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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(58)– Concession, Finger Pointing(大統領選)

米大統領選の結果を受け、先週、ハリス副大統領が「敗北宣言」を行ないましたが、これは英語では”concession speech”と言います。”Concession”とは「意見の対立や交渉を終わらせるために、不本意ながら譲歩すること」という意味で、ビジネスシーンでも使われます。

Harris made/gave/delivered her concession speech after losing to Trump.
(ハリスは、トランプに負けた後、敗北宣言を行った)

The party made a budget concession to save the coalition.
(党は、連立を救うために予算で譲歩した)

We offered some concessions so we can close the deal.
(取引を成立させるために、いくつか譲歩した)

ハリス副大統領は“concession speech”で、動詞の”concede”(譲歩する)を使って、下記のように述べました。

While I concede the election, I do not concede the fight that fueled this campaign.
(選挙の負けは認めるが、この選挙運動を動かした戦いは負けてはいない)

Finger Pointing

民主党重鎮が「バイデン大統領が、もっと早く大統領選から撤退していたら、公認候補の予備選(primary)が行なえたのに」(つまり「もっと適格な候補者を選べたのに」)と言えば、バイデン陣営は「責任はハリス陣営にある」「バイデン大統領を撤退に追い込み、かつ10億ドルも費やしておいて、なぜ勝てなかったんだ?!」と応酬しています。また「”警察予算を打ち切れ(Defund the Police)” など過激な活動で、マイノリティを遠ざけた」と党内の極左を責める声もあります。

こうした民主党内の争いは、日本の報道では「戦犯探し」と表現されていますが、英語では”finger pointing”と言います。”Point a finger at…”とは、「~に指を刺す」、つまり「~を名指しで非難する」という意味です。“Blame game”(責任の押し付け合い)という表現も使われています。

A lot of finger-pointing is going on among Democrats over the election loss.
(選挙敗北に関し、民主党内では責任のなすり合いが行なわれている)

Harris allies are pointing fingers at Biden for her defeat.
(ハリス陣営は、敗北の責任はバイデンにあるという)

The Democrats’ blame game has just begun.
(民主党の責任のなすり合いが始まった)

予想ハズレは偏向のため

今回、トランプ元大統領の圧勝に終わったため、「接戦と報じていた日本のメディアは信用できない」という人がいますが、日本のメディアは、アメリカの主流メディアの報道をコピペしているだけです。米主流メディアは民主党エスタブ寄りの報道しかしないので(共和党寄りの報道は全米視聴率最高のFox News)、彼らが「接戦(tight race)」といえば、共和党がリードしていると思っていいでしょう。

先週、(左派の)英BBCが「米選挙の世論調査はミスったのか?」という記事で、「全米レベルでは、今回を含め3回の大統領選挙でトランプ(支持)が低く見積もられていたようだが、今回、世論調査では接戦州(swing states)では接戦との想定だった」と解説しています。

世論調査が実態を反映できなかった言い訳として、米学者は「メディア・世論調査会社は有権者が2020年と同じ行動パターンに出ると思ったのでは? あれだけヒスパニック系や若者がトランプを支持するとは予期していなかった」(調査モデルが偏向に基づいているから)、さらに「知らない番号からの電話には出ない人が増えたので、近年、回答率が下落している」「オンライン調査では、回答者が民主党支持者に偏ってしまう」を挙げています。(使えないとわかっている調査方法を使い続けているということ?!) 

(偏向報道による)アメリカ人のメディアに対する不信感は、近年、史上最低レベルが続いていて(日本とはレべチ)、とくにトランプ・共和党支持者が、主流メディア・調査機関に協力しないため、彼らの声が反映されないという面もあるでしょう。*

また、日本では、トランプ応援を口にする人がいて驚くのですが、アメリカでは、とくに大卒、エリート層では「トランプ支持」を公言するのは憚れます(日本でいう「隠れトランプ」)。罵声を浴びたり、絶縁されたりするだけでなく、地域によっては身体的に襲われる可能性もないとは言えません。ゲイであることをカミングアウトするより共和党支持者であることをカミングアウトすることの方が難しいのですから。**

実際には、今回、共和党に投票した人は、大卒では半数近く、大学院卒以上でも4割近くに達しました(2020年の方が大卒者の割合は高かった)。しかし、米主流メディアや民主党支持者は「トランプ支持者は、地方在住の大卒未満の労働者(red neck)」というレッテルを貼り続けます。

オンラインコミュニティでは、「自分は民主党支持者だが、今回はトランプに入れた」という人が、選挙終了後、”カミングアウト”するケースが見られます。しかし、そうした発言も叩かれています。実際に、主に接戦州での出口調査(exit poll)でも「今回、初めて共和党に入れた」という人が54%に達しています(2020年は32%)。

* 今年の調査では、「メディアをまったく信じない」人が36%、「あまり信用しない」人が33%、「かなり/ある程度信用する」人は31%のみ。共和党支持者では「かなり/ある程度信用する」人は12%のみ、無党派で27%、若い世代(18~29歳)で26%。
今回、兵庫県知事選で行なわれているような(一定の政治家や候補を陥れようとする)偏向報道が、アメリカでは大統領選レベルでも、ずっと行なわれてきた。

** 私は無党派だが、テキサスのような保守州でも都市部は民主党支持者が多いので、民主党の批判すらできない。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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