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有元美津世のGet Global!

ウイズコロナ時代の海外旅行(1)- 開国ラッシュ2022.02.22


 私が昨年10月にアメリカから日本に入国した際には、出張者と思しき人たちもいたので、皆さんの中にも、昨年は、海外出張に行かれた人もいるのではないでしょうか。(2020年の同時期に比べ、同じルートのフライト搭乗者は格段に増えていた。)
 日本では「海外旅行はいつになったら行けるの?」なんて言っている人もいますが、欧米の国々は、元々、日本を含むアジアのような厳しい入国制限はしていませんし、*  アジアの国々も次々に観光客に門戸を開放しています。
 モルディブは、2020年の7月から観光客の受け入れを再開していますし、タイは、多々条件付きではあるものの、昨年7月から観光客を受け入れています。近隣諸国に観光客を取られては困ると、カンボジアは11月末から、フィリピンも今月から観光客の受け入れを再開しました。ベトナムは、昨年11月から団体旅行に限定して一部の都市で受け入れていますが、予定を3ヵ月前倒し、3月には個人旅行も解禁する方向で調整しています。
 インドネシアのバリは、昨年10月から、日本を含む一部の国からの観光客の受け入れは再開していたのですが(それまではビジネスビザで入国する観光客も)、今月まで直行便が飛んでいなかったため、渡航する外国人は限られていました。今月から、すべての国からの観光客受け入れを開始しましたが、入国後ホテルでの5日間の隔離が必要です。ただし、今週からワクチン3回目接種者は3日に短縮予定です。
 日本の人が海外への渡航が未だにしにくいのは、日本が入国時に隔離を強要しているからです。1月までは、(国によっては強制隔離を含む)自主隔離14日間だったので、フルリモートでもない限り、会社勤めの人は、まず海外旅行には行けないですね。ただし、隔離期間は1月に10日、2月には7日に短縮されたので、「これなら行ける」という人もいるかもしれません。今後、ワクチン3回目接種を条件に、自主隔離期間は3日に短縮されるようなので、海外旅行に行く人も増えるのではないでしょうか。

ウイズコロナの入国


 私が、なぜいろいろな国の入国制限に詳しいかというと、ノマド生活を送る私は、2020年からずっと「どこの国なら入国できるか?」を調べているからです。日本を含む各国の入国条件はコロコロ変わるので、常に追っておく必要があるのです。(それなのに、パンデミックが始まってから一度も海外に行ったことのない人たちが — それまでも海外に行ったのは数回くらい? — 「海外に比べて水際対策が甘い」「日本はお願いベースですから」など、テレビなどで憶測、妄想だらけの話をしている。)
 私は、今、スリランカにいますが、先月は1ヵ月タイにいました。昨夏から観光客の受け入れを再開したタイは、当初、人気の観光地プーケットなど一部の指定地域に海外から直行し、政府の認定を受けたホテルに14日間(現在は7日間)滞在すれば、その後、タイ全土どこに行ってもよという条件でした。私も、そのプログラムで入国するつもりだったのですが、11月に、認定ホテルに1泊してPCR検査で陰性であれば、全土どこに行ってもいいという隔離免除(quarantine exemption)の新たなプログラムが始まったので、そちらに乗り換えました。(プーケットへの直行便は、現時点では、日本や欧米からシンガポール経由しかなく、バンコック便の方が選択肢は多く、かつ航空料金が安いので、通常、皆、バンコック着便を選ぶ。)


 どのプログラムで入国するにしろ、ワクチン接種済み、渡航前の陰性証明、かつコロナ医療保険の購入が条件で、またThailand Passというパスをオンラインで取得する必要があります。(これはビザとは別で、30日間以内の滞在はビザ免除。)
 ところが、11月に各国でオミクロン株が広がり、そのプログラムは、わずか3週間で一時停止されたのです。私のように、すでにThailand Passを取得していた人は、そのまま入国してよいという条件でした。(ただし、当初「1月15日までの入国に限る」などと言われていたので、その時点で旅行をキャンセルした人たちもいたが、結局、制限はなしということに。健康省や官公庁など各省庁で思惑が違い、不明慮なことが多々。)
 隔離免除プログラムが中止されたため、タイ行きをあきらめた人たちが続出したのですが、タイ政府は、またそれから3週間ほどで、2月1日にプログラムの再開を発表したのです。v2.0は、入国後5日目も認定ホテルに泊まり、PCR検査が義務付けられており、v 1.0よりも条件が厳しくなっています。

外貨不足


 すでにグローバル人材として活躍している、またはグローバル人材を目指す皆さんですから、まず国際経済の基本は押さえておく必要があるでしょう。
 なぜ、日本と同様に保守的で、1年ほどはゼロコロナ政策を進めてきたアジアの国々が、今、開国合戦を繰り広げているかなのですが、もちろん、モルディブやカリブ海諸国のように、観光業が国の主要産業の場合、観光客に門戸を開かないことには、国の経済が成り立ちません。また、タイやスリランカのように、GDPに占める観光業の割合が大きい国でも、観光業は外貨獲得のための重要な手段となっており、海外からの観光客なしでは外貨不足が生じるのです。
 とくに、以前から債務危機に陥っているスリランカでは、パンデミック勃発後1年で、外貨準備金(foreign exchange reserves)が半減して、海外からの輸入が滞り(港で輸入物資が足止め)、燃料や食料品などの生活物資が高騰しています。(ガソリンが高いのにはビックリ。)深刻な外貨不足で、12月には、イランへの石油代を紅茶で支払ったくらいです。
 1月にも債務不履行に陥るかと言われていたのですが、インドから石油購入のための緊急融資を取り付け、何とか返済しました。ただし、それで外貨準備金が、さらに25%減少してしまい、7月に迫る次の債務返済の目途は立っていません。
 スリランカ政府は、2月に、海外在住の自国民に送金するように要請したくらいで、外貨を得るためには、鎖国などしている余裕はないのです。スリランカでも、オミクロンの蔓延でコロナの感染は広がっており、「また入国を制限するのでは?」と心配する外国人観光客もいるのですが、スリランカ国民は「それは絶対にない。この国には、そんな選択肢はない」と危機的状況を理解しているようです。(スリランカの経済危機は、日々、悪化しており、詳細は、また後日。)

* イギリスは、2020年の夏から、日本を含めた一部の国からの観光客は入国後の自主隔離だけで受け入れていた。自主隔離せずに動き回るアメリカ人観光客が問題になっていた。アメリカが入国制限していたのは、ヨーロッパ、南アなど一部の国、アジアでは中国とインドのみ。そもそも、アメリカでは、国内の陽性者も、各人の判断による自主隔離のみ。
昨年、ラスベガスに行った日本人が、その賑わいを見て「さすがワクチン先進国」という勘違い発言をしていたが、2020年9月、ワクチン接種が始まる前から観光客でにぎわっていた。私、ユタに行く途中でラスベガスに寄ったので。当時、閑散としていた他の米国内空港と違い、空港の人の多さにビックリ。
欧米人の大半は、日本人のようにコロナにビビってない。欧米諸国の感染レベル(死者数)が、日本を含むアジアとは桁違いなのは、そのせいかもしれないが。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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