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有元美津世のGet Global!

中欧について学ぶ(9)ー モンテネグロ2020.01.14

 
  クロアチアの南にあるモンテネグロは、2006年にユーゴスラビアから独立した非常に新しい国です。観光業を一大産業に育てることが国策になっており、70万人にも満たない人口の小さな国に、年に200万人以上の観光客が訪れます。(東京足立区の人口規模。)

 世界遺産のコトル(Kotor)は、ドゥブロブニクからバスで2時間半ほどのところに位置します。山に囲まれたコトル湾の眺めは、ドゥブロブニクとは、また違った美しさです。

街自体が小さいので、ドゥブロブニクほどの観光客はいませんが、やはりクルーズ船が寄港するため、小さな旧市街(Old Town)はクルーズ船の乗客だらけになります。

 そして、モンテネグロに入ると、クロアチアより、さらに英語が通じにくくなり... 

 なお、モンテネグロの通貨はユーロなのですが、1999年にユーロを導入するまでは、通貨は独マルクだったそうです。

西バルカン


 スロベニアからクロアチア、モンテネグロとバスで南下するごとに、街並みやパスが貧しくなっていく感じがしたのですが、中欧の国民ひとり当たりのGDPを見ると… 37,000ドル近いスロベニアに対し、クロアチアは26,000ドル、モンテネグロは18,900ドル弱(タイと同じくらい)で、然もありなん。モンテネグロの南にあるアルバニアは、さらに低くて13,000ドルです。

 クロアチア、モンテネグロ、セルビア、マケドニア、ボスニア・ヘルツコビナ、アルバニアの7ヵ国は、EU非加盟の国ということで「西バルカン(Western Balkans)」と呼ばれています。ただし、クロアチアは、2013年に加盟しました。残りの6カ国も加盟を切望しており、EUも安全保障のために、これらの国を取り込みたいのですが、なかなか交渉が進まない状態です。

民族間の対立

 モンテネグロの民族構成は、45%がモンテネグロ人(Montenegrin)、31%がセルビア人、9%がボシュニャック人(ボスニア系イスラム教徒)、5%がクロアチア人です。*

 ユーゴスラビア解体の過程で、セルビア系住民の多いモンテネグロは、最後までセルビアと連邦に残っていました。ところが、2017年にNATOに加盟したため、セルビアは唯一の海への軍事的アクセスを失い、周辺をほぼNATO加盟国に囲まれてしまうことに。

 モンテネグロのNATO加盟は、国内で半数近くが反対し、クーデター未遂も起こりました。コソボ紛争時には、NATO軍の空爆によって、モンテネグロ内でも民間人の死者が出ており、「到底、受け入れられない」という声があるのは無理もないでしょう。

 さらに、先月、モンテネグロ議会が可決した新法が、民族間の対立を激化させました(乱闘が起こり、多くの議員が逮捕された議会の様子は、ヨーロッパで大きなニュースに)。これは、モンテネグロ王国がセルビア・クロアチア・スロベニア王国(後のユーゴスラビア)に加わった1918年以前に、モンテネグロ王国が所有していた宗教関連施設は、中世の修道院なども含み、すべてモンテネグロの国家財産と見なすというものです。

 モンテネグロ最大の宗教団体であるセルビア正教教会(およびセルビア政府)は、同教会の資産を没収して影響力を弱めようというモンテネグロ政府の謀略だ、と反発しています。

モンテネグロには、1993年に設立されたモンテネグロ正教会もあり(総主教庁や各正教会には承認されていない)、セルビア正教会とは敵対関係にあるのですが、1918年以前のセルビア正教会の資産はモンテネグロ正教会に所有権があると政府は主張しています。(モンテネグロ政府は、モンテネグロ正教会を同国の正式な教会にしたい。)

 実は、新法案の可否も、モンテネグロ系と少数民族(ボシュニャック系、クロアチア系、アルバニア系)対セルビア系と、民族で分断しています。

 法案通過後から、モンテネグロ国内だけでなく、セルビアやコソボでも、セルビア正教会による抗議デモが行われています。セルビアの大統領は、今月、(正教の)クリスマスの祝賀のために、モンテネグロを訪問予定だったのですが、急遽、訪問をキャンセルしました。**

  このように、西バルカンは、今も一発触発の火薬庫状態なのです。

 

 

 

* 独立までは「モンテネグロ人」という民族は存在せず、「セルビア人」だったという説も。

** ユリウス暦を使う正教のクリスマスは1月7日。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など多数。

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