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INTERVIEW 1

海外で起業したい人を支援して、世界中に変化を起こしていきたい

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プロフィール
百田 顕児
株式会社 学研ホールディングス 執行役員 グローバル戦略担当
アイ・シー・ネット株式会社 代表取締役社長

早稲田大学法学部卒業後、研究機関・シンクタンクでODA事業に従事。2004年4月にアイ・シー・ネット株式会社へ入社。2014年に同社コンサルティング事業本部ODA事業部部長、2018年に副社長へ就任、2019年から現職。
Chance:家庭で培った異文化への対応力


―現在の仕事に携わるきっかけを教えてください。 私の家庭は、海外の方をホームステイによく招くような環境だったこともあり、私自身ももともと英語やアメリカの文化が好きでした。子どものころから、英語は勉強というより趣味のような感覚で身につけており、自分の英語力を活かせるシンクタンクの仕事をするようになりました。その後さまざまな国の調査経験を積むうちに、実際に開発途上国の人たちがいる現場で自分も仕事をしてみたいと思い、アイ・シー・ネットに加わりました。

―アイ・シー・ネットのような新興国・途上国に携わる方々は、どんなメンバーが多いですか? 弊社社員の9割は、子どものころに見た発展途上国の飢餓状況が心に深く刻まれていて、海外の開発事業に携わりたいと決意したようなメンバーばかりです。新興国・途上国の開発を担うこの業界では、留学や修士課程を修了している方が多いのですが、私はそのような経験がないので、この業界の中では珍しい存在でもあります。子どものころから異文化交流に馴染んでいたこともあり、初めて海外出張へ行ったときも、海外で仕事をすることに対してまったく違和感がなかったので、異文化への適応力は高いと思っています。

Philosophy:原点や理念を忘れない

―仕事をする上で大切にしていることは何ですか? 私たちが価値を届けたいと思う相手は、貧困格差のある農村の方から都市部の中流家庭、企業家までさまざまです。一方で、ビジネスとして直接関わるステークホルダーには、省庁や大使館など公を担う方もいます。そこで生じる種々の調整や流儀に適応しすぎてしまうと、自分が本来誰にどんな価値を届けたいと思っていたのか、目指すべき方向を忘れがちになります。その意味でも、「私たちは誰のニーズに応えているのか、その原点を忘れない」というのが、ひとつ目に大切にしていることです。

次はひとつ目の内容と少し矛盾しますが、原点や理念を大切にしながらも、私たちは現実の世界に何らかの変化をもたらす存在であるべきだと思っています。理想を語るだけでは意味がない仕事なので、理想が100パーセント実現できないときに、50パーセントでも60パーセントでも、変化を起こすことができる行動力が必要になります。理想と現実のバランスをとるために、この矛盾したふたつのマインドを必ず自分の中で持っておくことが、私たちのような理念型の仕事の場合には重要だと思っています。

Spread:海外現地での成功プロジェクト

―ご自身が手がけたプロジェクトで印象深かったことは何ですか? 私自身が長く携わっていたのは、バングラデシュの仕事です。道路や橋をつくるインフラ整備は日本がずっと得意にしていることですが、現地のコミュニティや地方自治体による意思決定を仕組み化し、そこに多様な意見が反映される機運を醸成することで、より現地のニーズに即した仕組みを作り上げました。いわばソフトパワーをハードの質を高めるために投入する取り組みは日本と現地の両サイドから、とても高い評判を得ました。この仕事をきっかけに、仕組みづくりと技術移転を組み合わせたプロジェクトを別の分野にも広げることになり、一気にバングラデシュの事業を拡大することができました。私たちが持っているコアな専門性や技術を活用して、現地で事業を成長させることができた感慨深い体験になりました。

―バングラデシュ拠点は、現在どんな展開をしていますか? 現在の拠点規模は約10名で、ほとんどが現地のメンバーです。インフラ事業が2件、技術協力プロジェクト「JICA」(独立行政法人国際協力機構)の事業を4件ほど担っています。汚職対策の仕事やバングラデシュ警察の能力強化を図る仕事、食品衛生の検査など、手がける分野は幅広いです。現地メンバーだけで完結できる業務ではないので、民間企業とパートナーを組み、現地政府の仕組みの中で一緒に形にしていくパターンも多いです。

Change:自分から世の中を変化させていく

―今回、海外現地で起業したい方を募集していますが、どのような人を求めていますか? 私たちは、弊社の理念とミッションが共通している人たちを世界中に増やしていきたいので、必ずしも弊社の社内にメンバーを増やす必要はないと思っています。自分の心に火がついたことに向き合い、現実の世界で変化を起こそうと行動している方々は非常に尊い存在なので、とても尊重していきたいと思っています。「自分がやる」という強い意志と、それを形にする努力を惜しまないような方を支援していきたいです。弊社の高野もスリランカ拠点の展開を進めていますが、会社としても後押ししていきたいです。

―2019年9月に学研ホールディングスへ加入されましたが、海外法人事業にはどんな影響がありますか? 学研グループの加入後は、弊社が中心となって、学研のグローバル事業を推進していく大きな役割を担っています。学研の資産をグローバルに結びつけることによって、新しく起業される事業の可能性も、さらに大きくなります。2020年11月には、ラオスで学研教室の第1号がオープンしましたが、もともと現地に拠点があったため、事業を遠隔からも進めることができました。

―海外で起業するにあたり、大切な視点は何ですか? 私たちは自分たちの仕事を「開発プロデューサー」という言葉で定義しています。一口に海外、特に開発途上国といっても、大半の国は過去20年以上高い経済成長を続けているわけで、特に東南アジアやラテンアメリカの地域では、すでに中進国になっている国々も増えています。これらの国々の社会ニーズも多様化し、純粋に民間ベースの「お客様」として価値を提供すべき相手の方がむしろ多くなっているといえます。

過去20年、世界で成長していないのはいわば日本くらいのもので、その常識の中でやるべきことを考えては正しい大局観を持つことができません。現在進行形のグローバル社会の中で日本の立ち位置を理解し、どういうアプローチなら、急速に変化するニーズに応えられるのか、そこに自分がどういう意義を見出すのかを考える必要があると思います。そのためにも鳥の目と蟻の目の両方の視点が必要で、現場に張り付いてニーズをつかむ地道な努力と、そのニーズを内外のマクロなトレンドを踏まえ、最適なソリューションを提案できる引き出しを持つこと、そのために俯瞰的な視点で見る経験を積むことも必要です。これは自分たちだけでは完結できない取り組みなので、常に内外のさまざまな関係者とつながり、そのリソースをいかに結びつけるか、文字通り「プロデューサー」的な仕事を担うことが、今後重要な仕事になると思っています。

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