Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
日本人が「すみません」の感覚で、すぐ”Sorry”と言ってしまうのは有名ですが、英語人にはこの感覚が通じないことをよく認識していただきたく、本日のテーマとします。
昨年同じ頃、オランダに出張した友人と、オーストラリアに出張した私に似たような事が起こりました。 似たようなこととは、フライトのキャンセルです。 友人は成田からオランダに発つ便が、私はオーストラリアから帰国する便がキャンセルになってしまったのです。まぁ運が悪いと諦めるしかありませんでしたが、興味深かったのは、それぞれの国の地上職員の対応です。
友人は成田で、日本人の地上職の方が恐縮してずっと謝ってらして、最後はこちらが「もう大丈夫です、フライトがキャンセルになったのは〇〇さんのせいではないですから」と、思わず言ってしまったそうです。 「一度謝ってくれれば、もうそれで十分。 正直、やりすぎ」だったそうですが、日本人は丁寧なことをよしとしますからね。
お国変わって、私の場合はオーストラリアの地上職の方が対応してくれました。
チェックイン・カウンターで、パスポートと航空券を差し出した途端、”Are you aware your flight was canceled?”と言われました。私は思わず ”What?”と叫んでしまいました。 どこからもなんの連絡も無いのに、キャンセルになったことに気がつくわけがありません。 翌日の同じ時刻発のフライトになること、ホテルが用意されること、AUD30のミールクーポンが出ることが説明されて、バスの場所が示されて「はい、終わり(笑)」でした。 ついに最後まで一度も、謝りの言葉はありませんでした。
日本人としてはかなり違和感がある対応をされたわけですが、その時にしみじみ納得したことがあります。フライトがキャンセルになったのは、この地上職員のせいではない、彼女の責任ではないことになぜ謝る必要があるのかというのが、英語人の思考なんだなということです。
翌日、優先搭乗をして、先導してくれた地上職員について行ったところ、到着したばかりの飛行機から降りてきたお客さんと流れが交じって止まって待つしかない、なんともお粗末な状況になりました。 私と隣にいた方は苦笑してしまい、「本当にプロセス考えるの苦手な国ですよね」と言い合いました。 驚いたことに、その地上職の方から”Bad Airport”と言う言葉が出たのです。 私と隣にいた人は失笑してしまいました。「乗客である私たちが言うのはいいけれど、この空港の職員であるあなたが言っちゃダメでしょう」が日本人の感覚です。 それより先に、ロジスティックスの悪さを謝るべきなんじゃないだろうかとも思いました。
ただこれも冷静に考えると、この乗客・降客の流れを決めているのは彼女ではなく、彼女の責任で起こっている珍事ではないのです。 オーストラリアは、ほとんどのアジアのように集団主義の文化圏ではなく、個人主義の傾向が高いので、彼女の中に、「この空港を代表している」とか「この空港の一員である」という感覚はないのだと思いました。
日本ではお客様が神様ですし、何か問題が起こった時、トラブルを起こした組織に属している人間は、とりあえず代表して徹底的に謝るのが当然ですが、英語圏では、自分に責任がないことに謝る習慣は無いという明らかな例でした。
次に英語人と話すとき、”Sorry”と言ってしまいそうになったら、例えば、”Sorry, my English is poor.” とか “Sorry, I forgot the English word.”と言いそうになったら、謝るに価するほど悪いことをしているかどうか瞬間的に考えてください。相手の英語力なんてone sentence聞けばわかりますし、そもそもネイティブでない人に完璧な英語なんて期待されていません。 英語が下手なこと、英単語を忘れてしまったことは「謝る」に価しないことなのです。 安心してください。
ついつい”Sorry”と言ってしまいがちかもしれませんがが、特に交渉ごとの時に安易に謝らないことは非常に大切です。 非を認めたと取られ、ネゴシエーションが不利になるのでくれぐれもお気をつけください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。