Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
「NOと言えない日本人」「日本人はわかりにくい」とはよく言われることですが、皆さんは、英語人もしくはそれに準じる方々にうまくお断りの意志を伝えられますか?
メルボルンで新たな人脈を構築し、日本文化の担い手を3人ほどご紹介させていただきました。海外にいる日本人もしくは英語人に日本の文化に触れる機会があることは素晴らしいと思っているので、やりがいあるボランティアです。ここでちょっと困ったことが起こりました。
3人のうち2人は、オーストラリアではない英語圏に留学されたご経験があり、英語ができるだけでなく、英語人のマインド、それに合わせてどのようにコミュニケーションしたら良いかわかってらっしゃいます。あとのお一人は、日本に生まれ育った方で、曖昧なコミュニケーションをされるため真意が相手に伝わりにくいのです。
ハイコンテクストvsローコンテクスト理論を耳にされた方も多いと思います。日本は極端ハイコンテクスト、つまりその文化で育てば文脈や状況や流れで意味がわかるので、はっきり物を言う必要がない文化です。英語圏のほとんどは、ローコンテクスト、つまり、口に出したことがすべて、行間を読んだり話し手の意図を推測するという習慣がないので、そのようなスキルを持ち合わせていません。
オーストラリアはローコンテクストの国なので、そこに25年もお住いの日本人はすっかりオーストラリア人化しています。YES・NOをはっきりして欲しい、むしろその方が親切というマインドになっています。
先ほどの3人の日本人に戻りますと、メルボルン・サイドの「⚪月⚪日に大きな日本文化のイベントがあるので、参加されませんか?」というお誘いに対し、
一人は「お誘い心から感謝します。ただ、もう少し準備期間が欲しいので今回は見送らせてください。将来、似たようなイベントはありますでしょうか?」とお返事されました。もうお一人は、「せっかくオーストラリアに行くのであれば、家族も連れて行きたいので、全員のスケジュールが揃うかどうか確認させてください。1週間以内にお返事します」と返されました。
どちらも、YES・NOをはっきりさせようという姿勢が見られます。いますぐ答えられないのであれば、いつ頃お返事できそうかを相手にはっきり伝えています。
もうお一人は「素晴らしいイベントですね」と、とっても丁寧にお返事されていました。難しいのは、相手の立場に立った時、「参加したい」のか「参加したくない」のかがこれではわからないことです。私は一瞬、「あれ?」と思いましたが口を挟まないでいたところ、海外が長い日本人、つまりはローコンテクストで行間を読まなくなったお相手は、「そうでしょう、なかなか評判のイベントなんです」とさらに追加の情報を送られていて、「参加する」と取ったようでした。
素晴らしいイベントですね、だから参加しますという流れだと自動的に解釈したのだと思います。日本人の奥ゆかしい物言いからすれば、素晴らしいイベントであることはわかりましたが、今回は参加しません/できません、という流れもあるのですが、「素晴らしいイベントですね」の後を濁してしまったので、相手は自分に都合の良いように解釈してしまったというわけです。
これは交通整理しないとこじれるかもしれないと、間に入らざるを得ませんでした。 海外在住であられる日本人には、はっきりした物言いでも大丈夫なので楽でしたが、奥ゆかしい日本人の彼に対してどう伝えればいいのかは、かなり頭をひねり自分でもおかしくなりました(笑)。私自身のマインドが純粋な日本人ではないことを物語っているからです。
日本では「気を遣う」ということが美徳とされているので、お断りするのは簡単ではないのかもしれませんが、英語圏で生活し仕事をしている人達は、話を額面通りにしか受け取らないので、曖昧で、どちらかわからない表現は避けないと交渉がうまくいかないことをぜひ覚えていてください
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。