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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(38)-- Collectivism/Collectivist(ic)2023.04.25

 

  前回、”conformist”について書きましたが、二年前、コロナ禍全盛時に、ベトナムに住むアメリカ人が、(国の厳しいロックダウンにベトナム人が従うからか)下記のようなメッセージを送ってきました。


Asians are such conformists.
(アジア人って、ホント従順だな。言われた通りするんだな。)


  「アジア人がconformist」というのは、欧米でのアジア人に対するステレオタイプです。欧米には個人主義の国が多いのですが(すべてではない)、そうした国々では、conformistというのは、自分の意見を持たない骨なしのsheep(黙って従う臆病者)といったマイナスのイメージをもたれています。

 

Collectivist(ic)

 

  まず、集団主義(collectivism)とconformity(遵奉、服従)の関係ですが、


Collectivist cultures value collaboration, interdependence, and conformity to roles and norms.
(集団主義の文化は、協力、相互依存、役割や規範の順守を重んじる。)


Collectivism tends to emphasize social harmony, respectfulness, and group needs over individual needs.
(集団主義は、社会の調和、敬意、個人のニーズよりグループのニーズを重んじる傾向がある。)


  シンガポールのメディアでも、下記のような記述が見られました。


For a collectivistic society like Singapore, this might be a way for them to conform and not stand out from the crowd.
(シンガポールのような集団主義の社会では、これは社会規範に従い、群衆から目立たないようにする方法かもしれない。)


  アメリカの大学・大学院では、社会学科系だけでなく、国際ビジネスなどの授業でも、「集団主義文化vs個人主義文化」の話が必ず出てきます。「個人主義の方が優れている」という論調とともに。


Many American small businesses emphasize individualism, the focus on each employee as an individual with strengths and talents, over collectivism.
(アメリカの中小企業の多くは、集団主義よりも、個々の社員を長所と才能を備えた個人として見る個人主義を重んじる。)


  ネットのアジア系アメリカ人コミュニティでは、韓国系アメリカ人が、下記のような問いかけをしていました。


Asian cultures, especially East Asian cultures, are said to be collectivist and conformist rather than individualist.(※1)
(アジアの諸文化、とくに東アジアの文化は、個人主義というより、集団主義でconformistだと言われる。)


  「これって、当たってると思う?韓国に限っていえば、集団主義だと思わないけど。<中略>私から見ると、白人によるpassive aggressiveな批判だと思う。皆は、どう思う?」

  これに対して、「ヨーロッパや南アメリカには、アジアより集団主義の国があるよ」「集団主義にも個人主義にも、どちらにもいい点と悪い点があるよね」といった意見が寄せられました。

 

日本人って集団主義?

 

  日本では、子供のころから「欧米の方が優れている」「欧米のやることが正しい」とメディアや周りに刷り込まれ、「集団主義の日本はダメだ。欧米のようにならなければ」といった論調が一般的です。

  しかし、近年、日本国内でも、「日本人が集団主義だというのは誤解だ」という論調も出てきています。世界的に広く採用されている集団主義・個人主義志向を測るモデルでも、日本は中レベルで、ポルトガルや中東欧、ロシアよりも個人主義的です。日本と比べると、中韓の方が集団主義的志向がかなり強いです。なお、集団主義志向が高い国トップ10のうち8カ国は中南米の国々で、あとの二カ国はインドネシアとパキスタンでした。(※2)

  集団主義・個人主義、同調行動に関する過去の心理学的研究では、「日本人とアメリカ人の間に明確な差はない」という結果が多数で、「日本人よりアメリカ人の方が集団主義的」という結果もあり、「日本人はアメリカ人より集団主義的」という結果が一番少ないのです。

  ということで、上述のアジア系アメリカ人が問題提起したように、欧米人、とくにアメリカ人が「日本人、アジア人は集団主義」というネガティブなレッテルを貼った説が濃厚です。

  なお、歴史的に見ると、社会は集団主義から個人主義に移行する傾向にあり、「集団から個の時代へ」というのは世界的な流れのようです。


The majority of the world, about 70% of the population, was collectivist at the end of the 20th century.
(20世紀の終わりには、世界のほとんど、人口の約70%が集団主義だった。)


In Asian countries, including Japan, levels of collectivism are lowering among the young, the wealthy, and the urban.
(日本を含むアジアの国々では、若者、富裕層、都会派の間では、集団主義の程度が低下している。)


(※1) アメリカ国内を含め英語でアジア文化が語られる際、アジアにはひとつの文化しかないように、単数で”Asian culture”が使われる。これこそ、「アジア人は皆、同じ」(ほぼ、アジア人=中国人)の偏見の表れなのだが、さすが偏見に苦しむアジア系アメリカ人、”Asian cultures”と複数を使っている。

(※2) 日本でよく聞く「日本が世界で一番集団主義」というデータはない。「日本だけ」の通説のほとんどが思い込みで、根拠を伴わない。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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