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タカシの外資系物語

MBA はお得 ?2001.11.23

最近、MBA を取得しようとする人たちが増えています。不安定な世の中を生き抜くために、何か "つぶし" のきく「資格」を取得しようという潜在的な意識と、「MBA」というカッコいい響きに惹かれてか、希望者は年を追うごとに増加しています。日本の有名大学が MBA のカリキュラム導入を開始したことも、ブームに拍車をかけているようです。


さて、MBA というのはそれほど「お得」な資格なのでしょうか ?


これはあくまでも個人的な見解なのですが、私は「MBA 取得」には否定的です。


実は、私は前職の銀行員時代に、MBA 取得のチャンスを得る機会がありました。いや、正確には、「チャンスをつかみかけたが、ダメだった」というべきでしょうか。銀行に入って 7 年目、私は留学生候補試験に合格しました。その銀行では、毎年 3~4 人を海外の MBA に派遣していました。主な留学先は、UCLA、シカゴ、MIT 、ハーバードなどの有名校でした。


ここでお断りしておきますが、大企業社員の留学先が有名校ばかりなのは、理由があります。企業派遣で MBA 留学をする場合、その企業は留学生 1 人あたり年間 1000 万以上のお金を出していると言われます。企業としてこれだけの「投資」をする以上、それなりの大学に行ってもらわなければ、社内の決裁がおりないのです。ですから私の場合も、英語の点数はさんざんでしたが、人事部からは、「死んでもシカゴに行け !」という "業務命令" が出ました。「とにかくTOEFL、GMAT ( 留学用のテスト ) の得点を上げるんだ !」毎日電話の嵐。私は比較的暇な部署に異動までさせられ、仕事もせずに毎日英語を勉強しました。


結果的には、私が留学の勉強をしている途中、その銀行は海外撤退をしました。同時に、留学制度も無期延期になったのです。


さて話を戻します。私がどちらかというと MBA に否定的なのは、私が行けなかったことに対する腹いせで言っているのではありません。それは、現状の MBA ブームが、何か目的意識のないものに思えて仕方ないのです。当時の私がそうだったからわかるのです。「とにかく外国に住みたい」「MBA さえ取れば無敵」「英語がペラペラになる」これらはいずれも、MBA の本義からは大きく外れています。


しばらくの間、外国に住みたいなら、現地で働く方が手っ取り早いですし、英語の上達も早いでしょう。就職にしても、実際には MBA よりも実務経験を重視します。「コンサルティング会社なら採用してくれるかも … 」確かに採用ぐらいはするでしょう。でも実力がなければ、すぐにクビになります ( コンサルティング会社で採用担当をしている私が言っているのだから、間違いありません ! )。


誤解しないでいただきたいのは、私は MBA を全面的に否定しているのではありません。明確な目的意識を持っていれば、MBA で得るものは大きいと思います。しかし日本人の場合、そうではないケースも多いのではないかと思います。


本年度のノーベル経済学賞を受賞した、スタンフォード大のスペンス教授は、「人はなぜ良い大学に入りたがるのか、より高い学歴を得たがるのかと言えば、未来の雇用主に向かって自分が優秀で勤勉だということを示したいからだ ( たとえ、自分が優秀で勤勉ではなかったとしても … )」と述べ、これを「Signaling ( シグナルを発する )」と呼びました。


中身のある「シグナル」は、MBA という資格が発するのではなく、業務経験に裏打ちされた者にのみ発することができる、というのが私の経験から来る持論です。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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