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(前回の続き)各種メディアへの対処方法を学ぶ「メディア・スポークスパーソン トレーニング」に参加しているタカシ。新しいサービスを記者発表する際など、インタビューを受ける場合には、記者さんとうまく関係構築をする必要があるわけですが・・・、そのコツとは、一体何なのでしょうか?
最近、DevOpsという概念が流行っています。これは “デブオプス” と読みまして、Development(開発)とOperations(運用)の合成語です。ITの現場において、開発=アプリを作る作業と運用=アプリを日々メンテする作業をうまく両立し、効率性・正確性を高めていくための手法や仕組みのことを指します。実は先日、わが社でもDevOpsに関して、新たなコンサルティング・サービスを発表したのです。
私もプレゼンターの一人として、記者発表の場に立ち会ったのですが、プレゼン後の記者インタビューにおいて、以下のようなやりとりがあったのです。
プレゼンター「・・・というわけで、今回、わが社が発表する新しい DevOps コンサルティング・サービスは、開発担当者と運用担当者のコミュニケーションを切れ目なく実現するためのツールを、各種取り揃えています。では、ご質問等、ございますか?」
記者 「よろしいですかね?! 今回発表された新しいサービスでは、ITに携わる関係者のコミュニケーションに重点が置かれているとのことですが・・・」
プレゼンター 「そう、その通りです!」
記者 「ITの現場って、そんなにコミュニケーションが取れていないもんなんですか?」
プレゼンター 「いや・・・、そもそも、伝えるべきことが多すぎるんですね、ITの現場というのは・・・。口頭で伝えてしまうと、コミュニケーション・ミスの温床になるし、かといって、全てペーパーベースで文書化していては手間と時間がかかってしまう。そこで、関係者同士、オンラインのチャットで意思疎通することで、会話内容をエビデンスとして残し・・・」
記者 「ふーーん、そういう意思疎通の不徹底が、ITトラブルを生むわけですねぇ・・・。やっぱ、日本のIT現場は、欧米に比べると遅れていて、だから、ITのトラブルが起きやすいんですかね? ね??」
プレゼンター 「・・・」
以上のようなやりとり・・・、実は、非常にありがちなパターンなんですよねぇ・・・。さて、何が問題なのでしょうか?
上記の会話が成り立っていない/噛み合っていない最大の理由は、プレゼンターと記者のゴール=目的が一致していないことにあります。
【各プレイヤー(参加者)のゴール=目的】
どっちが折れるべきか? というと、これはプレゼンター側なんです、多分・・・。記者さんというのは、特定企業の新サービスを宣伝することを目的に集まっているわけではない。そのサービスが、現状の社会課題を、いかにして解決するか、を広く報道するために集まっているのです。だから、ここは発表するプレゼンター側が、記者さんの意向に歩み寄った方がいい。
この解釈には、ちょっと違和感があるかもしれません。しかし、ここで突っ張っても仕方ないではないですか。記者さんに、いい記事を書いてもらうために、記者さんのゴール=目的を満たせるように協力する、これが、
インタビューする記者さんと “Win-Winの関係” を築くこと
ということに、他なりません。
つまり、こんな感じでしょうか。日本のIT現場のコミュニケーションは、お世辞にもいいとは言えません。だから、DevOps なんてのが流行っているわけで、今回のサービスがその一部を解決することを明確に言う。欧米との比較については、定量的・科学的にその差異を提示できないため、明言を避けるのが望ましい。具体的には・・・
記者 「ITの現場って、そんなにコミュニケーションが取れていないもんなんですか?」
プレゼンター 「おっしゃる通り、ITの現場は、そこに関与する関係者も多く、また、状況が時々刻々と変化する要素が強く、コミュニケーションが不足する可能性を秘めています。今回のサービスは、それを可視化することに重点を置いて、現状の課題解決の助けとなるソリューションです」
記者 「やっぱ、日本のIT現場は、欧米に比べると遅れていて、だから、ITのトラブルが起きやすいんですかね?」
プレゼンター 「日本が遅れていて、欧米が進んでいる・・・ というものではありません。ただし、DevOpsの概念は、欧米から発展してきましたから、先行して着手されているのは確かでしょう・・・」
・・・こんな感じで応対すれば、Win-Win になると思います。
「インタビューする記者さんと “Win-Winの関係” を築く」というのは、お互いのゴール=目的を満たすことに加え、インタビューそのものを円滑に、気持ちよく進めることも指しています。実際のトレーニングでは、記者さんとのやり取りをモニターで見ながら、講師と別の参加者が別室で議論するという講義が設定されました。
トレーニングなんだから、ぜいたく言っちゃいかんわけですが・・・、これ、めっちゃ恥ずかしい! 記者さんとのやりとりをモニターで映されているだけでも相当はずかしいのに、それを、別室であーだ!こーだ!! と評価されているわけで・・・、いやぁ、こういうのを日常茶飯事としてやっている、マスコミや著名人の人って、やっぱ、すごいですよねぇ・・・
超はずかしい演習を終えて、クラスルームに戻った私。
私 「ど、どうでした?(汗っ!)」
講師 「よかったです、特に〇〇が素晴らしかった」
他の参加者 「確かに・・・、タカシさんって、〇〇がうまいですよねぇ。普通、コンサル業界にいる人って、私も含めてですが、〇〇が不得意なんですよねぇ・・・」
講師 「〇〇は、記者とのコミュニケーションにおいて、非常に重要なテクニックなんですよ・・・」
さて、〇〇とは何か? 私自身、全然意識していなかったことで褒められたもんですから、ちょっと戸惑っているんですけど・・・。次回は、“〇〇の重要性” についてお話ししたいと思います。〇〇では、何の話か、全くわかりませんが・・・。ではまた来週!
(次回に続く)
1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。
みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。
書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ