Global Career Guide
元・外資系人事部長、10,000人を面接したグローバル・キャリア・カウンセラーの鈴木美加子です。本日のテーマは、“転職回数が多いことを面接で聞かれたらどう答えるか”です。
ただいま2冊目の本「英文履歴書の書き方&面接の英語(仮題)」の執筆が佳境を迎えています。これから転職活動をする方に、どのような側面をお伝えしたらハッピーなキャリアを築けるようになるだろうと、日々、頭を悩ませています。本日は、転職回数が多い場合、どう答えれば面接で不利にならないかをお届けします。
まずは、何をもって転職回数が多いと言うかから見てみましょう。転職回数が多いかどうかを判断するため、社会人年数を在籍した会社の数で割った数字(1社あたりの在籍年数)を出してみてください。例えば30歳で4社だと、22歳で大学を卒業したとして8年の社会人経験、4社で割ると2年です。平均1社に2年しか勤めていないことを繰り返している候補者ということになり、採用する側から見た時かなり危険水域です。
40歳で6社目だとします。社会人経験が18年、6社で割ると3年です。平均1社に3年で長いとは言えません。
採用する側が転職回数を気にするのはなぜでしょう? 一つの求人を埋めるには、採用コストがかかっています。広告を出して書類選考をして面接する人件費など金銭的なコストも然りですが、関わる社員の時間・労力もあります。やっと採用したと思ったらすぐ辞めてしまった、では困るのが本音です。また人間は習慣の生き物なので、4社の全てで2年間しかつとまらなかった人は、次の職場も2年だろうと推測されてしまいます。
ここをどう切り抜けるかは考えどころです。基本は「嘘をつかない、でも正直に答えすぎない」です。ジョブホッパーの印象をなるべく残さないように、具体例を見てみましょう。
<事実>
日本企業に入社し配属されたセールスの仕事が合わず2年で転職。外資のマーケティング部で仕事は楽しいが、先輩からのいじめに苦しむ1.5年を経て離職。半年のブランクを経て、違う外資のマーケティング部に入社して、同僚とそりが合わず2年8か月で転職。現在4社目29歳。
(改善前)
I joined a Japanese company upon University graduation. I was assigned to Finance Division where I couldn’t utilize my creativity at all. Moving to a non-Japanese company, I faced a co-worker’ bullying for one and a half year and ended up with quitting. I had a break for a half year and joined Marketing department of another foreign-capital company. I left the company because my relationship with my co-worker was deteriorating and joined another foreign-capital company.
(日本語訳)
大学卒業後、日本企業で経理部に配属されました。自分の創造性を使えないので外資系に転職しましたが、残念ながら同僚のいじめに遭い、1年半耐えましたが退職することになってしまいました。半年後、外資系のマーケティング部に復帰しましたが、同僚と折り合いが悪く会社を辞め、別の外資系企業に就職しました。
(ポイント)
正直に話しすぎています。これでは、人間関係に問題がある人とラベルを貼られてしまいます。パワハラ、セクハラ、いじめ、何かと問題が多い現代。人間関係が理由で辞めるまでに追い込まれた経験が1回あるのは、採用側も理解します。これが2回以上になると、候補者本人に問題があるのではないかと思うのも面接官の心理です。1回目は本音で良いですが、2回目は人間関係以外の理由にしたいところです。
(改善後)
Graduating from University, I joined a Japanese company where there was no say for the new grads in terms of job preference. I was assigned to finance where discipline to rules and process was very important while I am a creative person by nature. I judged I wouldn’t be successful in Finance and asked my boss to move me to Marketing. It didn’t work out.
I decided to take initiative to change my career path and joined a foreign-capital company in Marketing. There was one co-worker who was senior to me by position and I had hard time with him bullying me.
After one and a half year, I reached a point where I couldn’t endure his bully and quit the company.
I moved to Marketing of my second foreign-capital company. I supported marketing activities of one product launch and left the company after the successful close. I am Marketing Specialist at Company Dream.
(日本語訳)
大学卒業後、新卒に配属希望を聞かないことがスタンダードである日本企業に就職しました。経理部に配属されたのですが、独創性が高い自分の傾向に対し、規則やプロセスを則らなければなりませんでした。このままでは花開かないと思ったので、上司にマーケティング部への異動を願い出ましたがダメでした。
自分のキャリアは自分で切り拓きたかったので、転職活動をして外資のマーケティングに就職しました。残念ながらここで先輩のいじめに遭い、不本意ながら退職して半年休養しました。
その後、別の外資のマーケティングに就職して、ある商品の発売イベントに関わりました。無事にローンチが終わったので一区切りと思い退職し、現在、ドリーム社のマーケティング部でスペシャリストをしています。
(解説)
転職回数が多いという事実は消せませんが、採用担当者に残るイメージを修正することは可能です。新商品の発売を区切りに辞めたと言われれば、「もっとたくさんの商品発売イベントを手掛けたくなかったのだろうか」「次を決めないで辞めるとは随分勇気がある」と思われ、その延長線上でさらに質問される可能性はあります。ただ、発売前に辞めるという無責任なことはしていないので、2度人間関係が理由で辞めたとわかるよりはダメージが少ないです。
面接で嘘はダメですが、転職回数が多いことをどう伝えるかは、合否を左右します。事前によく考えておきましょう。
皆さんのキャリアが拓けることを祈っています!
好評発売中!
鈴木美加子 著『やっぱり外資系!がいい人の 必勝 転職 A to Z』
外資系に転職して活躍できる人、向いていない人、その違いとは――。
人事のプロとして25年間に累計1万人を面接・面談した著者だからこそ知り得る、経験と実績にもとづく“成功する”転職ハウツーを明かす。
Amazon販売ページはこちらから
https://www.amazon.co.jp/dp/441323121X/
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。