Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、転職先にスムーズに移行するコツです。
普段は、どのように「転職するか」についてのTipsが多いコラムですが、本日は無事に転職が決まった後、新しい会社に早く馴染むには、どうしたら良いかをテーマにします。
大事なポイントが6つあります。
皆さんは、前の会社ではある分野の専門家だったり、マネジメント・メンバーだったかもしれません。転職したことで今までとは違う仕事のやり方に遭遇するかもしれません。また、業界を変えた場合は、最初は勝手がわからず職場の皆さんに助けてもらわないと、効率良く仕事が出来ないはずです。
外資でアサーティブを良しとするとはいえ、転職直後は尊大に振る舞わず知ったかぶりをせず、頭を低めにして周囲の方々の話をよく聞くことが、後に成功する鍵になります。いかにも「私はデキる人材です」という態度の新しい社員を、助けてくれる奇特な人はそうはいません。最初こそ謙虚さが大切です。
私が人事として8回転職してつくづく感じたことは、「一括りに外資と呼ぶけれど、こんなに企業文化は違うのか」です。
友人が23年、アメリカのシリコンバレーでグローバル企業に勤めていました。ハワイに移住して転職したのですが、「世界一多様なのでは、と思える環境で折り合いをつけながら仕事をしてきたことが、今回の移行に大きく活かされている」と教えてくれました。
たくさんの文化と共存しながら仕事をする必要があったので、「文化」は変わりにくいものと理解しているし、既存の文化には敬意を払った方が良いと心得ているのです。
人は、慣れたコンフォートゾーンから出て新しい価値観・仕事のやり方・考え方に遭遇すると、どちらかと言うと感情的にはネガティブに触れる傾向にあります。自分が慣れていたモノが正しく、違和感ある新しいモノは間違っていると思いがちです。この個人的な好き嫌いがビジネスの場に出てくると、冷静に状況をとらえられなくなります。
みんな同じである必要はないと肝に銘じ、「違い」を楽しめるようになったらしめたものです。私のキャリアを振り返えると、シリコンバレーに本社があるIT企業に勤めていた時が、いろんな意味で最も多様な職場でした。初めての外資ではありませんでしたが、本当に多様で最初は面食らいました。でも、途中から文化の違いや衝突までも楽しむことにしたら気が楽になりました。
自分自身がイライラしないためには、周囲に対する期待値を下げるのが効果的です。周囲とは、上司・同僚・部下や会社の全てのインフラなどを指します
相手に対する期待値が高いと、ネガティブな気持ちが態度に現れ、相手にも伝わります。中途採用の人間が、新しい職場で嫌われ者になる事は避けたいです。
「無駄に戦わない、大事な戦いを選ぶ」と言う意味の英語です。転職して前職と違う仕事のやり方・価値観・インフラに、いちいち「本当はこうあるべきなんじゃないか」とアプローチをしていたら、前項の「4. 期待値を下げる」と同じく、扱いにくい社員になってしまいます。
ここだけは自分の考えや信念を曲げられないモノを1つか2つだけ持ち、あとは目くじらを立てないようにする方が無難です。自分の曲げられない信念に触れる件については、アサーティブにロジカルに討論することで芯のある人材とも見てもらえます。
最後になりますが、一番大事なのは、前職と現職を比較しないことです。2つの企業は異なって当然ですし、比較したところですぐ何かが変わるわけではありません。ストレスばかりを増やしても仕方ないので、自分がコントロールできないことについては手放すとカリカリしないで済みます。
以前、某大手日系企業から25年選手をお迎えした際、何かというと「前の会社は」が飛び出して周囲が大変だったことがあります。かなり上の役職者だったので周囲は公の場では黙っていましたが、「そんなに前の会社が好きなら、どうして転職したんだ」と陰口をたたかれていたことを思い出します。悪意はなかったとしても、この方がしてしまったNGは「比較する」です。比較をやめられず、半年後くらいに外資は合わないと自分から退職されました。
次に転職する時に、どうしたら新しい職場に溶け込みやすいか、周囲に助けてもらえるかをぜひ思い出してください。職種によっては業界が変わることもあると思いますが、最も企業文化が変わりやすいのは、業界を変える時であることも覚えていて下さい。「違い」を楽しめる域に達するまで、そんなに時間はかかりません。頑張りましょう。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。