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有元美津世のGet Global!

カザフスタン -- おしゃれな都市と自然美2023.10.31

 

  中央アジアの中で一番豊かなのがカザフスタンです。(※1)一人当たりの名目GDPは1万3000ドルで、ウズベキスタンの倍、キルギスの7倍あります。石油以外に天然ガスや鉱物資源に溢れ、ウランの生産量、クロムの埋蔵量は世界一位です。(※2)

  キルギスから車で国境を渡ってカザフスタンに入った途端、道はきれいな舗装道路になり、アルマトイまでは立派な高速道路が通っています。

  カザフスタンは、世界で9番目に大きい国で、面積は日本の7倍、内陸国(landlocked country)としては最大です。北と西はロシア、東は中国と国境を接しています。私は、後述の国立公園に行くのにレンタカーで行ったのですが、中国との国境から100キロあたりでは、中国のラジオ放送が入ってきました。料理も、かなり中華料理寄りになり、その地域で食べたラグマンが、今回、中央アジアで食べたラグマンの中で一番おいしかったです。

  カザフスタンの人口の70%がカザフ系ですが、他の中央アジアの国に比べ、ロシア系の住民(15%)が多いのが特徴です。といっても、やはりキリギスのように東アジア系の容貌の人が大半で、アルマトイと後述のチャリン峡谷で、道を聞かれたのには驚きました。どう見ても、私は外国人にしか見えないと思うのですが...。

  他の中央アジアの国に比べ、イスラム教徒の割合も低く(70%)、キリスト教徒が17%を占めているのもロシア系が多いからでしょう。

 

欧米のような都市

 

  カザフスタン第二の都市、アルマトイ(Almaty)は、1997年にアスタナ(Astana)に移転するまで同国の首都でした。

  アルマトイは街並みがカナダのトロントによく似ていると思ったのですが(大した観光スポットがないところも)、一見、中央アジアの都市には見えません。白人も多いですし、短パンやタンクトップの人も多く、イスラム教の国にも見えません。

  今回、オペラ座の近くに滞在したからか、高級レストランだらけなのには驚きました。それほど高級店でなくても、二人で食事をすると6000~8000円くらいするので、地元の人は月6~8万円の平均的給料で、どうやって払えるのか...。

  大きな公園と噴水だらけな点をのぞき(散歩には非常にいい)、欧米の都市と変わらないような街並みと、飲食店の値段に驚き、「こんな街を訪れるために、わざわざ中央アジアまで来る必要はない。カザフスタンは一度で十分」と思いました。が、その後、他の地域を訪れて、カザフスタンも気に入りました。

  なお、中央アジアで、一番豊かな国なのですが、アルマトイでは、交差点で物乞いをする人(panhandler)が何人もいました。信号を待っていると、寄ってきて「金くれ」みたいなことを言っていると思うのですが、カザフ語もロシア語もわからないので、いくら言われても…。アルマトイでは、日本の1Rのような部屋の家賃が5万円ほどするそうなので、その辺も住宅危機(housing crisis)が起こっている欧米の都市並みか…(家賃が高騰したのは、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシア人が多く移り住んだのが一因。)

 

自然美

 

  カザフスタンは、主にステップ(steppe)と呼ばれる草原地帯(国土の三分の一で世界最大)と砂漠地帯からなるので、自然美は、あまり期待していなかったのですが、大きな誤解でした。

  アルマトイから30キロのところに、中央アジア最大のスキーリゾート(Shymbulak/Chimbulak)があるのですが、標高3200メールで、夏はハイキングもできますし、上に登って景色を眺めるだけでも価値はあります。ソ連時代はオリンピックのトレーニングセンターだったそうで、21世紀に入り3回、冬季オリンピックが開催された地でもあります。私は、非常に気に入ったので、次回は、ここに1~2泊したいと思っています。

  アルマトイから東200キロのところにあるチャリン峡谷(Caryn Canyon)は、アメリカのユタ州にあるような峡谷ですが、ユタより観光客が少ないのが、私には魅力です。(※3) (グランドキャニオンほど雄大ではない。)

  アルマトイから南東300キロの山の中にあるコルサイ湖(Kolsay)とカインディ(Kaindy)湖は、どちらも美しいです(日本人観光客もいた)。その近くのサティ(Saty)に滞在したのですが、のどかできれいな村で気に入りました。この地域は、高速道路を含め舗装した道で行けるので、下記の国立公園ほど時間がかかりません。

  アルマトイから東に300キロのところにあるアルティン・エメル国立公園(Altyn-Emel)は、車で砂利道を何時間も走らないといけないのが大変でした。アメリカのニューメキシコのような景観が多かったので、私としては苦労して行く価値はなかったのですが、手軽に行くには、アルマトイから1~2泊の弾丸ツアーがあります。

  その国立公園にある「歌う砂丘(Singing Dunes)」は、砂丘というような緩やかな角度ではなく、高さ150メートルの急な斜面を、砂が目や口、耳に入る中、滑りながら登るのは大変なのですが、わざわざ国立公園まで行くのなら、登る価値アリです。

 

最近の政策

 

  カザフスタンは、ウズベキスタンとキルギス同様、政教分離(secular)の共和国(republic)です。10月には、「どの宗教も平等に扱わなければならず、一定の宗教を優先することはできない」と、政府は学校で女子学生や女性教師がヒジャブを着用することを禁止しました。(ヒジャブといっても、中東や東南アジアで着けるようなのではなくスカーフ。)これに抗議して退学した女子生徒もいますし、宗教団体も猛烈に反対しています。

  また、カザフスタンでは、ロシア語も公用語ですが、現在、議会でメディアでのカザフ語の使用を50%から70%に上げる法案が議論されています。法案は通過して、法制化される予定ですが、2025年から年5%ずつ上げていくそうです。なお、キリギスでも、今年初め、キルギス語の使用を60%まで上げるという法案が通りました。

 

旅行するなら

 

  私は、自然美を満喫するならキルギスがお勧めなのですが(人も穏やか)、移動手段が車に限られるのが大きな難点なので、カラコルの空港が再開するまでは、カザフスタンがいいかもしれません。

  キルギスにいる間に知り合ったイタリア人観光客に、「カザフスタンは気温43度あったよ」と脅されていたのですが、私がカザフスタンに着いたのは、すでに8月末だったので、大して暑くはありませんでした。9月に入ると気温は急激に落ち、10月末には最低気温が3~4度です。ということで、スキーをしたり、雪山を目指すのでなければ、旅行するには夏場がお勧めです。

  ちなみに、アルマトイからタシュケントまで、17時間かけて寝台列車で行くことも可能です。飛行機で飛べば1時間もかかりませんが。


   なお、日本人は、カザフスタンには、ビザなしで30日まで滞在できます。





(※1)Kazakhstanは、英語では”h”でなく”k”の発音(カザキスタン)。

(※2)先週、ルクセンブルクの大手鉄鋼メーカーが運営する炭鉱で爆発が起こり、30人以上が死亡。過去にも同様の事故が起こっており、炭鉱を国営化するために交渉中だった。

(※3)アメリカの国立公園は混んでいて、とくに夏休み中は劇混み。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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