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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(42)-- Gender Pronoun(s)2023.06.13

 

  先週、日本では、LGBT法案(性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律)が衆議院で可決されましたが、アメリカでは、人権団体が「LGBTQ+の人々が攻撃されている」と緊急事態を宣言しました。

  これは、保守的な州で、次々に、主に未成年者が性別適合手術(gender-affirming surgery)、ホルモン治療、カウンセリングなどを含む性適合治療(gender-affirming care)を受けることを禁止する法律が可決されているからです(治療提供者が処罰される)。そのため、「こんな国にはいられない」とアメリカから海外に移住する人も出てきています。

 

ジェンダー代名詞

 

  日本語では、人称代名詞として性別を表した「彼・彼女(を・の)」よりも、「あの人(を・の)」(または他の表現)を使うことが多いので、いちいち性別を気にしなくてよいのですが、英語では、性別で使用する代名詞(s/he, her/his/him)が異なります。そのため、たとえば、性同一性障害(gender identity disorder)の人に対して、本人が希望する代名詞(自認の性別)とは違う性別の代名詞を使ってしまうということが起こります。(本人は”she”のつもりが、周りが”he”を使う。)

  そこで、D&I(diversity & inclusion)の一環として、本人が希望する代名詞である「ジェンダー代名詞(gender pronoun)」を使おうという動きが広がっており、SNSのプロフィールで、ジェンダー代名詞を入れる人も増えています。署名欄に下記のようなジェンダー代名詞が入ったメールを受け取ったことがある人もいるのではないでしょうか。


Mitsuyo Arimoto, General Manager
My pronouns are: She/her/hers

Veronica Shaw
Pronouns: they, them, theirs

Hiromi Tanaka (he, him, his)

  ジェンダー代名詞の使用を規定する職場も増えており、たとえば、今月、ダラス市議会では、市職員は、本人が希望する代名詞を使うことと定めましたが、従わない場合、解雇も含めた懲戒処分に処されるという厳しいものです。

  一方、あるキリスト教系の大学では、上記の例のようにメールの署名欄に自分が呼ばれたいジェンダー代名詞を入れた職員が解雇されたというケースもあり、こうした風潮に反対する動きもあります。

  日本国内で働いていても、外資系勤務の人はもちろんですが、海外と英語でやりとりする場合、こうした傾向は把握しておくべきでしょう。

 

Gender Neutral

 

  皆さん、学校の英語の授業では、”each/every person””everyone””someone””anyone””no one”は単数扱いであると習ったと思います。そして、こうした単語に対する代名詞は、下記のように”him/her””his/her”であるべきだということも習いましたよね。


1) Everyone has to show his/her boarding pass. 
(皆、搭乗券を見せなければならない。)


2) Someone left his/her cellphone.
 (誰か携帯を忘れている。)


  しかし、このように複数の代名詞を並べるのは、何度も出てくるとくどいです。フェミニズムが台頭する前は、こういう場合、すべて男性代名詞を使うことが一般的で、今でも、”he/him/his”は「性別が不特定の場合に使われる代名詞」として、辞書(Merriam Webster)に掲載されています。


3) One should do the best he can.
(人はベストを尽くすべきだ。)


  フェミニズムの広がりとともに、口語では、単数の場合でも、性別を特定しない(gender neutral)”they”を使う人が増えていきました。上記の例文は、メディアなどでも、下記のように表記されるようになり、辞書でも、”they”の定義に単数に対する代名詞が含まれています。


1)Everyone has to show their boarding pass.


2) Someone left their cellphone.


3) One should do the best they can.


  さらに、LBGQ+に対する意識の高まりとともに、Xジェンダー(nonbinary)の人に対する単数としての”they”の利用が普及し、米辞書のMerriam Websterでは、2019年、「theyはXジェンダーの人に対する代名詞」という定義も加えられました。同辞書のサイトでは、”they”の検索が前年比300%以上増加したということで、”they”が、2019年の”Our Word of the Year”に選ばれました。同辞書には、下記の例文が掲載されています。


<前略>the person I was interviewing.… They had adopted their gender-neutral name a few years ago<後略>
(私がインタビューしていた人は、数年前に性別不特定の名前を使うことにした。)


  なお、Xジェンダーの人の代名詞として、”ze/zie”など他にもあるのですが、”they”ほど普及していません。


  ちなみに、性別を特定した代名詞の使用を避けるには、下記のように冠詞を使うという方法もあります。


1) Everyone has to show a boarding pass.


2) Someone left a cellphone.

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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