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タカシの外資系物語

キャリアを実現するための「就活」とは ? ( その 1 )2007.11.20

ここ数日、新聞や雑誌で、やたら目に付く 2 つの文字 … 「就活」。そう、今年も就職活動の季節がやって来ました。年内はエントリーシートやセミナーへの登録が中心で、年明けから実際の会社訪問が始まり、4 月には多くの学生が内定を得るというスケジュール。学生のみなさんは大変だと思いますが、体に気をつけて、悔いのない「就活」をしていただきたいと願っています。


さて、このコラムでも、折に触れて就職活動の話題を取り上げてきました。外資系企業を就職先の候補としている学生のみなさんへのメッセージとして 『外資系を目指す諸君へ』、 バブル末期 (1990年頃 ) の狂乱じみた就職活動の実態を紹介した 『タカシ・就職活動の頃』などなど。機会があれば、是非過去のコラムにも目を通していただければと思うのですが、私がこれらのコラムを通じてお話したかったことは、ただ 1 つ。それは、「就活で全てが決まるわけではない ! 」ということです。


実は私、学生時代には「就活で全てが決まる ! 」と考えていました ( ま、当時は「就活」なんていうハイカラな ( ? ) 略語は使ってなかったように記憶していますが )。つまり、就活を制する者は人生を制す、人生の勝者と敗者の分け目は就活にありーーーーーーーーっ ! ぐらいのことを思っていました。


では、私がその当時に定義していた「人生の勝者」とは何か ? それは大手企業に入社して、安定した生活を送る … ということだったように思います。今思うと、何とまぁ、二十歳そこそこの若者が考えることとは思えないほど、夢のない発想のような気がしなくもないですが、当時私の周りにいた同級生の大半は、現実問題としてそのように考えていたように思います。今でこそ、「自己実現」「やりがい」などのキーワードが、就活における考え方の主流になっているかのような錯覚を受けますが、一方では、メガバンクや大手電気メーカーなどに応募が殺到したり、依然として公務員の人気が高かったりする背景には、やはり安定性を重視する傾向に変わりはないのではないかと思います。

タカシの思惑違い

話を戻しましょう。結局のところ、私は大手の銀行に就職することができましたから、「大手企業に入って、安定性を確保して、人生の勝者になる」という目的は、その時点ではひとまず達成することができました。当時、銀行をはじめとする金融機関は、入社 10 年程度の給料はメーカー等とほとんど変わりなかった ( むしろ低いケースもあった ) のですが、その後の伸びが他の業種に比べて急激であるという評判でした。実際に、生涯賃金で比較すると、銀行はメーカーの 1.5 倍程度あるという説もあったぐらいですから、銀行に入れば普通の人より経済的にいい暮らしができる=私が当時定義した「人生の勝者」 というのは、かなり的を射た話だったように思います。


「10 年間の辛抱だ … 10 年たてば、人生の勝者になれる。今は、ガマン、ガマン … 」なんて思っていたら、入社 7 年後に、勝者であったはずの銀行はあっけなく破綻してしまいました ( なんとねーーーーーーーーーーーー(T-T)(T-T)(T-T))。今でこそ、金融機関の破綻というのは、それなりの頻度で起こる可能性があると認知されていますが、当時の感覚では、銀行は絶対に破綻しないという「銀行不倒神話」という考えがありましたから、銀行がバタバタと潰れていく様は、まさに私の人生観を変えてしまいました。


「こうなったら、自分がこれまでに獲得した知識やスキルが最も活かせる業界、それも給料が一番高い業界に入って、銀行時代に成し遂げられなかった【勝者】に絶対なってやる ! 」 これこそ、私が外資のコンサル業界に転職した動機に他なりません。つまり、「自己実現」「やりがい」の前に、銀行員として実現しえなかった「高い給料で、いい暮らし ! 」を実現したいという、何とも不純な動機でコンサルになったわけです。 

ありもしないゴールに向かって、何をするの

では、私はもっぱら高い給料を得るためだけに働いてきたのでしょうか ? そんなことはありません。ま、それほど高い給料をもらっているわけではありませんが、何とか平均的な生活ができる収入は確保した上で、それなりに「自己実現」「やりがい」のようなものも感じていますし、充実感もあります。私は就活の 7 年後に奈落の底に突き落とされましたが、それでも何とかなっているのです。「就活で全てが決まるわけではない ! 」というのは、こういう経験を踏まえて言っています。


ここ数年、多くの学生さんの採用面接に立ち会う機会があるのですが、そのときに感じることがあります。それは、就活をあまりにも重く考えすぎているために、応対に違和感があるというか、ぎこちなさを感じてしまう学生さんが多いということです。具体的にいうと、次のようなものの考え方です。


「今はまだわからないが、私は近い将来、自分にピッタリの仕事を見つけ、やりがいのある生涯を送ることになっている。そのための第一ステップとして、就活で選択する企業というのは重要である。一生涯勤める気はサラサラないが、自分の夢を実現するためのスキルアップという観点では、無駄なことは一切したくない … 」


??? 一見すると、理路整然と話しているように見えなくもないのですが、実は何が言いたいのか意味不明。まず、自分のゴールについて、「今はまだわからない」というのは、まぁ良しとしましょう。しかし、わからないにもかかわらず、「無駄なことは一切したくない」というのはおかしい。ゴールがわからない以上、無駄かどうかの判断もできません。全くの論理矛盾です。


「オレはこんな馬鹿なことは言わないよ … 」と思っているアナタ。本当にそうですか ? 私がここ 3 年ほどの間に接した学生さんの 20~30% ぐらい ( つまり 5 人に 1 人以上の確率 ) は、言い方は違いますが、これと大差のないことを言って、面接官を困らせています ( 実際に、私も困ったことがあります )。


加えて、このようなことを言う人の多くは、短期間で転職する可能性が高いように思います。自分のゴールが描けないことを棚にあげて、「今の仕事は、自分のキャリアやスキル向上に貢献しない。無駄である」と言って辞めていくのです。何が無駄なのだ ? 何を根拠にそう言えるのだ ? と尋ねても、ゴールについては、「今はまだわからない」わけですから、無駄の基準も根拠もへったくれもないわけです。


将来のゴールを描いて、それに向かってキャリアを構築していくことは、非常に重要です。しかし、あまりにも高い理想を掲げたり、ありもしないゴールを夢見たりした結果、地道な下積み作業や社会人として一般的に必要なマナー・作法の習得などが、無駄に思えてならない人が多いのです。そういう人は、就職先・転職先として外資を選ぶケースが、往々にしてあります。外資に行けば、いきなり夢のような仕事が待っているかのような錯覚をしているからです。新卒で外資を受けに来る学生さんも、「いきなり夢実現」という錯覚を起こしている人がいかに多いことか。しかし、日系であろうが外資であろうが、学生さんが入っていきなり夢が実現できるような甘い世界は存在しません。逆に、地道な下積み作業や一般的なビジネス・マナーの備わっていない人には、夢の実現など不可能だと思います。


次回のコラムでは、具体例をもとに、キャリア実現に向けた就活のあり方について、もう少し掘り下げてお話してみたいと思います。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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