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有元美津世のGet Global!

中欧について学ぶ(3)ー スロバキア 2019.11.26


先月、「スロバキアに対する事実ではないステレオタイプ(というより偏見)」* のひとつとして「生活の質が低い」というのを取り上げましたが、ほかに、下記のようなものがあります。

「スロバキアとスロバニアって同じ国だよね?」

 
 スロバキア(Slovakia)とスロべニア(Slovenia) は、Slov まで綴りが同じですし、どちらも中欧ということで、区別のつかない人は、世界各地で少なくないと思います。それどころか、スロバキアやスロベニアという国が存在することすら知らない人たちもいます。


 しかし、当然ですが、どちらの国の人も、他の国と一緒くたにされることを快く思っていません。二つの国を間違えないように注意しましょう。


 ちなみに、「スロバキア人」「スロバキア語」は、英語ではSlovakianではなく、Slovakです。 

Many Slovaks are offended when people think Slovakia and Slovenia are the same country.
(多くのスロバキア人は、スロバキアがスロベニアと同じ国だと思われることを腹立たしく思う。)

I don’t speak Slovak.(私はスロバキア語は話せない。)

「スロバキア人とチェコ人って同じ(民族)だよね?」

 
 先月、書いたように、「チェコスロバキアって、いつチェコとスロバキアに分離したの?」という中高年は珍しくないと思います。1993年に、連邦制を解消し、チェコ共和国(Czech Republic)とスロバキア共和国(Slovak Republic)に分離しました。

 
 元々、チェコ語(Czech)をしゃべるチェコ人(Czech)とスロバキア語(Slovak)をしゃべるスロバキア人(Slovak)が住んでいる地域は、オーストリア・ハンガリー帝国の一部でした。第一次世界大戦後、同帝国が崩壊した際に、チェコとスロバキアの2つの国になる予定だったのが、なれずにチェコスロバキアが生まれたのです。プラハを中心にチェコ人の支配が強いことを嫌うスロバキアは、その後も、何度か独立を試みましたが、果たせませんでした。

 
 ソ連崩壊と共に中東欧各国では民主化に向けて革命が起こりましたが、ルーマニアのように多くの犠牲者が出た国もある中、チェコスロバキアでは流血なしに民主化を果たしたため、同国の革命は「ビロード革命(Velvet Revolution)」とも呼ばれています。共産党政権の崩壊とともに、民族主義が強まり、2つの国に分離することになったのですが、当時、チェコ人もスロバキア人も、半数以上は分離には反対だったそうです。

 
 チェコスロバキア時代は、経済の発達したチェコにとって農業が中心のスロバキアはお荷物だったようですが、2004年のEU加盟後、スロバキアの経済は大きく伸び、OECD(経済協力開発機構)では、今年~来年、先進国の中でもっとも高い経済成長(4.3%、3.9%)を見せるのがスロバキアと予測しています。一方、チェコは中欧で唯一、経済が大きく減速する見込みです。

 
 なお、スロバキア最大の産業は自動車製造で、国民一人当たりの自動車生産数は世界一です。(2位はチェコで、日本は韓国に次いで4位。)

 

 

* 6 Stereotypes About Slovaks That Simply Aren't True

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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