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有元美津世のGet Global!

民主主義を考えよう(5)自分の頭で考える2020.12.08


 大阪府では、コロナ重症者の急増で医療が逼迫しており、先週、吉村知事が医療非常事態宣言を出し、「12月15日まで、できるだけ不要不急の外出は控えてください」と府民に自粛を促しました。(東京でも、知事が11月末に同じような要請を。)すると、一部の府民からは「”できるだけ”というのが、わかりくい」という声があがっています。(ただ、従いたくないだけ?)

 今春、緊急事態宣言が出された際に、大阪府や東京都では、知事が「何が不要不急にあたるか」を細かく説明しました。「今日明日、このために外出をする必要があるか?」というのを、大の大人が自分で考えて決められないのでしょうか?

 吉村知事は、今春とは違い、「細かく府民の行動を制限したくない、経済活動を制限したくない」ということで、”できるだけ”をつけ加えることで、府民に判断の裁量を与えたわけです。

 ヨーロッパ各国は、先月からロックダウンに入っており、ドイツでは「2世帯以上の10人以上の集まり」は禁止されています。南カリフォルニアでは、ICU病床使用率が87%を超え、先の週末から再度、外出禁止令が発令されています。「屋外公園への外出も禁止」となりますが、日本の人も、そこまで細かく縛られたいのでしょうか?(やっぱり強権がお好き?)

 自分で考えずに、お上の言うことを聞いて、その通りしていた方が楽という人もいるのでしょう。それでうまく行かなければ、お上を批判すればいいだけで。自分で決めたのじゃないから、責任は取らなくていいし。

若者に限ったことではない


 「最近の若者は自分で考えない」という声もありますが、それは若者に限ったことではないと思います。今の50代以上の方が、自分であまりよく考えずに、敷かれたレールに乗って生きてきた人が多いのですから。終身雇用の時代、「勉強をして、いい大学に入り、一流の会社に入れば、人生安泰」という考えが一般的でした。”適齢期”になると、結婚して家庭を持つのが”普通”で。今の時代の方が、選択肢が増えた分、自分で考えないといけない場面が増えているのではないかと思います。

 私は、10年ほど前に『英語で意見を通すための論理トレーニング』という本を書いたのですが、ちょうど日本でロジカルシンキングが流行っていたので、参考に、そうした本を何冊か読んでみました。すると、「なぜ、女性だけがお茶くみをしなければならないのか?」と社員や部下に聞かれたら、「そういう慣習だから」と回答するようにアドバイスする本があって驚いたのを覚えています。「慣習だから」「前例がないから」というのは、論理とは言いませんし、そもそも考えることを放棄してますよね。

 前人のやり方を踏襲する、世間に言われたまま生きる方が、自分で考えるより楽だと思う人が多いのでしょうか。

 先週、20代の人と還暦祝いの話になり、長寿になった今、「祝うなら、60歳でなく80歳だよね」と意見が一致しました。還暦祝いとは、元々、中国の長寿の祝いの習慣を取り入れたものですが、古代、60歳は長寿だったからです。今の60歳で自分が高齢者だと思っている人は少なく(多分いない)、老人扱いすると怒られます。時代とともに、慣習だって変わるんです。「〇〇することが慣習、当たり前」でなく、「なぜ、そういうことになっているのか」を考えれば、踏襲すべきかどうかの判断もできるでしょう。

自分で考え、そして選挙に


 民主主義とは、一人一人が自分の頭で考えて、皆で物事を決めていかなければならないということで、それには判断するための材料、情報が必要です。その情報を得るために、メディアやSNSが垂れ流す真偽もわからない情報を受け身で消費するだけではダメ、という話に戻るのですが。

 私は、民主主義とは「(様々な属性集団の)利益のぶつかり合い」だと思っています。国政選挙では60代の投票率がダントツ高く、当然、政治家は投票に行く有権者の方を見ていて、その世代優先の政策になります。若い人たちの場合、若者向け政策を推し進めるには、まずは選挙に行くしかないです。高齢者に比べ人口が少なく、それだけでも不利な上に、半数以上が投票に行かないのですから。

 「皆で物事を決める」「皆の利益のぶつかり合いの折り合いをつける」というのは、小さなグループでも簡単ではないですよね。都道府県、国と大きくなれば、もっと大変なわけで。だから、民主主義って厄介(Democracy is messy)なんですよね。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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