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『Would like to speak with you…』
先日、私の会社のメールボックスにこんなタイトルのメールがきました。
「うーーぬぅぅぅ……」実はこの手のメールが一番困るのです。何が困るかというと「メールを開けるかどうか ?」ということ。文面からすると「あなたと話したい」と言っているわけですから、何となくヘッドハンターからのものであることはわかります。しかし私は以前、この手のウィルスメールを何も考えずに開けてひどい目に遭ったことがあるのです。
私は自分の PC に入っているウィルス監視ソフトの発売元の HP にアクセスしてソフトを最新の状態に更新してからメールを開けることにしました(勤務時間中に何やっとんじゃ ! という感じですが)。
えーーい ! 思い切ってメールを開けてみると、以下の文面。
『はじめまして。
お忙しいなか、突然メールにてのご連絡申し訳ございません。私はコンサルティング業界のリクルーターです。実は、貴殿のお名前を私の持つ人脈より得る事が出来ました………うんぬん、かんぬん』
メールを送ってきたのは Bill という外国人の名前でしたが、内容はベタベタの日本語。以前にこのコラムにも書きました(第 52 回「ヘッドハンターに会おう !」参照)が、どうしてヘッドハンターからの連絡は必要以上に、かつ無意味に手がこんでいるのでしょうかね ?
「ま、ちょっと興味もあるし、連絡してみるか………」私は以下のように書いて、返信しました。
『私の携帯番号は、090-XXXX-XXXX です。
このメールはだれも監視していませんし、私もだれにも言いませんので、メールでご連絡いただいて結構ですよ。タカシ』
すると、ものの 5 分もたたないうちに Bill から電話がかかってきました。
Bill 「あ、タカシさんですか ? 私は Bill です」
私 「どーもどーも」
Bill 「今回の話は秘密ですね。守ってください」
Bill は非常に上手な日本語を話してくれたのですが、せっかくなら英語で詳しく聞いたほうがいいように思いました。
私 ”OK, Bill ! You can speak in English.”
Bill “Oh, Great ! Pera Pera Pera Pera Pera Pera Pera Pera Pera……”
…… Bill の英語の速いのなんの……全く聞き取れません。自分で英語を話そうと言ったにもかかわらず、恥ずかしいったら、ありゃしない……
私 ”Ahhhh, Anyway, I will send my CV to you, OK ? (CV= 履歴書 送るから、それでいいかな ?)”
Bill が何を言っているのかほとんどわからないので、とりあえず履歴書でも送っておけば Bill の気も済むでしょう。なんか、これじゃどっちが「客」かわかりませんが……
Bill “Great ! When ?”(せっかちなやつだな………)
私 ”In a few days, because I have to update my CV. (ちょっと書き換えるから、2-3 日ぐらいかな)”
あ、そう言えば、私に興味を持ってくれているであろう、その会社の名前を聞いていませんでした。
私 ”Bill, I’d like to confirm, again. Your client name is … (Bill、確認したいんだけど、その会社の名前って……)”
Bill 「XX consulting !」
……げげっ ! まるっきり同業の「XX コンサルティング」でした。うちの会社と XX コンサルティングは、世間的にはライバルと言われているのですが、お互いには、「うちの方が 2 ランクぐらい上」と思っています。うちの社員はほぼ全員、日系企業に負けても仕方ないが、XX コンサルティングには死んでも負けたくない、と思っているほどです。
「XX さんも人材がいないのね………ま、お互いさまだけど」
でもこういう話をもらって、悪い気はしません。私はなんとなく気分よく、仕事を再開しました。その日の夕方、久しぶりに同僚のイチローに廊下ですれちがいました。
私 「お、イチロー久しぶりじゃん」
イチロー 「あ、タカシ。そうそう、あのさぁ、何か変なメール来たろ」
私 「(うぬぬ、こいつにも来たのか……ちょっとガックリ……) ああ、 Bill って名前のヘッドハンターだろ ?」
イチロー 「いやあれはね……バックにヒデキがいるぜ」
ヒデキというのも同僚で、われわれ 3 人はわりと仲良くしていました。
私 「なんで ?」
イチロー 「あれ、お前知らないの ? ヒデキ、先月うちの会社辞めて、XX コンサルティングに移ったんだよ。なんでも今、自分の「下」のスタッフを探してるらしいぜ。あいつの下でなんか死んでもイヤだよな……」
ヒデキの下で働くのは、私も死んでもイヤです。
私 「ふーんそうなんだ。でも、お前よくそんなこと知ってるな」
イチロー 「Bill ってのから電話かかってきて、そう言ってたよ」
…ガーーーーーーーーーーーーーーン。ヒデキの件もさることながら、イチローが Bill の英語を聞き取っていたことにもショック !
私は急いで Bill に連絡し、今回の件はなかったことにしてもらいました。ふー、あぶねー、あぶねー。
みなさんもヘッドハンターから連絡があったときは、その内容をきちんと確認しないと私のように情けない目に遭いますよー、と………トホホ、ホントに情けない……
1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。
みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。
書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ