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面接に受からなくてラッキーなこともある

元・外資系人事部長、10,000人を面接した鈴木美加子です。面接で落ちるとガッカリするのは人として当然かもしれませんが、最終的には自分に合う一社とだけご縁があれば良いのです。全ての会社とご縁ある必要は無いことを、私の実体験を元にお伝えしたいと思います。肝心なのは、「次行こう、次」のマインドです。

先週は、応募先企業から連絡が無くても、折れない強い心と題して、転職活動中に心のエネルギーを浪費しない方が良いという記事を書かせていただきました。そうは言っても、面接で落ちたら凹むのが人間なので、本日は、面接で落ちてなんとラッキーだったことかと、しみじみ思った私の体験をシェアさせていただきます。

ある時、人事本部長のポジションでY製薬会社の面接を受けました。仕事が面白そうで、自宅から近く車通勤を続けられて、なんとも和モダンなオフィスが気に入り(笑)、この会社に入りたいと強く思いました。面接後、「ご経歴・お人柄は良いのですが、転職が多すぎる」ことが理由で、通らなかった時は自分でも呆れるくらいにガッカリしてしまいました。それでもなんとか気持ちを立て直して転職活動を続け、半年後には違う企業の人事の責任者として転職しました。

それからわずか3ヶ月後、つまりはY製薬の面接を受けてから9ヶ月後、日経新聞の一面に「Y製薬買収」の文字が躍りました。買収「したのか」「されたのか」を知りたくて、夢中で先を読みました。答えは、「買収された」でした。「買収された」企業のマネジメント層が仕事を失わずに済むのは、先方の同じポジションの方、例えば私であれば人事本部長の方が、何らかの形でひどく評価されていないという、稀なケースしかないとほぼ相場は決まっています。
 

あのまま晴れてY製薬に転職できていたら、私は転職したばかりの会社で社員に転籍していただいたり、お辞めいただいたりすることに終始し、しかも本人も最後に職を失ったというシナリオになっていたことでしょう。多くのエネルギーを使って転職した末に、他の方を傷つけ自分も傷ついてまた転職活動をしなければならなかったわけで、想像しただけでもぞっとします。


「神様、ありがとうございました。面接に受からなかったことを感謝します」
私の正直な感想です。物事の良し悪しは時が経ってみないとわからないことを、この時に実感し学びました。


そして肝心なことを思い出したのです。面接の時、良いところばかりの会社に思えて舞い上がりましたが、一つだけ気になったことがあったのです。それは、人事本部長の候補者を、最初に面接するのが、なぜ経理本部長なんだろうかということでした。普通は、海外にいるそのポジションのレポート先である人事のメンバー、例えばアジア・パシフィックの人事のトップや本社の人事になるはずなのに、なんだろうと違和感を覚えました。


面接の最中に「違和感」を感じたら、どんなに表面上、良い会社に見えてもそのまま放置したら大変です。必ず理由があるからです。その意味で面接の時に緊張しすぎて、答えることに精一杯で精神的にゆとりがなく、相手が見えない状態なのは非常に危険です。面接は、いわばお見合いです。選ぶのは採用する企業側だけでなく、候補者側でもあるので、どうかお相手を客観的によく見てください。

鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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