Global Career Guide

キービジュアル キービジュアル

初心忘るべからず

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、初心忘るべからず。

4月を迎え、新卒社員が入社した企業も多いでしょう。テレワークをしていると、あまり実感は無いかもしれませんが、社会人人生をこれから始める方々です。

オリエンテーションを受け、経験を積んでいくフレッシュな彼/彼女たちが持っているもので、もしかしたら私たちが忘れてしまったかもしれないものは何でしょうか?

それは謙虚な心と好奇心、そして学ぼうとする姿勢です。大学生が社会人になったばかりなので、右も左もわからないのです。傲慢にしていては周囲の人に物を教えてもらえないので、当然謙虚になります。あれもこれもわからないことだらけで、「これってなんだろう」「どうしてこういう仕組みなんだろうか」と、好奇心も旺盛です。そして、何より学ぼうという高い意欲を持っています。特に外資の場合、早く自立してほしいと言うプレッシャーが会社からかかるので、とにかく頑張らなければと思えます。

上記の事は、中途で転職する場合にも当然当てはまります。近くにあるお気に入りのカフェに、新しいバリスタが入社しました。異業種からの転職で飲食業界の事は全くありません。客席から見ていても、あたふたしたしているのがわかります。今までと勝手が違うし、わからないことがありすぎて、少しパニくっているようにも見えます。

もともと人に好かれるタイプなので、同僚のベテランバリスタたちに気に入られて、意地悪されることなく、手取り足取りに近い状態で教えてもらっています。何か起きるたびに「すみません。!」「「ありがとうございます」と先輩たちに爽やかに伝えられているのが印象的です。きっと人より早く一人前になれるとお見受けします。

ここまでは、フレッシュな人材が頑張っている良い例です。

最後の例は、問題提起です。以前お仕事をご一緒させていただいた外資の方は優秀でしたが、変化できない点が残念でした。性格的な理由もあるかもしれませんが、同じ担当を長くやりすぎていることが最大の原因のようでした。

外資なので、皆さん「想定外対応力」・「柔軟性」はある程度持っていて当然なのですが、似た仕事を長くされているので「Aという仕事はこのようにやる」「Bという仕事はこのパターン」とフレームワークが固まっていて、崩すことができなかったのです。改善したり、新しいやり方を試してみたりという小さなチェレンジ精神を失っていました。本人に自覚がない時、周囲がわかってもらうよう仕向けるのは至難の業です。

打ち合わせでいつも部下の方が同席されていたのですが、かなり上から目線の物言いで部下の育成にもあまり良くない影響を与えそうと心配でした。長い経験に裏打ちされた自信があることは素晴らしいですが、「自分にも、まだ足りないところはあるかもしれない」「他の人から学ぼう」という気持ちを失うと成長が止まるケースです。

ある職場・職種に慣れてしまうと、自分では手を抜いているつもりはなくても、惰性で仕事を回している事はあり得ます。プロセスの改善に興味をなくしているかもしれません。とりあえず目の前にある手順で仕事が回っているから、わざわざ変更しなくてもいいと思うようになるのです。

残念ながらこういう状態が長く続くと、経験値の積み上がり方が遅くなるだけでなく、謙虚な姿勢で好奇心を持ち、一生懸命学ぼうとしている後進に追い抜かれてしまう可能性があります。企業において替えがきかない人材は存在しないので、スキルや経験値だけがあれば良いと誤解しないで、「常に進化しようとしている」「周囲にある程度の心配りができる」人材を目指して欲しいです。

「初心忘るべからず」はなかなか含蓄のある言葉ですね。経験豊富な人材だからこそ謙虚に、他の人から学んだり新しいことに挑戦できる人材でありたいです。誰にも見られていないと思っていても、実は誰かが自分の仕事ぶりにちゃんと気がついていることを忘れないで欲しいです。

日本的には新しい会計年度がスタートしました。新卒時代や転職したてのことを思い出してみてください。現在のご自分とネガティブな意味で大きな乖離があるようでしたら、そこが改善点です。今年度も頑張っていきましょう。

X(旧Twitter)

Xでも毎日発信しています。 ID: @Mikako_Suzuki  良かったらフォローしてください。

鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

  • RECRUIT AGENT

カテゴリー一覧