Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。日本企業の違いがよくわからないまま転職して、あとで「自分には合わない」となってしまうことありますよね。どちらの組織が優れているわけではないけれど、全く異なる組織であることを理解してから転職活動に入った方が効率的です。違いの中で日々の仕事に大きく影響する項目を本日は紹介します。
1-1. 日本企業は長期的視野
儒教の教えが文化の根幹にある国は、長期的な視野で経営されます。長い目で見てマーケットシェアを取れることが重要で、目先の四半期の利益率を優先するようなことはしません。日本に100年以上続く老舗が多いのは「長く続く」ことを良しとするからです。日本企業は、社員の長期雇用や安定した成長を目指す傾向が強く、継続的な教育や研修を重視します。安定が期待できる一方、変革の時代に変化しにくいのがネックです。
1-2.外資系企業は短期的視野
短期的な視野は、迅速な成果や利益を重視する考え方です。外資系企業では、四半期ごとの業績や短期間での成果が求められることが多く、迅速な意思決定や行動が重視されます。IT企業のように競争が激しい業界では、中期計画が3年先というような短期スパンで経営されています。企業が長く続くことより競争に勝ち抜くことが優先されます。社員に求められるスピードとリンクするので、生まれながらのスピードがゆっくりめで外資に転職したい場合は、業界を選んだ方が無難です。
2-1.日本企業は団体主義
団体主義は、個人よりも集団の利益や目標を優先する考え方です。日本企業では、個人の成功よりもチームの成功が重要視され、草野球的に誰かがボールが落ちないようにカバーに入る仕事の仕方をします。必ずしも個々の役割が明確ではありません。合意形成の元に意思決定されるので、決定プロセスに時間がかかることもあります。比較すると「チームの空気を読むこと」が求められます。
2-2.外資系企業は個人主義
外資系企業では、社員一人ひとりの能力や成果が評価され、個々のパフォーマンスが重視されます。意見を述べることができる力、機会を自ら得ようと積極的に行動する姿勢が高く評価されます。意思決定は責任者が明確なので迅速です。会社イコール家族という考えは存在しないので、仕事とプライベートを分けたい人材に向いています。会社が社員を守るというコンセプトは存在しないので、社員自身が実力をつけることが重要です。
3-1.日系企業はジェネラリストを育てる
ジェネラリストとは、幅広い分野で知識やスキルを持つ人材のことを指します。日本企業では、社員がさまざまな部門や職務を経験し、総合的なスキルを身につけることをよしとします。日本企業は、様々な分野の仕事が少しづつ出来るオールラウンドの人材を輩出するのです。生涯、同じ組織に勤務できる場合は良いのですが、何かの理由で転職しないといけない場合ジェネラリストは苦戦します。いろんなことを少しづつできる人材より、一つの専門分野で深い知識と経験がある人材の方が社外では価値があるからです。
3-2.外資系企業はスペシャリストを育てる
スペシャリストは、特定の分野や職務において高い専門知識やスキルを持つ人材です。外資系企業では、特定の専門領域での高いパフォーマンスが評価されやすいです。 20代は良いですが、30代以降は専門分野を持つ人材でないとそもそも面接に進めないことが起こります。 早めに自分の専門を決めて、経験を積むのが外資系での昇進の早道です。
一つ圧倒的に日系企業が優れていることは、「最終決定権」です。大きなスケールの決断をするのは常に本社と決まっているので、日本に本社がある日本企業にいた方が裁量権について悩まないで済みます。ゼロから新しいアイディアを考えて商品開発したり、企業文化を変えたり、新しいイニシアティブをグローバルに導入するなどの仕事は、本社にいるからこそできる仕事です。外資系の日本法人勤務の場合は、日本に特化してどうローカライズするかがメインの仕事になりがちなので、職種によっては外資に移らない方が良いこともあります。
転職活動を始める前に、望んでいる企業文化を書き出して整理してみると、相性のミスマッチが発生しにくいです。転職活動中で、夏季休暇を控えている方はぜひ時間を割いて企業との相性について検証してください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。