Global Career Guide
元・外資系人事部長、10,000人を面接した鈴木美加子です。本日のテーマは、「人脈構築」の必要性です。
タイトルに「45歳以降のキャリアのために」とつけたのは、45歳を過ぎると、役員クラスでない限り、転職が難しくなるからです。日本の労働市場では、残念ながら年齢差別がまだまだあります。人生100年時代、体力・気力ともに充実している方はたくさんいるのですが、同じ仕事ができるならもう少し若い人はいないのだろうか? という思考になるようです。
若いうちは、転職が比較的簡単にできるので、振り返ると職歴が多い方、就職氷河期と重なって、意図せず派遣社員を続けることになり、職場の数が多い方は結構おられます。45歳を超えて、転職でかなり苦戦されるのを、目の当たりにしてきました。そういう時に、人脈が広ければ、年齢に関係なく「彼/彼女なら、ちゃんと仕事をしてくれる」「性格がよくて、チームのみんなが、仕事がしやすいとわかっている」などの理由で、引っ張ってくれたり、紹介してくれたりします。求人サイトに登録しても、書類で落ちてしまう可能性がある方が、転職可能になるのです。
人脈は一晩では築けないので、今から努力することをお勧めします。どのように築いたら良いかですが、リアルにお目にかかることが大事です。SNSで巡り会ったとしても、実際に会って親交を深めないと、本当に困った時に助けてくれる間柄にはなれないものです。
では、どのような場所に出向くと良いかですが、一般的な異業種交流会は、名刺を交換して終わってしまうことが多いので、個人的にはあまりお勧めしません。何かを学ぶ場は、志が高く営利を目的としていない人が集まるので、良いように思います。例えば、英語をキーワードとした真面目な集まりでもよし、日本酒を飲む会、写真を撮る会、お料理教室など何でも興味があるものをさらに学ぶセミナーや講座に出ると、共通項のある方で、生涯おつきあいできる友と、巡り会える可能性が高くなります。
巡り会ってからも肝心です。人間関係は「Win-Win」なので、無意識だとしても、「Take(相手にやってもらう)」ばかりだと、関係が長続きしません。自分がサポートすることもあり、相手にサポートしてもらうこともある関係にしないと、家族ではないのでどこかで破綻します。
サポートにもいろいろあり、「辛い時に寄り添う」「話を聞いてあげる」「相談に乗ってアドバイスする」など、自分にできることはいくらでもあると思います。一見、相手が優れ過ぎていて、自分には何もお手伝いすることはないような方には、どうしたら良いでしょう。「自分ばかりがやってもらっている」と思う時には、時折、手土産を持参して、感謝の気持ちをきちんと口にするのもいいかと思います。私には、長い間のメンターがいてくださって、彼ご本人にはとてもお返しができないので、起業家のお嬢さんの応援をすることで、「恩返し」ならぬ「恩送り」させていただいています。
人脈がものを言うのは、転職の時ばかりではありません。仕事をする上で、自分にはない知識・経験値をお持ちの方がたくさんいてくださるのは有難いことです。会社員時代、人脈に助けられた実例をお話します。
シリコンバレーに本社がある、IT企業で人事の責任者をしていた時のことです。本社の採用チームから、「日本の採用コストが異常に高い、ヘッドハンターに払っている紹介料を半分にできないか」と言われたことがあります。その会社はシリコンバレーでは有名な企業でしたが、日本での認知度は低く、アメリカと同じように簡単には採用ができない事がわかってもらえず苦労しました。英語ができるIT人材は、競争が激しくて争奪戦なのに、紹介料を半分にしたら、弊社に人材を紹介してくれるヘッドハンターがいなくなります。
そこで、日本のヘッドハンター料率が高いのは、そういうマーケットだから仕方ないと、本社に数字で見せるしかないと思いつきました。当時、外資・人事部長の会の幹事長をしていたので、知り合いのIT企業の人事部長に「助けて!」と、メールを打ち、ヘッドハンターに紹介料として何%払っているかを教えてもらいました。そうそうたるIT企業の名前が並んだエクセルを本社に送ったところ、「わかった、これならしょうがない。それにしても、ヘッドハンターの天国だね」と言われて、事なきを得ました。知り合いに、ここぞという場で助けてもらえたのです。
仕事をしていく上では、様々な場面で、誰かに助けていただくことが出てきます。今日から、人脈を築く努力を始めましょう。一方的に自分だけが利を得ようとしない事が、長く続く人間関係を築くコツです。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。