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有元美津世のGet Global!

スリランカ(6) - 魅力2022.06.07


 これまで暗い話ばかり書きましたが、スリランカは旅行先としては非常に魅力的です。私は、前回、スリランカを訪れた際、首都コロンボにしか行かなかったので、その魅力に、まったく気づきませんでした。(コロンボは、ぼったくりTuk Tukと詐欺師に溢れている。)

豊かな自然と遺跡


 スリランカは、北海道よりも小さく、そんな小さな島国に、きれいな海(ウミガメのいるビーチやサーフスポットも)、山、高原、古代遺跡(8つの世界遺産)が詰まっているのです。サファリのできる国立公園ではゾウ、ヒョウ(leopard)、ワニ、水牛、孔雀などの野生動物が見られますが、国道のようなところを車で走っていると、道路沿いの枝葉を食べていたゾウ4頭に出くわしたこともありました(2頭は道の真ん中で)。

 北海道は一週間で一周できると言いますが、スリランカは、それより小さいので、車で簡単に回れるのです。インドも自然や世界遺産が豊富ですが、大きいので、全国を回るには数カ月かかります。(北インドだけでも、3週間では、まったく回り切れなかった。)

 私のようにレンタカーを借りるのは少数派で(レンタカー料金は高い)、運転手付き車を借りる観光客が多いです。2週間かけて各地を回ってもらうといったことが可能で、ホテルやゲストハウスには、運転手専門の部屋が用意されています。時間はかかりますが、列車やバスでの移動も可能です。

 スリランカは、インドと同様、元イギリス領ですので、英語が通じます。地域や教育レベルによって、まったく話せない人やブロークンな英語しか話せない人もいますが、英語のネットコミュニティに参加しているような都会の大卒の人たちの英語は、ネイティブレベルです。ただ、そういう人たちも「聞き取りは苦手」という人が多く、訛りも強いので、会話になるとネイティブ並みには行かないようです。

 スリランカ人は概して、インド人やフィリピン人と同様に、(おせっかいなくらい)親切です。

安い物価


 スリランカの魅力のひとつに、物価の安さがあります。今年、急激なインフレで物価は上昇していますが、(スリランカ)ルピーが暴落したので(2月に1米ドル=200ルピーだったのが、今では360ルピー、100円=174ルピーだったのが280ルピー)、外国人にとっては、結局、安くなっているものもあります。

 たとえば、SIMカードは100ルピー(当時のレートで50円、今のレートなら30円)、30日のデータパッケージが200ルピーでした(4~5GBでも、ボーナスがついてくるから10GBくらいになる)。

SIM、データともに、今まで行った国で一番安いと思います。

 レストランは、コロンボ市内であれば、一皿1000~2000ルピーというような店はいくらでもありますが、地方に行けば、この4分の1から2分の1で食べられます。私が大好きな”short eats”と呼ばれるスナック(ツナが入った粉もの、揚げ物が多い)であれば、500~1000ルピーでランチがまかなえます。

 カプチーノやラテ系は、コロンボのおしゃれな店では600ルピーくらいしますが、地元民が行くような地方の喫茶店であれば、紅茶は50ルピー以下でで飲めます。

 ホテル宿泊料金は、格安ホテルでも(政府の規定で)米ドル建てなので、数カ月前と変わっていません。

持ち腐れの観光資源


 自然や遺跡が豊富な国なのに、スリランカは世界的に観光地として知られていません。それどころか、スリランカがどこにあるのかすら知らない人が大半です。(アメリカの)友人知人に、来年は「スリランカとモルディブに行く」というと、「モルディブ、私も行きたい」という反応は多かったですが、スリランカに言及する人はいませんでした。

 海外からの観光客数は、2018年、250万人で、同国史上最多を記録しました。しかし、223ヵ国中92位で、1500万人超のインドネシアベトナムはもちろん、イランやジョージアよりも少ないのです。(ちなみに、コロナ前、スリランカを訪れる観光客は、中国からが一番多く、元宗主国のイギリスをわずかにに超えていた。)

 また、今年、日本が一位になった世界経済フォーラムの「観光魅力度ランキング」(Travel & Tourism Development Index[旅行・観光開発指数])では、スリランカは117ヵ国中世界74位でした。同ランキングは、交通インフラや治安、モバイル端末の普及率、世界遺産の数など維持可能な観光部門の開発に関する要因や政策を評価するもので、上位を占めるのは先進国ですが、近年、ベトナムやインドネシアの指数は伸びています。

 観光業は、スリランカ第三の外貨獲得手段(全体の15%)であるにもかかわらず、政府や業界団体が、その発展に力を入れているようには見えません。とにかく世界に向けてのPRが足りないと思います。(観光省大臣と揉めて、5月末に辞任した観光省トップが、業界がカルテル化していて、やり方が旧式とも。)

観光客が激減


  3月には観光客数が10万人を超え、昨年の観光客受け入れ再開以来、最高を記録していたのですが、経済危機や抗議デモが世界的ニュースになり、4月には観光客が4割も減少しました。

 2月に旅行をしている間に、スリランカ各地のゲストハウスやレストランのオーナーと話をしましたが、コロナで二年近く閉店を余儀なくされていたので、その間、野菜を売りに行ったり、できることは何でもして家族を養ったということでした。日本では、政府が補償や支援するのがあたり前だと思っている人がいますが、世界にはパンデミックの間、政府から何の支援も受けなかった人の方が多いのです。(私は、ベトナム在住のアメリカ人に「日本って、政府からの支援が手厚いんだってね?」と言われた。)

 やっと営業を再開でき、観光客が戻り始めたと思った矢先の経済危機政治危機で、観光業に携わる人たちにとっては、本当に生きるか死ぬかの問題です。そうした中、今も、スリランカを旅行している外国人観光客はおり、「何の問題もない。観光客が少ないので遺跡もすいているし、どこに行っても歓迎される。予定をキャンセル必要はないよ」という声が聞かれます。新たな首相就任後、暴動は起きていませんし、計画停電は一日2時間に減っています。観光客を乗せているハイヤー運転手は、優先的に給油できるそうです。

 私は12月に再訪予定ですが、IMFからの融資が年内に降りるかどうかが注目されるところで、心配な人は、来年以降にでも計画されてはどうでしょうか。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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