Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。皆さん、自分の強みを3つ上げてくださいと聞かれたら、言えるでしょうか?
この頃、キャリア相談をしていて気になることは、様々なことを高得点で出来ることをよしとし、ご自分の欠けているところに目が行ってしまう人が多いことです。これには日本の教育が大きな影響を与えているでしょう。一芸に秀でるより、まんべんなく出来る方が良いとする、例えば国立大学の方が私立大学より上のように考えている人が多いことの現れです。
実際はどうかというと、資質に偏りがある人の方がキャリアの方向性を決めるのは楽です。出来ることと苦手なことがはっきりしているので、苦手なことはどんどん消去できるからです。過去7年間の適性診断の結果を見ると、全方位にスコアが高い人は4人しかいません。
起業家ならラッキーです。PCなどIT機器のセットアップも、経理関連の事務作業も、営業活動も、人脈構築も全てお手のもの。複数の仕事をこなすことも可能です。知人は、海外留学紹介、ホテルのコンシェルジュ、そして翻訳の仕事を楽に掛け持ちできています。ところが日系企業にお勤めとなると、会社に資質を見抜かれ次から次へと関連のない部署に異動を命じられることになりがちです。「やらせてみればできるだろう」と思われるわけです。その洞察力は当たっているのですが、40歳近くになってどの分野の専門家でもない人材が出来てしまいます。専門性が高くないジェネラリストは労働市場での価値が低いので、ご本人にとっては望ましくないキャリアです。
友人達は役員もしくは本部長クラスに達していますが、見事なほど資質に偏りがあります。ですが大事なことは、自分が責任者になった部署で必要な資質は、かなり高いレベルで持っていることです。つまり自分の強みで仕事ができているラッキーな人達ということになります。その上、自分が苦手なエリアをなんとか改善しようという無駄な努力をしていません。
9社の外資人事で社員を見てきて、「弱み」は改善しようとしてもたかが知れているという結論に達しました。本人も直そうとは思っているけれど、なかなか直らないのが現実です。なぜなら、持って生まれていないからです。
例えば、後天的に訓練である程度改善できる資質には、論理的、親密、共感的が挙げられます。論理的思考は、トレーニングでかなり伸ばすことができると知られており、弁護士や検事になるのは無理でも、職場で「彼は論理的だ」と言われるくらいまでにはなれます。親密は笑顔でなんとかカバーし、共感的は「言葉かけ」を意識的に多くすることで実は全く共感していないことを隠すことができます。
後天的にあまり改善されない資質には、以下のようにかなり沢山のものが入ります。 データ重視、細かいことが得意、慎重、革新的、創造力豊か、インスピレーションで動く、 メンタルにタフ、競争心がある、概念的など。
例えば私は細かいことが苦手です。それで良いとは思っていないですし、起業家として不便なこともあります。直そうと努力したこ時期もありますが、残念ながら直らないです。持って生まれた性格に起因している資質を改善するのは、本当に大変です。
仕事に費やす時間は長いので、自分の強みを活かした職業につけたらこれ以上の幸せはありません。もちろん、強みだけで成り立つ職業は少ないので、自分が不得意なことも仕事の一部としてする必要はあります。そんな時はどうしたら良いでしょう? 自分を補ってくれる人を周りで探すのが早道です。細かいことが不得意な人が非常に重要なプレゼン資料を提出するには、その前の確認作業が大事です。同僚、部下、上司に誤字脱字を見逃さない人はいませんか?
いつも助けてもらうばかりでは、相手もたまらないと思うかも知れないので、こちらがその方を手伝ってあげられることはないかと、関係をWin-Winに保つ努力も大事です。私は会社員時代、大事な書類をチェックしてもらうことを欠かさないようにして、お返しにその方のビジネス英語力が少し足りないならヘルプを申し出たり、外部の情報を入手したいなら転職が多く人脈が広いことを活かしてお繋ぎするなどして、好意のバランスシートが偏らないようにしていました。
成功するためには、とにかく強みを活かすこと。不得意分野をストレッチしようとする前に、補ってくれる人を周囲で探すことが鍵です。自分の強みと弱みを1月の間に棚卸して、2023年を充実した年にしましょう。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。