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有元美津世のGet Global!

英語ネイティブにも不可解な職場での英語表現 -- Jargonの使用2023.07.11

 

  4月にLinkedInが、日本を含む8ヵ国(アメリカ、イギリス、インド、オーストラリア、コロンビア、ブラジル、ベトナム)で、各国1000人以上に職場でのjargonの利用についてアンケート調査を行いました。

  ”Jargon”というのは、元々、「部外者には理解できない業界や職業で使われる専門用語」を指します。たとえば、IT業界で使われる”ecosystem”(元々は「生態系」という意)、ビジネス用語であれば、“agile”や”KPI”などがあります。

  しかし、下記の表に見るように、このアンケート調査結果で挙げられている用語は、業界用語や専門用語ではなく、イディオム(idiom)だと思うので、この調査に関する記述では”jargon”のまま使います。

  アンケート調査では、回答者の58%が「職場で同僚がjargonを使いすぎる」と答えました。とくに若い世代では、Z世代(81年~96年生まれ)の60%、ミレニアル世代(1997年~2012年)の65%が「職場でのjargonを使わないようにすべき」と答えています。ちなみに、これは、X世代(65~80年)では50%、ベビーブーム世代では23%でした。

  また、回答者の60%が、「意味がわからないので、自分で意味を調べなければならない」と答えており、40%が「Jargonの意味がわからなかったため、または誤用したために、ミスコミュニケーションが起こった」とも答えています。

  なお、jargonを使う理由は「Jargonを理解できた方が、職場での昇進・昇給につながる」と信じているからのようです(61%)。「Jargonを理解できないと帰属意識が得られない」というのも理由です。つまり、jargonの使用はD&I(diversity & inclusion)とは反対の疎外感を生んでしまうということです。

 

不可解な表現

 

  上述のアンケート調査によると、英語圏での、わかりにくくてミスコミュニケーションを起こしやすいjargonワースト5は、下記のとおりです。

 

アメリカ 1. Boiling the ocean
2. Herding cats
3. Ducks in a row
4. Move the needle
5. Run it up the flagpole
イギリス 1. Blue sky thinking
2. COP/EOP/EOD
3. Low-hanging fruit
4. Move the needle
5. Ducks in a row
オーストラリア 1. Boiling the ocean
2. Noodling
3. Low-hanging fruit
4. Juice worth the squeeze
5. Wheelhouse

 

  こうした表現の意味がわからないという人が多いのは、あまり使われる表現ではないからでしょう。古い表現が多く、60代でも「聞いたこともない」というアメリカ人もいます。このように英語ネイティブでも意味がわからず調べないといけない表現はあるので、ネイティブでない日本の人がわからない表現に出くわしても、そんなに気にする必要はないかもしれません。

  イギリス英語圏で難解とされる”low-hanging fruit”(簡単に手に入るもの)は、アメリカではよく使われます。このように、同じ英語圏でも、国によって使われる業界用語やイディオムは違い、イギリス人が日常的に使う表現には、アメリカ人には通じないものもあります。

 

外資系jargon

 

  なお、日本のワースト5は下記のとおりですが、これこそ、本来の意味のjargonです。日本の一般の人にはワケのわからない「カタカナ用語」であり、外資系jargonと言ってもいいかもしれません。

  しっくり当てはまる日本語訳がない英語の単語を、そのまま使いたくなる気持ちはわかりますが、たとえば「バジェット」のように、「予算」で事足りるのに、わざわざカタカナ(英語)を使う意味はあるのか...「リスケ」に関しては略語ですが、日本語では、こうした略語が多いので、混乱する人は多いと思います。やはり、ミスコミュニケーションや疎外感を生むもので、プラスの効果は少ないのではないでしょうか。


1.バジェット (budget)
2.ASAP
3.アジェンダ (agenda)
4.アサイン (assign)
5.リスケ (reschedule)

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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