Global Career Guide
元・外資系人事部長、10,000人を面接したグローバル・キャリア・カウンセラーの鈴木美加子です。
先日、グローバル人材育成塾の卒業生から相談を受け、転職先を正しく選ぶためには、何が自分にとって一番大切なのか、価値観の優先順位が明確でないと迷って決められないとつくづく思いました。本日のテーマは、“価値観の優先順位を明確にする”です。
卒業生は、何とラッキーなことに3社からオファーを頂き、明日までに転職先を決めないといけない状況でした。3社とも外資で、職種は人事、職業柄、業界はバラバラでB to Bの会社も、B to Cの会社もあるという感じでした。それぞれの会社の特徴を伺っていて、転職先を決めるにあたって重要な価値が二つあるように感じました。
『年収』×『やりたい仕事ができるかどうか』です。
A社は、前からやりたいと思っていたことができる会社なのですが、ここのところ業績が思わしくなく、向こう1年の賞与が支給されるかどうかわからないそうです。もし賞与が出ないと、現職より年収が落ちることになり(50万円くらいの話ではありますが)、その点はかなり気になる様子でした。この会社からのオファーが唯一マネージャー職で、他の2社はスタッフ職です。
B社は、仕事の内容は今ひとつですが、一部上場会社で圧倒的に安定しており、希望の年収をオファーしてもらえたとのこと。安定を取るならこの上ない企業ですが、仕事の内容にワクワクしないこと、扱っている商材にあまり興味を持てないことが気になる様子でした。
C社は、A社ほどではないけれど仕事の内容がやりたいことに割と近く、希望の年収をオファーしてもらえています。会社自体は、日本ではまだ知名度が高くないけれどアメリカでは著名な企業で、これから拡大していく戦略とのことでした。
一人で考えているとありがちですが、上記の3社の間で、思考がぐるぐる回っているようだったので、肝心なのは、『やりたい仕事ができる』ことと『年収』のどちらが重要なのかではないかと尋ねました。両方を満たしている企業がないのが現実なので、二つの価値観のどちらか一つ、つまり『やりたい仕事ができる』か『年収』のどちらかしか選べないとすると、どちらを選びたいのか?です。困ったことに“選びきれない”が正直なところのようでした。気持ちはA社にかなり傾いているけれど、年収が落ちることになるかもしれないことが、どうしても気になる様子です。話を詳しく聞く過程で、『年収』は本人が思っているより重いウエイトを占めており、A社には決めきれないだろうなと元人事の直感で思いました。
最終決断は本人にしかできないので、私がした提案は3社を表にまとめて色々な角度から採点してみることでした。『年収』『やりたい仕事ができるかどうか』以外にも、会社の持つ特徴をリストアップして、○×△もしくは数字採点で、それぞれの会社の総得点がどうなるのかを見える化してみようというわけです。圧倒的に秀でた企業があるのかないのか、同じような点数なら『やりたい仕事ができる』か『年収』なのかを無理やりにも決めて選ぶしかありません。
A社 | B社 | C社 | |
仕事のやりがい | |||
年収 | |||
通勤時間 | |||
在宅勤務の可能性 | |||
役職 | |||
残業時間 | |||
会社の知名度 |
本来は転職活動をスタートさせる前に、「今回の転職の優先順位は何か」を自分の中で明確にしておいたほうが賢明です。『まだ経験が足りないから、とにかくたくさんのことを経験させてくれる職場』『家族の事情で在宅勤務制度があることが必須』『どうしてもマネージャータイトルが欲しい』『将来、留学したいのでとにかく年収が高いこと』など、これはどうしても譲れない価値観は何かを明らかにしておきましょう。
そうでないと、魅力的な面接官が出てこられたり、予想よりかなり良い給与パッケージが提示されたりなど想定外のことが起きた時に、軸がグラグラしてどの企業を選べば良いのかわからなくなってしまいます。
11/9(金)に、Daijob.com社のグローバル人材転職フェアが開催されます。たくさんの企業の方にお目にかかれる素晴らしい機会であり、同時にご自分の価値観の優先順位がはっきりしていないとブレてしまう場にもなり得ます。会場に出かける前に、優先順位を決める練習をぜひしてください。
当日、18:30 – 19:20に「元・外資系人事部長が語る、転職を成功させるために確認しておきたい5つのポイント」と題して、登壇させていただきます。「今」転職すべきでない人はどんな人か、転職先企業のチェック項目は何か、など転職を成功させるために必要な準備について、10,000人を面接した人事の目線でお伝えします。転職をお考えの方、すでにスタートしている方、どちらにも役立つ内容にさせていただきますので、ご興味がある方はどうぞご参加ください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。