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有元美津世のGet Global!

旅行したくない日本人?2023.01.10

 

  今回の年末年始の休みは短かった人が多いようですが、海外を旅行された人もいるのではないでしょうか。(外国人旅行者の比較的少ないマレーシアのSabahでも、年末に日本人観光客を見かけました。)

  そこで旅行の話ですが、昨年7月に、アメリカの調査会社が15ヵ国の成人1万6000人を対象に行なったアンケート調査では、「この先、二度と旅行する気はない」という人の割合が、世界的にアジアで一番高かったそうです。

  韓国では回答者の15%、中国では14%が、そう答えたのですが(アメリカも14%)、それを大きく上回り、ダントツで一位に輝いたのが、35%の日本だったのです。

 

「二度と旅行しない」と答えた人の割合
(Morning Consult)

 

  アンケート調査は、昨年の4月と7月に行われたのですが、その3カ月の間で、日本で「3カ月以内に旅行するつもり」「一年以内に旅行するつもり」という人は、それぞれ7ポイント(19%から26%)、4ポイント(41%から45%)増えました。ところが、「今後二度と旅行するつもりはない」と答えた人の割合は35%で変わりませんでした。

  「今後、旅行するつもり」と答えた人の割合も、日本は他国より低く、「一年以内に旅行する」と答えた人が45%に対し、韓国は66%、中国は65%でした。なお、一番多いのが、ドイツで77%、次にイギリスで75%でした。(イギリス人とドイツ人観光客には、アジアのあちこちで出会う。)

  質問は、「プライベートの旅行」に関してで、「国内旅行」「海外旅行」という区別はしなかったそうです。(「国内旅行も二度とする気はない」という日本人が35%もいるというのは信じがたい。)

 

海外に行きたくない理由

 

  海外渡航に目を向けた場合、日本政府観光局(JNTO)によると、日本人の出国者数は、2019年8月に200万人を超えていましたが、コロナ勃発後、2021年2月には2万4000人まで落ち込みました。2022年には回復基調になりましたが、8月に38万人を超えたものの、2019年のピークの2割程度にすぎません。

  観光業界の人たちや研究者などは、旅行を敬遠する日本人が多い理由として、「リスク回避の国民性」「(感染リスクが高ければ)同調圧力」「円安」などを挙げていますが、一番の理由は、帰国時の自宅待機、公共交通機関利用の不可などの渡航規制だったのはないでしょうか。

  日本では、2022年前半は、国やワクチン接種状況によっては、まだ帰国後の自宅待機が求められていましたから、帰国後、仕事に行かないといけない人にはハードルが高かったでしょう。実際に、ワクチンを3回接種していれば自宅隔離が必要なくなった3月からは、出国者数が徐々に増えています。

  また、日本人観光客に人気の近場の韓国や台湾も、まだ入国規制を強いていたのも一因ではないでしょうが。

  今年、海外旅行をする人は増えると思われますが、出国者数は、2000年から2018年までの間、年1700万人~1800万人ほどで、世界的に海外旅行をする人が急増する中、日本では、ほとんど変わっていません。とくに若者が海外に行かなくなったと言われますが、それについては、またの機会に触れたいと思います。

 

飛行機を忌避?

 

  なお、面白いことに、上記の調査で4月に比べて7月に「旅行するつもり」と答えた人の割合が減った国があります。「一年以内に旅行する」という人は、アメリカでは77%から66%に10ポイント以上減り、イギリスでは78%から75%に下落しています。「二度と旅行したくない」という人は、アメリカでは12%から14%に、イギリスでも5%から8%に増えています。

  私の推測ですが、アメリカでは昨年7月の独立記念日の「民族大移動」時に飛行機の欠航や遅延が相次ぎ、空の便は大混乱しました。ヨーロッパ(とカナダ)では、もっと長く混乱が続きました。アジアに向かうイギリス人観光客は、各地方空港から「飛行機が〇時間も遅れて国際線乗り継ぎに間に合わない」とネットの旅行コミュニティで、しょっちゅうぼやいています。そうした中、「もう飛行機はウンザリ」という人がいるのも事実です。

  実は、このクリスマスの大移動時にも、アメリカではサウスエスト航空が1万7000便近くも欠航して、空前の大混乱(meltdown)を引き起こしました(最大の原因は同社の古いシステム)。そこで、カリブで自分の結婚式に出席できなかった花嫁、カリブのクルーズに行けなかった新婚夫婦、息子の誕生日に念願だった日本に行けなくなった家族などが続出し、各自の損害額は数十万円から1000万円近くにのぼるそうです。

  初めての海外旅行で、そういう目に遭ったら、トラウマになって「二度と行きたくない」と思っても不思議ではないですね。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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