部長」と名のつく人がたくさんいます (本当の「部長」にあたる人は一人だったりします)。こういう場合に、「部長」はあくまでも 1 名とし、その人には、これまで通りビジネスの管理・意思決定をしてもらう。他の「部長クラス」の人は、「教育リーダー」(部内社員の教育・育成指導に責任を持つ)や、「合理化リーダー」 (部内の事務合理化に責任を持つ)など、「教育」「合理化」といった切り口で組織全体に貢献をしてもらうというもの。ま、暫定的な措置であることにはかわりはないですが、たくさんの船頭がたまってグレー・シーリングを形成しているよりは、弊害が少ないように思います。


いずれにしても、完璧な解決策はなさそうです。ますます成果主義が採用される一方で、景気はすぐに回復しそうにない。グレー・シーリングをなくす唯一の方法は、「だれにも文句が言えないほどの、卓越した成果を挙げる」ことで、シーリング (天井) を自力で突き破るしかないのかもしれません。


さて、わが家の天井にできた「疑惑の灰色の点」はどうなったか。結局 4 万円払って、壁紙を張り替えてもらいました。修繕の当初見積が「10万円」でしたから、かなり値切ったのですが・・・ でも、この不景気に4万はイタイ、トホホ・・・(T-T)
天井を修繕した翌日。ふと、隣で寝ている家内を見ると、またもや目を見開いて、天井を凝視しているではありませんか!

 

私 「ど、どうした!具合でも悪いのか?!」
トモミ(妻) 「ちょっと、アレ見てよ・・・」
家内が指差す先には、修繕して真っ白になった天井が・・・ と、おや!一部の壁紙がはがれかかっているではありませんか!

 

トモミ 「かなり値切ったから、手抜かれたのかしら・・・」
何でやーーーーーーーーーーーーーーーっ! ハァハァハァ・・・

 

会社のグレー・シーリング、よもや、はがれて落ちてくる・・・ なんてことはないんでしょうな。みなさん、くれぐれも注意してくださいね。トホホ・・・(T-T)(T-T)(T-T)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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