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外国人と異なる価値観 – アウトプットの精度

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
以前、外国人と大きく感覚が違う価値観の例として、「時間感覚」についてお話ししましたが、今日は、アウトプットに対する期待値の違いを取り上げます。

みなさんは、「日本人は完璧主義、100点でないと気が済まない」という感覚はありますか? もし無い、もしくは弱いのであれば、今日の記事を参考にしてください。

昔、米系の油圧機械メーカーのアジアパシフィック本社に勤めていた時のことです。アメリカのオハイオ州にある工場からサンプルとして、部品が送られてきました。セールス部門と技術部門の社員が、「うーん」と唸っているのが聞こえたので、なになにどうしたのと覗きに行ったことがあります。目の前にある7個の同じはずの部品、素人の私が見ても一目で大きさが違うとわかります。精密部品ならともかく、こんな大きな部品をそれも手で作っているんではなく、機械生産なのにどうしてこんなことになるのか、日本人には理解できませんでした。

同じ会社に勤めていた時、インドに工場を立ち上げました。Six Sigmaという品質管理の手法のプロが採用されてインドに派遣されました。立ち上げ時の工場の内部は整然としていて見事でした。1ヶ月後、Six Sigma部隊がインドから送ってきた写真を見てアジアパシフィック本社は愕然とします。物が取り散らかって床がよく見えないし、いろんなものがぶっ積んであってごちゃごちゃしてることこの上ない感じです。たった1ヶ月で??

Six Sigma隊の隊長が吐いた一言は「ここからが根くらべだ」。インドと仕事をしたことがなかった私は意味がわからず聞いたところ、「あまりに直らないのでこちらの根が尽きて諦めるか、こちらが絶対に諦めないので向こうサイドの根が尽きて整然とした工場になるか、二つに一つだという意味だよ」だそうです。
それから、Six Sigma隊は、3週間に1回インドに出かけて、その度に整理整頓してもらってを8か月続けました。諦めなかった彼らが最終的には勝ち、インド工場に整理整頓は根づきました。

この会社の後に、米系製薬会社に勤務することになり、日本国内のそれはそれは整然とした工場を見学した時は卒倒しそうになりました。

オーストラリアに住んでいた時、ボランティアで折り鶴を折ったのですが、「どうも角が合わせにくいなぁ、この折り紙ほんとに正方形かしら」と計ってみました。なんと、30cm x 30cmとパッケージに書いてあるのに、実際には綺麗に30cm x 31cmなのです。折りにくいわけですが、さすがに呆れてしまいました。工場の製造機械からしてズレているということになりますものね。

日本に帰国して、ある企業様向けにテキストを作成した後、研修会社の方と目を皿のようにして誤字脱字を探した時は、そこまで完璧でないとダメなのかと驚いたというのが真実です。

お国変われば全てが変わるのです。日本の100点でないといけない減点主義で、海外と仕事をすると胃がいくつあっても足りないことになります。もしくは、どうしても完璧である必要がある場合は、相手に任せないで前出のSix Sigma隊のように、何度でもしつこくチェックに行くしか方法はありません。

多様性を受け入れることができてこそ、グローバルな舞台で仕事ができるグローバル人材です。ご自分が相手にどのくらいの精度を求めているのか意識すること、相手にとってその期待値はリーズナブルなのかどうかも考えてみることが大切です。

鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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