Global Career Guide
みなさん、今回のコラムにて、とうとう連載 500 回になりました! パチパチパチ! 毎週毎週、トホホな話を我慢強く読んでいただきまして、心から感謝いたします。
連載 500 回というのは、期間にすると約 10 年にあたります。この 10 年の間に、結婚もしましたし、子供も生まれました。愛犬ゴルゴも、うちにやってきました(笑)。仕事面でいえば、転職も経験しています。そう考えると、本当に長い! そもそも、私がこの連載を引き受けたのは、私の上司のところに来た依頼をその上司が断ったために、仕方なく始めたことが発端になっています(『「編集」能力を磨け !』参照)。それがいまや、私のライフワークになっているのですから、人生の縁というのは、どこでどうつながっているのかわからないもんです。
加えて、私が個人的に評価(自画自賛ですが・・・)している点は、 10 年もの長きにわたって、 “継続” することができたこと。実は私、同じことを 10 年以上継続したことがないのです。元来、飽きっぽい性格なものですから、日記など、三日坊主はおろか、書こうとしたことすらない。早朝ジョギングも、「さぁ、やるぞ!」と走り始めたのはいいのですが、目的地にたどり着かずに、途中で歩いて帰ったことがあります。それも、初日に(!)ですよ。仕事だってそうです。最初に勤めた銀行は 6 年半、前職のコンサルも 6 年で辞めています。今の会社は 8 年目に突入していますが、このコラムの 10 年には及びません。そういう意味でも、私にとって、このコラムを継続していることは、画期的なことなのです。
こらえ性のない私が 10 年もの間、連載を継続できた理由は何か? それは、事実をありのままに自然体で書いていることではないかと思っています。私はこれでもコンサルタントの端くれですので、カッコいい話を書きたいと、常に考えて PC に向かいます。しかし、世に出回っているカッコいい系の話なんて、そうそう起こらない。 1 つの成功は、多数の失敗が積み重なった結果ですから、成功話ばかり書くというのは、そもそも無理。失敗を教訓として、いかに致命的な大失敗を避けるか、そして、いかにして成功を導くか、これが重要なのだと思います。
同じことは、企業経営にもいえるのではないでしょうか。長期にわたって成果を上げている企業というのは、常にヒット商品を出しているわけではない。ヒット商品など、それこそ 10 年に 1 回あるかないかというところでしょう。より重要なことは、いかに合格点を出し続けるか、ということです。失敗を極小化し、たとえギリギリの点数であったとしても、”合格” し続ける。そうすれば、企業であっても、個人であっても、必ず伸びていくのだと思います。
では、私こと、奈良タカシは、この 10 年の間に、仕事上で“ヒット作”をかっ飛ばしたことがあるのか ? あらためて考えてみると、本当に失敗ばかりで、胸を張って言えるような“ヒット作”はありません(T-T) トホホ・・・ しかし、成果という意味では、先日大きな変化がありました。
それは、「パートナー(役員)に昇進した」ということです。先週のコラムで、「連載500回をむかえるにあたり、みなさんにある“ご報告”をしたい・・・」と書いていたのですが、その報告がこれです。このコラムでも、パートナー候補になったことについてはお伝えしていた(『パートナーになろう!』参照)のですが、 7 月 1 日付で、無事昇進することができました! パートナーになることは、コンサルに転職して以来の 1 つの目標でしたから、それが達成できたことについては、ひとまず満足しています。会社の経営陣からは、「パートナーになったことだし、後世に残るような “ヒット作” を期待してるよ ! 」と、暗にプレッシャーをかけられているのですが・・・(T-T) ま、それはそれとして、引き続き、気を引き締めてやっていきたいと思っています。
実は、私がパートナーに昇進するにあたって、社内ではすったもんだがあったのですが、それについては次回のコラムでお話しする予定です。ここでは、チームメンバーから来た、あるメールのお話をしたいと思います。
パートナーへの昇進について、私が内示を受けたのは、公式発表の前日、6 月 30 日のことでした。上司の Thomas に呼び出され、「タカシ、パートナーになったよ。Congratulations! 明日、発表になるんで、よろしく ! 」 とだけ告げられました。
私 「さ、Thank you ! (おいおい、もっと感動的な言い方あるやろ!)」
Thomas 「ま、これからが大変なんだよ。すぐにわかると思うけど・・・ とにかく、頑張ってくれよ!」 (実は、Thomas の言っているのは本当でして、私はすぐに、この昇進の恐ろしさを知ることになります・・・)
翌日、社内の LAN にて、社長名で以下のアナウンスがなされました。
– New Executive Appointments –
I am very pleased to announce the newly appointed Executives. These appointments recognize the significant contributions each individual has made for our clients, our team and our business ・・・
【Partner】 Takashi Nara
アナウンスがされて 10 分ほど経過した後、同僚やチームメンバーから、お祝いのメールが届き始めました。どれも、非常にありがたい、心温まるものだったのですが、その中にこんなメールがあったのです。チームメンバーの A くんからのものです。
「タカシさん、パートナーへのご昇進おめでとうございます。タカシさんのパートナー昇進は、ある意味で大きなインパクトがあると思っています・・・」
ん? なんか期待させる書き出しだな、どれどれ・・・
「・・・それは、“だれでもパートナーになれる” ということを、社内に知らしめたということでしょう!」
なんじゃ、こりゃ! なめてんのか、コイツ! ・・・ と、当初はそう思いました。“だれでもなれる!”って、あんた・・・ しかし、メールを読み進めると、Aくんの本意は私を怒らせるようなものではないことに気付いたのです。
「・・・これまでのパートナーは、ほとんどが MBA ホルダーか、会社の歴史に残るような大規模案件を成し遂げた人がなっていました。しかし、タカシさんは、そのどちらでもない・・・」
読みようによっては、この段階でも、かなりカチンとくる内容ではあります。が、気を取り直して読み進めてみると・・・
「・・・われわれ社員の大半は、 MBA ホルダーでもなく、また大規模案件に関与できるかどうかもわかりません。つまり、この時点で、“パートナー候補ではない”ということを意味します・・・」
「・・・しかし、タカシさんは “普通の人” です。そのタカシさんがパートナーになったということは、われわれスタッフにとって、大きなモチベーションと勇気を与えてくれます・・・」
A くんは、私のチームの中でも、歯に衣着せぬ発言で有名なスタッフです。使いにくい人材ではあるのですが、一方で、非常に優秀で、私は全幅の信頼を置いています。その A くんが、このようなメールをくれたことについて、私は非常に感激しました。
事実、わが社のパートナーの過半は MBA ホルダーで、 MBA ホルダーでない人は、大規模案件の PM を経験しています。この事実は、客観的な基準という意味では非常にわかりやすい。しかし、 MBA ホルダーの全員がコンサルとして優秀かというと、そうは言い切れない面もある。また、大規模案件に関与できるかというのは、本人の実力という面もある一方、運にも左右される。となると、 MBA ホルダーでもなく、案件の運にも恵まれない人は、自動的にパートナー候補の俎上に上がらないということを意味します。実際に、そういう人材が埋もれているという状況もある。A くんに言わせれば、私がパートナーに昇進したということは、この状況に風穴を開ける、画期的なものだというのです。
普通の人がパートナーになった・・・ これは、私にとっては最大級の賛辞です。冒頭にも書いたように、私は普通の人として、コラムの連載を 500 回継続してきました。そして、普通の人として、役員に昇進することができたのです。学歴でもなく、運でもなく、地力というか、継続力というか、そういう部分での評価がありえるということです。いやぁ、これは本当にうれしい。必ずしも派手ではない、私の取り組みを、ちゃんと見てくれている人がいるということなのですから。
では、経営陣は、どのような思惑で私をパートナーにしたのか? それは、 A くんのメールを見事に裏付けるものでした。これについては、次回お話したいと思います。
(次回続く)
1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。
みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。
書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ