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有元美津世のGet Global!

ウィズコロナ時代のインバウンド観光2022.04.05


 これまで、海外旅行について書いてきましたが、一方、訪日旅行は、どうなるのでしょうね。

 日本では、先月から留学生(や研究者)の受け入れを再開したことから、「日本への移住」ネットコミュニティでは、ビザ取得や具体的な移住に関する質問が一気に増えました。

 一方、観光客は未だに入国は許されません。昨年から、いろいろな国の友人知人から「いつになったら日本に行ける?」と聞かれ、「2022年の春には開国すると思うよ」と言っていたのですが、12月にオミクロン株の影響で水際措置が再度強化されたので、「春は無理そう。飛行機の予約は変更した方がいいと思う」とアドバイスするようになりました。まさか鎖国が二年以上も続くとは思ってもいなかったのですが、最近では「9月も無理なのでは?」という声も上がっています。

観光先として人気の日本


 日本語オンリーの世界に住んでいる人は知る由もないのでしょうが、パンデミック中ずっと、日本に観光に来たがっている外国人がどれだけ多いことか!旅行コミュニティの日本フォーラムでは、2022年どころか、2023年の旅行計画まで立てている人たちがいます。

 2020年6月に行なわれた日本の観光業界によるアンケート調査でも、アジアでは「コロナ後に行きたい国」で「日本」と答えた人が56%と1位で、2位の韓国(30%)を大きく引き離していました。また欧米豪で「日本」と答えた人は、アメリカ(28%)に次いで2番目(23%)でした。(欧米豪人に大人気のタイを大きく引き離している)。*

 訪日旅行客は、2019年に3100万人を超え、過去最高に達しましたが、2021年には24万人にまで下落しています。日本の観光業界も、政府に水際対策の緩和を求めており、政府は、入国者を一日1万人に引き上げましたが、日本入国時に全員にPCR検査を行っている限り、キャパ的に観光客の受け入れは無理でしょう。

 日本の旅行消費額(2019年)は、8割近くが国内旅行で、インバウンドが占めるのは17%です。GDPに占める旅行消費額の割合も5%と小さいです。経済回復、外貨獲得のために観光業に頼らなければならない東南アジアを後目に、鎖国を続けられるのは、ぜいたくな話なのです。

国民感情(xenophobia)


 いつもは「欧米に後れを取っている!」と欧米の動きばかり気にしているくせに、開国(や他の一部の事項に)関しては、頑なな日本ですが(それも政府は2035年までに訪日観光客6000万人の目標を掲げたまま)、なかなか開国できない背景にあるのは「海外からウイルスを持ち込む外国人を入れるな」という国民感情、そう、まさにxenophobiaです。

 観光業界も、インバウンド再開で課題と感じているのは、受け入れ側の心理的障壁だと言います。自治体や宿泊施設などの受け入れ側に、「日本在住者目線で、いかに海外からコロナを持ち込まないようにして国内の感染を広げないようにするか」という見方が強いそうです。(昨夏から観光客の受け入れを開始しているタイでも、観光業界以外の一般人の間では抵抗は大きい。)

 私は、他の国での外国人観光客受け入れを見ていて、まず日本人がマスクをしている間は、(やはりマスクを信奉しているアジア人はともかく)欧米人観光客の受け入れは難しいと思っています。マスク着用が法律で義務づけられている国でも、マスクをしない彼らが、そうした法律のない日本でするわけがない!*

 マスクなしで、店内や電車で大声でしゃべって唾を飛ばし、除菌ジェルなども使わない人たちが日本の街を闊歩するのを見たときの日本人の驚き、恐怖心が頭に浮かびます。そして、それが日本各地で摩擦を起こす...

 昨夏から試行錯誤しながら観光客の受け入れを開始し、3週間ごとにルールを変更するタイを見ていて(かついろいろな手続きが機能していない)、中途半端な形で開けるくらいなら、完全に受け入れができるまで開けない方がいいと感じています。

 

アフターコロナのインバウンド


 コロナ前は、世界各地の観光地でオーバーツーリズム(overtourism)が問題となりました。京都などが「(外国人)観光客には戻ってきてほしくない」と思うのは、非常によく理解できます。

 Xenophobicな国民性がすぐに変わるわけでもなく、かつ世界は脱グローバリズム(deglobalization)に向かっているようですし、コロナを機に、今後、インバウンド観光をどう位置付けていきたいのかを皆で考える必要があると思います。

 

 

 

* 基本的に、欧米人がマスクを着用するのは、感染拡大防止を考えてのことではなく、法律で義務付けられているから。モルディブでフェリー(speedboat)に乗ったときに、満員だったのでマスクをつけたら、見送りに来てくれていた宿泊先のドイツ人マネージャーが近づいてきて「もうマスクは着用しなくていいんだよ」と。(3月中旬にmask mandateは解除。その前から大半が着けていなかったが。)

 

** タイやスリランカでブッフェに使い捨てのビニールの手袋が置いてあるホテルがあるが、使っている人を見たことがない。ヨーロッパに行ったことがある人なら知っているように、パン屋の店員もパンは手づかみだし。ブッフェの共有パンも、皆、触りまくって切っているし。(ま、トーストすれば殺菌されるのだろうが。)アメリカ国内線の機内で、スナックを食べる前に、手を洗ったり、除菌ジェルを使っている人も見たことがない。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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