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有元美津世のGet Global!

ウイズコロナ時代の海外旅行(3) - リスク(後)2022.03.08


 3月1日から日本でも帰国時の検疫が緩和され、指定国以外から日本へ帰国の場合、ワクチン3回接種していれば自宅待機は不要となりました。3回目の接種をしていなくても、入国後3日目以降に自主検査をして陰性であれば、その時点で自宅待機を終了できることになりました。これで、海外旅行に行く人も増えるのではないでしょうか。
 イギリスに続き、ヨーロッパの国は、次々に渡航前のPCR(または抗原)検査を不要にしています。私は、モルディブに着いたところなのですが、渡航前のPCR検査を受けた翌日に、陰性証明は不要となりました... スリランカが3月1日から入国前の抗原検査を不要にしたため、観光客を奪われないようにモルディブも続くのではないか、と旅行者の間では噂になっていたところでした。
 ただし、日本のように入国時に全員検査をする国は珍しいとしても、渡航前のPCR検査陰性証明に加え、まだタイのように入国時に自己負担で検査を義務付けている国もあります。そこで、生じるのが陽性となった際のリスクです。(日本の場合、強制隔離の費用は国が負担していますが。)

4. 渡航先でコロナ陽性になるリスク


 タイ観光に関する掲示板では、タイ到着後1日目(これまでは5日目も)のPCR検査で陽性になり、隔離された人たちの恐怖の話がいくつも掲載されています。それを読んで、タイ行きをキャンセルした人も少なくありません。
 今では、ホテルでの隔離も許されることが増えたのですが、最近までは陽性になった途端、ホテルに救急車が来て、指定病院で10日間の入院を強いられていました。オミクロン株の蔓延で病室が足らなくなったため、無症状の場合、hospitelと呼ばれる療養施設やホテルでの隔離を許されるケースも出てきましたが、ケースバイケースで、この辺のルールがはっきりしないのがタイの困ったところです。[1](60歳以上は、症状があるかないかに拘わらず、強制的に入院。)
 コロナ下で子供連れで旅行するロシア人やヨーロッパ人が多いのにはビックリするのですが、10代の子供一人だけが感染して、10日の隔離の間、親と離れ離れになったという実例はいくつかりますし、親が感染し、他に子供の世話をする人がいない場合、子供は福祉センターに預けられるということが法律で定められています。
 こうしたリスクのため、「2週間未満の滞在ならタイを訪問する価値はない」という旅行者が多い中、7~10日の滞在で渡航し、到着後陽性で、観光することなく、隔離後、そのまま帰国する羽目になった人たちもいます。
 タイでは、入国の条件として、コロナに感染した際の医療費をカバーする保険購入を義務付けていますが、「無症状の場合は保険金が降りない」「病院以外で隔離する場合は保険金が降りない」「濃厚接触者(close contact)が隔離する場合の費用はカバーされない」などの実体験に基づく情報がいくつも掲示板に投稿されています。病院に前払いをせかされてクレジットカードで支払ったところ、保険会社から払い戻しをしてもらえないという人たちもいます。なお、皆、タイでコロナで入院した際、60万円、70万円といった医療費を請求されています。
 また、陽性だった場合の隔離期間は(未だに)10日ですが、濃厚接触者の場合、14日です。そのため、カップルや友人同士で一人だけ陽性だった場合、別々の施設で陽性者は10日間、陰性者は14日間の隔離となります。

・マスクをしない観光客
 私は、無事、1日目と5日目のPCR検査、スリランカ渡航前の抗原検査で陰性だったのですが、とにかく、欧米人、とくにヨーロッパ人とロシア人はマスクをしないので、彼らには極力、近づかないようにしていました。何人かのアメリカ人が「マスクを着けないヨーロッパ人、お前らのせいで欧米人が皆、無知に思われている。現地のルールを守れない奴は来るな!」と怒ってスレッドを立てるくらいです。(アメリカ人は、マスク信奉者と拒否者に大きく分かれ、する人はする。アジア生まれのアジア系は皆、している。)
 タイでは、屋内外でマスク着用が義務付けられており、州によっては罰金最高2万バーツを課せられるので、現地の人は(一部の島を除き)、大半がマスクを着用しています。[2]
  私がプーケットにいた1月、歓楽地のPatongのナイトクラブで、スウェーデンからの若者がマスクなしで、踊りながらキスしたりして、何人も感染したといった話が流れていました。(感染を避けるには、歓楽地には近づかない方がいい。)[3]
 屋外でもマスク着用が義務付けられているため、マスクを着用してバイクに乗っている人が多いのですが、飲食店に入ってきた途端、マスクを外して大声で喋り出す観光客の多いこと!(タイの店員さんたちが、実に気の毒。)パンデミックが始まって2年になるというのに、まだマスク着用の意味がわかっていない人たち…。
 観光客の間では、一番マスクをしないのはロシア人という評判です。なお、タイに入国した外国人の中で、PCR検査で陽性になる人の割合はロシア人が群を抜いて多いのです(といっても、絶対数ではタイ人の方がずっと多いですが)。次に多いのがカザフスタン人です。
 なお、タイにしろスリランカにしろ、2月までは外国人旅行客の中で一番多いのがロシア人でしたが、ロシアによるウクライナ侵攻後、当然のことながら、激減しています。(ちなみに、1月前半の入国者では、日本人も上位10位に入っていた。)

5. 不確実性(uncertainty)への耐性


 ウクライナ侵攻の影響もあってか、まだまだタイ行きフライトがキャンセルされてしまったという人たちがいます。出発予定日の数日前にフライトがキャンセルになって予定より早い便に乗ることになったり、海外から直通便でプーケットに到着するつもりが、キャンセルされたので、バンコク便に振り替えられたという人たちがいるのですが、こうした場合、Thailand Passを取り直す必要があります。(Thailand Passは、元々の到着予定日から72時間のみ有効。)
 フライトがいつキャンセルされるかもわからず、入国条件はコロコロ変わるし、上述のように、到着後、陽性になるリスクもあり、不確実なことだらけです。「出発前の検査で陽性になったら、どうしよう」と心配で寝られないという人もいます。
 行くと決めたなら、最悪の事態も考慮して腹をくくるしかないのですが、こうした不確実性への耐性が低い人は耐えられないようです。そうであれば、カンボジアフィリピン、スリランカのように、もっと簡単に入国できる国があるので、わざわざ手続きの面倒なタイに行くのは止めた方がいいかもしれません。  

ただ、今の時期に旅行することのメリットは、コロナ前に比べ観光客が格段に少ないことです。コロナによって、世界各国の観光地のオーバーツーリズム問題は、一時的にも解消されました。(昨春、嵐山の竹林で、観光客の入らない写真が撮れた!)まだまだ多くの人たちが海外旅行を控える中、こんなチャンスは、(皆さんより年寄の私には)生きている間に二度と巡ってこないかもしれないのです!
 私は、プーケットやモルディブのように、コロナ前には観光客でごった返しているところなど行きたいとも思いませんでした。石垣島などと同じで、またクルーズ船が就航し出すと、一度に何千人という観光客が押し寄せるのです。
 ということで、私は、この時期に、人気観光地を旅行しておいてよかったと思っています。


<余談>
 やはりマスク着用が義務付けられているスリランカでは、飲食店の屋外テーブルで、横に座った若い白人男性二人がマスクをして、食べる前に除菌ジェル(hand sanitizer)を取り出して使っていたので、「何と珍しいヨーロッパ人!どこの国の人?」と思って聞く耳を立てたところ、フランス語話者でした。そこで、「フランス人?」と聞くと、その通りで、「フランス人でマスクしてるって珍しいね。除菌ジェルまで使って」と言うと、「その通り、フランス人はマスクしない。でも、リヨンの人たちはルールを守る人が多いんだ。」



[1] 他にも、ルールがコロコロ変わるので、ホテルや病院が変更についていけていない。誰に聞いてもわからないということが多々。追跡アプリも一応あるが、ほとんど使われていない。
[2] 「タイでは多世代同居家庭が多く、若い人が感染が感染して、高齢者に移したり、仕事を休まざるを得なくなって生活が貧窮するケースもある」とマスクを着けない外国人に憤慨しているタイ人も少なくない。
[3]  2021年9月には、(カントリーミュージックの聖地)ナッシュビルのあちこちのライブハウスで、マスクなしで体をくっつけあって踊っている人たちを目撃。当時、テネシー州は人口あたりのコロナ死者数で全米一だった。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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