Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
皆さんは日本語で良いので、「ありがとう」を上手に伝えられるタイプでしょうか? もし答えが「NO」なら、英語でのコミュニケーションでThank youが足りてない可能性・大です。
日本文化は、謝ることを良しとする文化です。そこから派生して「すみません」という万能の言葉が出現したように思います。何か悪いことをしたから「すみません」というよりは、合いの手のように無意識に「すみません」と出てしまいます。
すれ違ってぶつかった時の「すみません」は本来の意味通りですが、エレベーターで扉を開けて譲ってくださった相手に対しての「すみません」、ドラッグストアで店員さんがお客さんにお釣りを渡す時に聞くことがある「すみません」はどうでしょう? 両方とも本来は「ありがとうございます」のような気がします。
万能な「すみません」に慣れてしまい、謝ることを良しとする日本人が、そのモードを英語でのコミュニケーションに持ち込み、「Sorry」を乱発し始めると問題が起きてしまいます。
英語でのSorryは、悪いことをしてしまったので謝りますという意味です。英単語が思い浮かばないとか、自分の英語が拙いからというようなコンテクストでは使わないほうが無難です。ましてや、交渉ごとでこちらが強く出たい時などに、ふっと Sorryと言ってしまったのでは、相手が混乱するどころか「自分の非を認めたじゃないか」とやり込められそうです。
英語圏でSorryと気楽に言わないほうが良いのであれば、もっと使ったほうが良い言葉は何でしょうか? 答えはThank youです。
オーストラリアに住んでいた時、日本人・オーストラリア人合同のホームパーティに招かれたことがありました。夕方になって、小さいお子さんがいらっしゃる家族が先に帰ることになったのですが、この3歳くらいかと思われるお子さんが、ホストに向かって”Mrs. Francis, thank you for today.” と言って帰ったのを見て、私は目が点になってしまいました。
近くにいた日本人で在オーストラリア27年の方が、「ねぇ、驚くでしょう? 私も子供が同じくらいの歳の時、似たような光景を見かけてびっくりして、人に優しくしてもらったり良いことをしてもらったら、thank youと言うのよ。Say thank you. って何十回も練習させたの」と声をかけてくださいました。3歳くらいの日本人のお子さんで、「今日はありがとうございました」と言える方は何人いるでしょう。文化が全く違うことを実感した瞬間でした。
私の職場での体験も共有させていただきたいと思います。会社員時代の最後10年くらい、私には常にボスが二人いました。日本法人でのボスと人事というファンクションとして海外にいるボスの2名です。どちらも外国人であることが多かったのですが、一度だけ、お一人が日本人だったことがありました。
この方が外国人とのコミュニケーション慣れした人間から見ると、言葉かけがあまり上手でなかったのです。いつもならこのぐらいやれば”Thank you” ”Excellent” “Good Job” “Well Done” と必ずボスに言ってもらえた場面で言われません(笑)そのことを不満に思い始めた自分にも気がつき、習慣とは恐ろしいと思いました。
しまいには、自分のパフォーマンスが彼の期待値に達していないのだろうかと不安になり、お伺いを立ててみました。「よくやってくれてるよね、感謝してる」と言っていただき安堵すると同時に、「全然通じてないんだけどなぁ」と思ったことも覚えています。
仕事で関わる上司、同僚、部下が外国人だったら、とにかくThank youを言うように心がけてください。相手は言われるのが当たり前だと思っているかもしれません。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。