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「タジキスタン」ってどんな国?

私は、通常、訪れたことのない国のことは書かないのですが、前回の日陽里さんが暮らすタジキスタンが、どんなところなのか、簡単にまとめておきます。

タジク人の国

タジキスタン(Republic of Tajikistan)は、キルギスの南、ウズベキスタンの南東、アフガニスタンの北、中国の西に位置し、この4国と国境を接する内陸(landlocked)の国です。中央アジア(Central Asia)では一番小さい国で、面積は日本の4割、国土の9割以上が山岳地帯です。

タジキスタンの人口は1000万人、86%がタジク人(Tajik)で、11%がウズベク人(Uzbek)です。タジク人はウズベキスタンにもいますが(サマルカンドやブハラでは多数派)、イラン系民族が多数派の国は、中央アジアではタジキスタンのみなのです。タジク人は、見かけはイラン系(中東系)に見えます。

公用語はタジク語とロシア語で、タジク語が国語、ロシア語は、異なる民族間で使われる言語、また国際語として定められています。ブハラ(Buxoro)で出会ったタジク人の地元のガイドが「タジク語はペルシャ語(Farsi)の方言のようなもの」と言っていました。 

なお、タジキスタン国民の98%がイスラム教徒です。

中央アジアの最貧国

タジキスタンは、中央アジアだけでなく、旧ソ連圏でも一番貧しい国です。一人当たりのGNI(国民総所得)は1440米ドル、世界で160位で、平均的な月収は3万円ほどです(キルギスは1700ドルで155位)。

ソ連崩壊とともに独立後、92~97年まで内戦が続いたことが、経済発展が遅れた一因ですが、キルギスと同様、石油などの天然資源がなく、主な産業は農業や鉱業です。近年、年6~7%の成長率を維持しているものの、失業率は高く、100万人以上のタジク人がロシアに出稼ぎに行っています(ウズベキスタンからは150万人)。2019年時点で、海外からの送金がGDPの29%を占めていました。10年前には、GDPの49%が送金によるもので、世界で一番送金に依存する国でした。

国連によると、2023年、栄養不良率が人口の3割に達しており、5歳未満の子供の3割以上が重度の食の貧困(food poverty)にあえいでいるとのことです。これは、世界の平均25%を上回っています。

・インフラの未整備

中央アジアで出会うヨーロッパからの(個人の)旅行者は、ウズベキスタンやキルギスと併せてタジキスタンも回る人が大半です。私が、二年続けてタジキスタンまで足を伸ばさなかった理由は、道路の未整備です。キルギスでも、ちょっと都会を離れると、道がボコボコなのですが、タジキスタンは、それよりさらにひどそうなのです(日本からのODAで、道路改修が行なわれているのだが)。

キルギスの首都ビシュケクからカラコル(Karakol)に行くには、イシク・クル(Issyk-Kul)湖の南ルートが景勝地もあり綺麗なのですが、道がボコボコで、そうした道を何時間も走らないといけないのです。昨年、カラコルからカザフスタンに車で入国したのですが、カラコルから国境までの道は、それ以上に大きな穴だらけで、崖から落下したセダン車も目撃しました。まず、セダンで運転すべきような道ではなく、私が雇ったロシア人は、乗客二人なのに、メルセデス製の頑丈な巨大バンを送ってきましたから。今夏、ビシュケクの郊外では、ハイキングに行こうと思ったら、配車アプリのYandex(タクシー)の運転手に「道がボコボコなので行けない」と乗車拒否されました。 

日陽里さんが首都ドゥシャンベ(Dushanbe)から第二の都市ホジェンド(Khujand)まで乗ったバスは、フロントガラス(windshield)がバリバリに割れていました。キルギスでも、ボロボロの車が走っていますが(日本から輸入した右ハンドルのままの中古車)、田舎のYandexや宿が手配してくれる車は、命の危険を感じるレベルです(後部座席にシートベルトがある車は稀)。*

タジキスタンは、世界でも有数の水力発電(発電電力の9割)の国で、周辺国に電気を輸出するほどなのですが、日陽里さんも経験しているように、ドゥシャンベでは、ときどき停電があるようです。とくに冬に頻繁に起こるようで、雪解け水の減少と河川の凍結、暖房による需要増、かつソ連時代の通電設備の劣化が原因だそうです。

キルギスでも、田舎に行くと村全体が停電になることがあります。スリランカやフィリピンでも、停電はよくありますが、断水は経験したことはありません。**

世界遺産

タジキスタンへの観光といえば、周辺国と併せて行く場合がほとんどですが、ウズベキスタンとの国境にあるパンジケント(Panjakent/Penjikent)にある世界遺産のサラズム遺跡は、サマルカンドから近いので、ウズベキスタンの世界遺産と併せて回れます。

また、7000メートル級の山が連なるパミール山脈(Pamir Mountains)は、数ヵ国にまたがりますが、そのほとんどがタジキスタンに位置します。世界遺産のタジク国立公園は、山脈の北部にあります。

タジキスタンに行くには、成田からタシケント(Tashkent)までウズベキスタン航空の直行便に乗って、タシケントで乗り継ぐのが一番速いと思います。成田~タシケント便は、今春からは週2便に増便されていましたが、冬の間は週一便です。(ちなみに、ビシュケクの空港に、日本人が結構いるのには驚き。タシケントに向かう人が多かったもよう)日本人は、タジキスタンにビザなしで30日間、滞在できます。

* 先週、トルコやマレーシアで、日本人観光客の乗ったバスで死傷事故が起きたが、新興国でバスや車に乗るには、こうしたリスクはつきもの。マレーシアは中所得国で道路も舗装されているが、事故のあったCameron Highlandsへの山道はクネクネ。ペナンからクアラルンプールへの長距離バスに乗ったときも、途中で故障し、代車が来るまで何時間も待たされた。他国から出稼ぎに来ている運転手は英語も話せない。(マレーシア人の運転の荒さについては、また後日)ベトナムの長距離バスも、夜間は、覚醒のために運転手がクスリをやっている場合があるので、お勧めしない。タイの長距離バスも怖いが、インドでは観光バスが高速道路を逆走した!

** スリランカでは、経済危機を脱した後も、ときどき停電が起こるが、3ツ星以上のホテルや民泊マンションでは発電機(generator)を装備しているので問題なし。田舎の2室だけのゲストハウスでも、発電機を備えていたところがあり、インターネットも、そこが一番速かった。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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