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タカシの外資系物語

メジャーリーグと外資系2005.07.26

突然の戦力外通告

先日のこと、アメリカ・メジャーリーグの野茂英雄投手と高津臣吾投手が、自分の所属する球団から「戦力外通告」を受けました。ご存知の通り、野茂投手は日米通算 200 勝を達成し、メジャーリーグでもノーヒット・ノーランを達成するなど、日本人投手として最も実績を残した選手といえます。高津投手も、昨年はストッパーとして大活躍していました。 2 人とも、今年は確かに調子がいま 1 つだったとはいえ、いきなり戦力外通告 (=つまり、クビです ) を言い渡されたわけですから、われわれファンの間には、大きな衝撃が走りました。と同時に、メジャーリーグの厳しさを実感する出来事であったともいえます。


2 人が戦力外通告を受けた理由の 1 つに、 2 人の「年齢」があったようにも思います。野茂選手も高津選手もともに 36 歳で、プロ野球選手としては「引退」の 2 文字がちらつき始める年齢です。球団としても、再起の見込みがないと判断されるベテランを置く余裕はなかったということでしょう。


一方、日本のプロ野球はどうでしょうか ? もちろん日本の場合も、プロの世界であることに違いはありませんから、メジャーリーグと同様に厳しい世界であることに変わりありません。しかし、日本の場合には、明らかに力の落ちたベテランでも、数年間は球団が面倒をみてくれる傾向にあります。つまり、メジャーリーグのように、いきなり戦力外通告を言い渡されるようなことは少ないように思います。


これと同じことは、一般の企業にも当てはまります。外資系企業においても、日本以外 ( 特に米国 ) では、「いきなり戦力外通告」というのが結構あります。私の友人であるシンイチロウのケースも、かなり劇的なものでした。

シンイチロウのケース

シンイチロウは、私の銀行時代の同僚でして、私と同時期に銀行を退職してからは、香港にある米系ヘッジファンドで働いていました。ある日のこと、シンイチロウから私に電話があったのです。

 


シンイチロウ 「( なぜかヒソヒソ話調 ) タカシ、おれだよ、シンイチロウだよ。元気か ? 」


私 「おー、シンイチロウじゃん。香港からかい ? 調子はどうよ ? 」


シンイチロウ 「それがさ、えらいことになっちゃったんだよ ・・・ 」


私 「えらいこと ? それはそうとさ、なんでそんなにボソボソ話してんだよ。もっとはっきりしゃべってくんないと聞き取れないよ ! 」


シンイチロウ 「それがさ、昨日いきなりクビを言い渡されてさ、今日オフィスに来てみたら、俺の荷物が箱詰めされておいてあったんだよ。なんか、机の撤去作業も始まってるし、メールアドレスも使えなくなってると思う … 日本に戻ったら連絡するから、 1 つお願いが … あーー … ( ブチ ! )」


私 「おーーい ! シンイチローーー ! 大丈夫かーーーっ ! 1 つお願いって、何やねーーん (T-T)」


結局、 1 ヵ月後にシンイチロウは荷物をまとめて日本に戻ってきたのですが、彼いわく、本場の外資系が解雇を決めたときの処置は、それはもう電光石火かつ血も涙もないもんだと言っていました。もちろん、シンイチロウはそれを承知で海外のヘッジファンドで働いていたわけで、いきなり解雇される可能性についても理解していたはずです。このように高いリスクを背負う一方、その見返りとして成功した際には大きなリターンを得ることができるわけですから、「血も涙もない」というわけでもないように思います。


日本の外資系企業は、このあたりが非常に中途半端でして、実力主義だといっている割には、そんなに給料が高いわけではありません。一方で、いきなり解雇されるわけでもないのですが。

「Up or Out」の原則

一般に、外資系企業には「 Up or Out 」という言葉があります。これは昇進 (= Up ) しなければ退社 ( = Out ) というルールです。しかし、このルールが厳格に適用されているのは、欧米の外資系企業であって、日本の外資系ではかなり緩くなっているように思います。日本の外資系には、「 Stay 」という概念もあり、 Up しなくても同じランクのまま、しばらく過ごすことが可能です。「 Stay 」が 2 年も続くと、多くの人は居辛くなって退職していくのですが、中には「 Stay 」のまま長期間居座るような輩も存在します。この現象は、日本のプロ野球とよく似ているように思います。すでに力がないのにもかかわらず、過去の栄光だけを頼りに、高額の年俸を得ながら数年間過ごす … 球団側も気を遣って、なかなか解雇を切り出せない … そんな感じでしょうか。一方、冒頭で述べたとおり、メジャーリーグにおいては、相手が野茂であろうがだれであろうが、「 Up or Out 」が厳格に守られているわけです。


さて、戦力外通告を受けた選手は、いったいどうするのでしょうか ? 実は、ある球団から戦力外通告を受けた場合でも、別の球団がその選手を欲しい場合には、再度チャンスが与えられるような仕組みがあります (「ウェイバー制度」という)。つまり、一定期間「競り」にかけられて、そこでどこかの球団が手を挙げれば、メジャーリーグで野球を続けることができるのです。


一般企業においては、たとえ外資系企業であっても、「ウェイバー制度」のようなものはありません。しかし、似たような役割を果たしているのが、ヘッドハンターやエージェントの存在だと思います。例えば、ある外資系企業でそれなりに名前の通った人が解雇になると、その情報はエージェント等を通じて、即座に同業他社に知れ渡ります。仮に同業他社で、その人が欲しい・その人のポストが用意できるということになれば、その人は仕事の内容をほとんど変えずに、働き続けることが可能です。

ジャーニーマンの悲哀

メジャーリーグでは、毎年ウェイバーにかけられ、その都度ユニホームを変えてプレイを続ける選手のことを「ジャーニーマン」と呼びます。一般企業において、同業他社を転々とするケースも企業版のジャーニーマンと言ってもいいかもしれません。

 


ただし、私の印象では、企業において「ジャーニーマン」を頻繁に繰り返している人には、あまり優秀な人がいないように思います。もちろん、それなりに企業の戦力になっているわけですから、それはそれで大したものなのですが、一方でジャーニーマンとしての戦力は、所詮「穴埋め」であって、主力にはなりえません。やはり、「エース」や「 4 番」というのは、穴埋め式に埋められるものではなく、また頻繁にコロコロ変わるようなものでもありません。企業の場合も、 1 年程度しか組織に所属しないような人は、その企業にとっての本質的な仕事をすることは難しいわけで、結局は上っ面をなめる程度の仕事をするのが関の山です。よく、「外資系企業数十社を経験 ! 」なんて人がいますが、数十社を経験していること自体は、ことさらに誇れるようなことではなく、単にジャーニーマンだということに過ぎません。メジャーリーグであろうが外資系企業であろうが、 1 つの組織でそれなりの年数を経ないと、本当の実績は出せないような気がするのですが、みなさんはいかがでしょうかね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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