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スリランカ(5) – 日本との関係

先月、日本政府がスリランカに対して300万ドル(4億円近く)の緊急無償資金提供を行うことを発表しましたが、国内では「またバラマキか」「日本はどこまでお人よしなのか」など批判の声が聞かれます。国際連合児童基金(UNICEF)と世界食糧計画(WFP)を通じて医薬品や食料を支援するというのに、「中国への借金返済に使われたらどうする」という頓珍漢な批判まで。

そういう人は、有事が起きて、インド洋のシーレーン(海上交通路)が塞がれて石油が輸入できなくなっても、文句は言わないのですよね。燃料や食料を輸入に大きく依存している点は、日本もスリランカと変わらないというのに。

日本ではニュースになっていないようですが、先週、インドのモディ首相がクアッド(Quad)首脳会合出席のために訪日した際に、日本政府はインドと協力してスリランカを支援することで合意したことが英語ニュースでは報じられています。

日本離れ

ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領就任後、2020年にスリランカ政府は、日本が受注していたコロンボ市内のLRT(light rail transit)整備事業を「費用が高すぎる」という理由で撤回しました。これは(兄マヒンダを破り)2015年に就任した当時の大統領が、過度の中国依存をやめ、日本やインドなどとバランスの取れた外交を目指し、日本に発注したものでした。

2021年には、覚書を締結していたコロンボ港の東コンテナターミナル建設事業も撤回され、その後、二転三転して、結局、中国企業と地元企業に発注されました。これは、日本とインドが協力して行なうことになっていたのですが、運営に関して複数の労働組合がインドの関与に猛烈に反対したのです。(スリランカでは隣国インドに対する不信感が根強い。お詫びとしてインド企業には西ターミナルの建設を発注。コロンボ港扱い貨物の大半がインド向け。)

兄マヒンダ首相辞任後、5月に就任したウィクラマシンハ首相は、親印派と考えられており、上記の建設プロジェクトも、同氏が首相であった際に契約されました。2015年まで10年間、中国マネーによるインフラ事業を進めたマヒンダ元大統領は、親中派と見られています。

ネットコミュニティでは、「日本相手だとコンプラを管理され、政治家が賄賂をもらえないから」という声が上がっていました。今後5年で日本がインドに420億ドル投資するというニュースが流れた際には「(メッキの)金を探しているうちに、ダイヤモンドを失ったか」(金=中国、ダイヤモンド=日本の意)という声もありました。

ちなみに、スリランカは、2021年腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)で、180ヵ国中102位です。(ウクライナは、さらに低い122位だが、西側は同国の大統領を”ヒーロー”として扱っている。ラージャパクサ兄弟も、内戦を終結させた際は国内で”ヒーロー”扱いだったが。)

日本のODA

第二次世界大戦中、日本軍は首都コロンボなどを空爆しています。当時、スリランカ(セイロン)はイギリスの植民地だったので、イギリスに対する攻撃だったわけですが、イギリスからの独立を切望していたスリランカは、日本やドイツ寄りだったようです。

1951年のサンフランシスコ講和会議で、当時のスリランカ蔵相が日本の主権回復を擁護した演説は有名ですが、日本に対する賠償請求権を最初に放棄したのがスリランカでした。(ウィクラマシンハ現首相は、その甥。)

日本のODA(政府開発援助)は、元々、戦争の賠償として始まったのですが、スリランカへのODAも1950年代に始まりました。内戦が終わるまで、スリランカにとって日本が最大の援助国で、スリランカ初の高速鉄道、同国最長で唯一の国営トンネル、当時最長だった橋など、スリランカには、日本のODAによって建てられた建造物が数々あります。これらは、スリランカの紙幣の図柄にもなっています。

ただし、スリランカの若い世代は、そうした話よりも(知らない人も多いと思う)、日本のアニメに興味があります。

「おしん」が有名

アニメ以前に、スリランカで爆発的な人気を得たのは、89年に放映された「おしん」でした。貧困の中、幾多もの試練に立ち向かう主人公を自分の幼少期と重ね合わせる人が多かったようです。(ちなみに、おしんはアジアだけでなく、中東や中南米でも大人気。)

私は、スリランカ航空の乗務員(30代~40代)に「日本人ですか?おしんには感動しました。すばらしい女性ですね」と言われたのですが、残念ながら見ていません。(私は元々、連続ドラマは好きではなく、とくに毎日15分しか放映しない朝ドラは、生まれて今まで見たことがない。)彼女の期待を裏切って申し訳ないのですが、おしんが日本で放映されたのは80年代の前半なので、日本でも見たことのない人が増えているのでは…

ところでスリランカ航空といえば、スリランカ政府は、赤字垂れ流しの国営企業を売却することを検討しているようです。同社は、1998年にUAEのエミレーツ航空が株を40%取得し、10年契約で運営を担うことになりました。エミレーツの下、黒字化したのですが、兄マヒンダが大統領だった2008年に提携契約が更新されず、100%国営に戻りました。大統領は義兄を会長として送り込んでいたのですが(ジェット機を私物化したり、社員の愛人のためにドバイにアパートを購入したり、やりたい放題)、もっと一族を役員として送り込もうとしたのをエミレーツ側に拒否され、エミレーツは持ち株を売却したということです。

2008年に国営化された後、社員数は膨大に膨らみ、再度、赤字に転落して、今では累積赤字が10億ドルを超えています。

IMFの融資には、ラージャパクサ一族の政治からの排除を条件にしてほしいと思うのは、私だけではないはず…

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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