外資系・グローバル企業転職情報サイト。英語などの語学力を活かす、海外で働く。
Daijob.comはインターナショナルビジネスプロフェッショナルのための転職情報サイトです。

INTERVIEW 3

継続的な支援をしたい! ラオスで挑戦を続けるビジネスパーソン

アイキャッチ
アイキャッチ
プロフィール
守野 雄輝
ラオス PTP Company Limited 代表

学生時代から国際インターンシップを斡旋する団体に所属し、卒業後はタイ現地でNPO団体に所属。その後、アイ・シー・ネット株式会社がラオスで展開していたプロジェクトを知り、現地採用スタッフとなる。現在はアイ・シー・ネット創業者の経営指導のもと立ち上げた拠点「ラオス PTP Company Limited」で、2012年から代表を務める。
Interest:途上国開発への興味からラオスへ

―どのような経緯でラオスへ? 紛争や貧困問題を学びたいという思いで大学に入り、途上国開発に興味をもちました。学生時代には国際インターンシップで、主にインドネシアやマレーシアなど東南アジアを中心としたプロジェクトにたずさわりました。
タイのNPOでの任期終了後、「一村一品運動」というラオスでのJICAプロジェクトを知り、現地採用スタッフとして雇用されました。東南アジア諸国で最も経済的に遅れているといわれるけれど経済発展だけがすべてではないのでは? という興味もあり2010年にラオスへ来ました。

―ラオスでの事業について教えてください。 プロジェクトが終了してしまうとこれまで支援してきた人々が前の状態に戻ってしまう状況が多くあることを知りました。会社という事業体なら少しでも継続的にかかわれるだろうと考え、会社を設立しました。
2013年からホテル業、レストラン業、ツアー業を中心にビジネスを始めました。新型コロナ感染症の影響でホテル業は閉鎖し、ツアー業はオンラインでの開催が中心となっています。2015年からは日本の商品をコンテナで運んで販売する小売業を手がけており、現在はメインのビジネスとなっています。



―小売業を始めたきっかけは? 日本の商品をタイから持ちこんで販売する小規模ビジネスはもともとありましたが、在ラオス邦人の増加を見込み、自分たちは食の部分でなにかできないかと考えました。
残念ながら在ラオス邦人数は増えていないのですが、日本の乾燥わかめやわさび、ふりかけなどがラオス人の間でかなりの人気を博しています。コラーゲンをはじめとしたサプリメントや化粧品なども販売好調です。今後もっと伸びる可能性があるため、ラオスでの展開を拡大させていきたいと考えています。

Awareness:ラオスで得た気づき

―ラオスに行く前と後を比べてご自身の中で変わったことは? ラオスに来て、お金を使わなくても楽しく生活できることに気づきました。地方の農村地域などでは、人々が農作業を終えて昼の三時くらいからお酒を飲みはじめたり、みんなで集まって楽しそうに会話しながら食事したりするなど無理のない生活、自分たちが好きなことをしている生活風景をよく目にします。ラオスの人は幸せに暮らしていることを実感します。
また、時間にルーズになりました。よく笑いおしゃべりが大好きなラオス人のペースに合わせるというか。日本にいたころはきっちりできなくてイライラすることがありましたが、今は「ラオスだから」という感覚をもつようになりました。自分に心のゆとりができたのかなと感じています。
ただ、アイ・シー・ネット経由で日本からスタディツアーなどのプロジェクトが来る際は、マイペースにならないよう気を引き締めて対応しています。

―ラオスで苦労したことはありますか? レストラン業で苦い経験をしています。社長である自分自身が料理を作れないために、従業員であるシェフに大きく依存してしまうんです。シェフが変わるたびにサービスのクオリティが落ちてしまいました。「自分ができないことはやるべきじゃない」という教訓を得て、自分も常に現場にいられるようにすることが大切だと学びました。

―会社を始めて得た気づきはありますか? 大学で開発について学んでいたので、将来、自分は開発事業に進むのだろうと思っており、会社経営について考えたことなどありませんでした。けれども今は、実は自分は開発よりもビジネスが好きなんだということに気づきました。始めたらそれを大きくしたいと思う性格なんでしょうね。
ビジネスをスタートした当初はラオスの法律についても会社経営についても知りませんでしたが、やればやるほど味が出てくると感じています。

Challenge:まずやってみる

―会社経営や仕事で大切にしていることはありますか? 大きな軸が二つあります。一つは「まずやってみよう」という精神。最初にできるかできないかを考える人が多いかもしれませんが、私は「チャンスがあるならまずやってみよう!」と思います。たとえうまくいかなくても会社がつぶれるわけではないので、判断と行動の速さが肝心だと考えています。
二つ目は「現場を意識する」こと。サービス業にとって最も大事なお客様の声やニーズは現場から離れるとわからなくなってしまうため、現場にいることをいつも大切にしています。
ラオスという国が、やろうと思えばほとんどなんでも最初にできる国です。その自由さが、私がラオスでビジネスをする楽しさにつながっています。



―新事業について教えてください。 2020年から学研教室をラオスで広めていく事業を進めています。
ラオスでは大人でも足し算の暗算ができる人はほとんどおらず、高校生でも小学校レベルの算数の問題ができなかったりします。算数・数学分野に大きな課題をもつラオスにおいて、算数教育を事業の中心にかかげる学研教室を展開しラオスの社会的発展に貢献できると考えました。加えて日本や海外から大きな学習塾が入ってきていないため、今後は大きなビジネスに成長すると判断しました。
スタートするにあたり、教育省や教育局などへ説明に行きました。ラオスの算数の教科書は日本の支援により日本の教科書の内容を反映しています。学研教室で使うテキストも日本の内容に沿っていると関係省庁にかけあったところ、とても歓迎されました。
現在は20名の子どもが算数を学んでいます。保護者からは「算数の能力が伸びた」という声だけでなく、「集中力がついた」「時計が読めるようになった」「指を使わず計算できるようになった」といった評価をいただいています。加えて「自分から宿題をやるようになった」「自分で考える姿勢ができてきた」など算数学習を通じて生きる力が育まれてきていると感じます。

Think:グローバルに働くために必要な「考える力」

―グローバルに働くときの心得はありますか? 異なる文化をもつ人々と働くときに、自分の強みが見えてきます。私は、日本で教育を受けて日本で育ったからこそ海外の人にはない資源やネットワークがあるという強みを認識してやってきました。
さらに、できるだけその国やその場所に即した戦略を立てていくことも意識しています。ラオス人にいろいろと売ってみたら、特にわかめが売れる。なぜわかめが売れるのか? 海がなくヨウ素を摂取するのが難しいラオスの人々にとって、海藻やシーフードは格別おいしく感じられるのではないか? というように、その土地の文化や慣習などの特徴をしっかりととらえ、考えてビジネスを進めていくことが大事です。

―海外で起業したい人に向けて一言 「考える力」は、自分にとって未知の環境で何かを始めるときに重要になると思います。海外など新しい環境で働くと自分の経験や知識を超えることが多く発生するため、しっかりと自分なりの仮説をもって考える力が欠かせません。
グローバルにかぎらず、自分がやりたいと思ったことをできるのは最高です。責任は大きく支援してくださる方々の意向も考えなければなりませんが、私自身は本当に自由にやらせてもらっています。経営者になってよかったと思っています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加