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想定外に対応する力

元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本日のテーマは、外国人と働く際に重要な想定外対応力です。

ホフステードの6次元異文化モデルによると、日本人の石橋を叩いて渡りたい度合いは92です。100が最高点なので、ずいぶん慎重でリスクを取りたくない国民性ということになります。もちろん個人差はありますし、海外に住んだことがあるかどうかでも変わります。

オーストラリアに住んでいた時、電車が時間通りに来ないのは当然として、あと一駅で東京駅という時に「この電車の行き先は新宿になります」と言われたり、「今日はこの電車はここまでしか運行しないので、この先はバスで行ってください」とアナウンスがあったり唖然とすることが多々起きました。

家具つきアパートのベッドが古くて交換をお願いした時も、午前中に古いベッドを搬出して午後に新しいものを搬入して欲しいと、当たり前のリクエストを出したにも関わらず、逆になったのには呆れました。つまり新しいベッドが先に届いてしまい、狭い家の中にベッドが新旧2台ある状態になったのです。

一喜一憂していたら身がもたないので、だんだん鈍感になりますし、何が起きてもなんとかなるから大丈夫と思うしかありませんでした。同じようなことが仕事でも起きるのですから、想定外対応力は必須です。日本人同士で仕事をしている時のように、頼んだことがその通りに納期に間に合うように出てくることは、残念ながらあまりありません。ここで感情的になっても、自分に有利にはならないのでマインドセットを変える必要があります。


1. 時間のゆとりを確保する

ギリギリの予定でなんとか回ることは、まずないです。相手がのんびりでも間に合うように、計画は長めに見積もりましょう。

以前、アジア・パシフィックの仕事をしていた時、インドの担当者が月例レポートを締切までに出してくれなくて困ったことがあります。この時はメールのBCCを活用して、彼にだけ「本当の締切日−5営業日」をあたかも締切のようにして送っていました。時間のゆとりを確保することが目的です。

2. 交渉力は大事

外国人との仕事では、先方が非を認めないことも多々あります。契約書・メールなどをきちんと残すことは勿論、本来討論になるはずがない想定外も起こります。交渉せざるを得ない時には、アサーティブに自分の主張をしっかりすることが求められます。

相手は行間を読んだりしないので、大人しく主張しないでいると、どんどん追い込まれてしまいます。時には強く言う必要もあります。この時は。英語の流暢さよりロジックが通っているかどうかが大事ですし、精神論で語らないことも重要です。先方は人間関係よりタスク重視のことが多いからです。

3. そもそも期待しない

ホフステード異文化6次元モデルによると、日本人の男性性のスコアは95で世界No.1です。ここでいう男性性とは、「秀でることをよしとする」「大きく速いのが素晴らしい」「働くために生きる」「道を極める」傾向のことです。物作りにおいて世界No.1だった日本を作ったのはこの高い男性性なのですが、他国に同じことを求めるとストレスに悩まされがちです。

外資系企業で25年勤め、オーストラリアに2年住んだ私は、相手に期待しないことを覚えました。期待値が高いから、物事がうまく行かない時にがっかりするのです。日本人同士で仕事をしている時とは、スピードも精度も違うと最初から思っていれば落胆しないですみます。少し訓練と経験が必要ですが、期待しないマインドを養うことは必ずできるのでトライしてください。

4. 異文化体験を楽しむ

「違う」からこそ異文化で、世界に文化が一つしかなかったら衝突も無い代わりに、変化もなく単調になってしまいそうです。自分が生まれ育った文化背景と違う人たちと仕事をすることで、視野は広がり価値観も変わります。その変化を楽しめればしめたものです。

SNSをやっているグローバル仲間達は、「ネタができたと思うことにしている」と言っています。確かにその時には笑えないことも、振り返ると苦笑いの異文化話になるので、どこまでも楽しもうと思えると気が楽になります。


外国人と仕事をする時に必須の想定外対応力・柔軟なマインドについてお届けしました。自分と同じ価値観・仕事のやり方を相手に期待しないこと、こちらも折れることが大事です。外国人と仕事をするようになったら、多様性と協働することを楽しめるようになりたいものです。

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鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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