Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、授業料が無料のUniversity of the Peopleについてです。
最近まで存在を知らなかったのですが、この素晴らしい学びの機会についてもっと知りたいと、MBAコースに在籍中の3人にヒヤリングさせていただきました。
海外の大学・大学院で勉強したいと思っても、ライフステージによっては家族の事情で海外に行けない事もあります。また、昨今の物価高騰と円安のダブルパンチを受けて、留学の金銭的負担が増えているのも事実です。
そんな中、救世主の一つが本日ご紹介するUoPeopleと略されることが多い、University of the Peopleです。2009年に起業家Shai Reshef氏によって設立されたUoPeopleは、アメリカで公式に承認されている初めてのオンライン大学です。Non-profitの組織で、校舎を持たず講師陣が無償で指導にあたってくれているため、授業料そのものは無料です。教科書や教材費も無料で、そのほかにUoPeopleの学生特典として、各種学割の適用や優良論文サイトの無償利用などもあります。
誤解を避けるためにお伝えすると、全く費用がかからないわけではありません。わずかな入学金とコース終了後の「評価」に対するコストはかかります。
・大学4年間で4,860ドル (1ドル=¥140換算で、約¥680,400)
・大学院は2年間で3,660ドルから3,960ドル(同じ前提で¥512,400〜¥554,400)
幅があるのは専攻によって費用が異なるからで、留学したら学費の上に生活費がかかることを考えると、遥かに低コストで日本に住みながら学位が取得できます。
実例として今日のコラムでは、MBAの授業にについて説明します。
授業はいくつかのパートに分かれています。
Discussion Forum:インストラクターから出されるお題への回答を投稿し、学生間でコメントし合いながら評価します。自分自身が投稿するまでは、他の人の状況がわからないようになっているので、クラスメートの投稿した内容を参考にはできないようになっています。
Written Assignment:匿名で作成し提出します。提出の次の週に3人の学生に配布され、その学生達から評価(peer assessment)してもらいます。公平性を期すために、誰の課題を誰が評価しているのかはわからない仕組みです。
Portfolio Activity:その週の振り返りのような出題が多いですが、追加で出題される場合もあります。実名で提出し、インストラクターの評価を受けます。
Group Activity:4人から6人のグループに分かれて、数週間、時にはそれ以上かけて課題作業を行います。Group Activity専用のWifiはありますが、WhatsAppやSlackを使用してメンバー間でやりとりします。このActivityには、文化の影響が色濃く出て、対面でやりとりがなくても十分異文化体験できます。
個人差はあるとは言うものの、特定の国からの参加者が複数いると国民性があることに気づかされます。アフリカ大陸からの参加者が停電の影響を頻繁に受けていることを知ったり、ミャンマーやウクライナなど緊迫した状況の国からも参加できている人がいて、メディアの報道は一部を切り取っているだけだと理解できたりします。
課題に関してリーダーシップを取って進めようとはしないのに、口だけは出すメンバーをどう巻き込むか、異文化の元での効率的な仕事の進め方やリーダーシップの取り方を、日本にいながらにして体験し、学ぶことができるのは素晴らしいです。
日本時間で仕事をしながら、英語での勉学を両立させるには、タイムマネジメントが鍵になるようで、このスキルも、卒業後のキャリアに大きく活かせそうです。ヒアリングさせていただいたメンバーは、会社員なら通勤時間やランチタイムのご飯を食べた後など、すきま時間を有効に活用し、育休中であれば寝かしつけタイムでテキストを読んだりとそれぞれに工夫されています。
MBAの1コースは8週間で、公式ページの情報では目安の所要時間は15時間とのことですが、英語ネイティブでない場合は倍の30時間くらい必要だそうです。土日がつぶれがちでも、皆さんのコミットメント・レベルが高く「やり切る」との強い意志を感じました。
アメリカで公式に承認されている大学・大学院で、学位を低コストで取得できる魅力は非常に大きいです。通学スタイルになると物理的な制約が生まれますが、オンラインだからこそマイペースで時間をやりくりすれば、日本に住みながら学位が取れます。広く存在を知って欲しい素晴らしい学びのシステムです。
最後に卒業後、外資や海外で働きたい場合は、外国人と仕事をすることになった時に必要な英語で「ロジカルに短く」話す力を、大学以外で訓練しておいた方が良いように感じることを付け加えておきます。話している最中なのに途中で遮られたり、話が長めだと露骨に興味を失われたりする場面に、「読み書き主体の」オンラインでは遭遇できないからです。
留学したいけれど、家族の事情や金銭的な負担を考えて躊躇しそうな時、ぜひUoPeopleを思い出してチャレンジしてください。世界中から集まる学生さんとネットで繋がって学ぶ、異文化体験と低コストで学位が取得できる貴重な選択肢です。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。