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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(52)– Quiet Vacationing

7月4日、アメリカでは独立記念日で祝日でしたが、今年は木曜日だったので、金曜日に有休(PTO)をとって週末にかけて4連休とすることも可能でした。(※1) 学校が夏休みなので、子供を連れて、毎年、7月4日前後に家族や親戚を訪れたり、旅行する人が多く、感謝祭(Thanksgiving)やクリスマスに次ぐ旅行シーズンです。

中には、有休をとらず、会社に内緒で休暇をとった人たち(quiet vacationers)もいるようです。今年5月~6月に1200人以上のアメリカ人就業者を対象に行われた調査では、過去に「7月4日前後に会社に内緒で休暇をとった」という人は、Z世代(18~27歳)とミレニアル世代(28~43歳)では56%、管理職では55%にのぼりました。(X世代とベビーブーム世代では35%)

ちなみに、「7月4日も営業している」という雇用主は22%で(大手小売・飲食店は営業。年々、営業している店が増えているような気がします)、「7月4日のみ休業」という雇用主は46%、「4日と5日が休業」という雇用主は24%でした。

「この週に1日以上休める」という就業者は34%で、10%が「1週間丸々休み」(個人的には、こうした企業は聞いたことがない。おそらく、小企業)と回答しています。ということは、半数以上は「7月4日のみが休み」ということです。(※2)

つまり、7月4日を含めて連休にするには、半数以上の人は休みをとるしかないわけです。それなら、「有休をとる」ことになるはずですが…

「有休がとりにくいから黙って」

今年4月に1100に人以上の就業者を対象に行われた調査では、60%が「年10日以上の有休あり」(政府の統計では平均11日)と答えたものの、78%の人が「すべて消化しない」と答えており、2022年に消化した有休は平均15日でした。なお、消化しない割合は、若い世代の方が高いのです。

消化しない理由として、31%が「必要があれば、常に仕事に対応しないといけない」、30%が「仕事量が多い」が挙げられました。また、約半数(49%)の就業者が「有休を申請するのは緊張する」と答えています。これは、若い世代では、Z世代58%、ミレニアル世代61%と、さらに高くなっています。

有休をとらない理由として、「常に仕事モードでいることがあたり前で、生産性を期待されているから」「怠け者、いい加減な人と思われたくないから」というのも挙げられました。

また、86%が「休暇中も上司からのメールをチェックする」、56%が「休暇中も仕事関連の電話に対応した」と答えています。さらに、66%が「休暇から戻った際の溜まった仕事が怖い」、47%が「有休をとることに罪悪感を覚える」とも答えています。

「黙って休暇」

上述のように「会社に黙って休む」ということを”quiet vacationing”と言います。”Quiet quitting”や”quiet firing”と同様に、近年、生まれた造語です。

”Quiet vacationing”と同じ意味で、”hush trip””hush vacation”も使われます。”Hush”とは「静かにする、黙る、口外しない」という意味で、”hush money”といえば「口止め料」のことです。

社員が会社に黙って休むという行為は、昔からあったのですが、リモートワークが普及してから、 社員にとってはやりやすくなったと言えます。(実は、私は、昔々、インターネットが登場する前に、日本でもアメリカでもやったことアリ。)

以前、書いたように、アメリカでは、勤務先に内緒で海外でリモートワークを行なっている人も3割ほどいました。(ただし、出社回帰が起こり、かつアメリカではIT職を中心に大量の人員整理が行なわれるようになってから、無断で海外でリモートワークを行っている社員が解雇されるケースが増加し、そうしたケースは減少。デジタルノマドのオンラインコミュニティで「海外にいるのを勤務先にバレないようにするのは、どうすればいい?」という投稿も激減。)

なお、アメリカでは大半の企業がPC監視ソフトを使っているため、「働いていると見せかけるために、マウスムーバー/ジグラーを使う」(Z世代よりミレニアル世代の方が多く38%)、「残業をしているように見せかけるためメッセージの送信を勤務時間外に予約する」という就業者(ミレニアル世代の37%)もいます。

Quiet Vacation

“Quiet vacationing”ですが、下記のように”quiet vacation”という形で動詞としても使われます。

Have you quiet vacationed?
(会社に黙って休みをとったことがある?)

More employees are quiet vacationing instead of taking PTO.
(有休を申告してとるのではなく、黙って休暇をとる社員が増えている。)

下記は、「黙ってとる休暇」という意味で名詞として使う場合の例です。

I took a few quiet vacations when I was young.
(若いころに、何度か、会社に黙って休みをとったことがある。)

If you don’t want your employees to take a quiet vacation, let them take enough time off.
(社員に無断で休まれたくなければ、十分な休みをとらせることだ。)

(※1)PTO = paid time off(有休休暇)。 アメリカでは、近年、”paid leave”や”paid vacation”より、病欠(sick leave)や育休(parental leave)などあらゆる形の有休を含めた”PTO”という表現が主流。

(※2)イースターや感謝祭の翌日の金曜は休みの企業が多い。なお、アメリカでは連邦政府指定の祝日(Federal holidays)は11日あるが、大半の企業が休業するのは、そのうち6日のみ。

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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