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英語人が謝らないのはなぜか

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
日本人がついつい使ってしまう”Sorry”は、文化に根ざしていて使わないようにするのに時間と努力が必要な単語です。逆に英語人はなぜ、なかなか謝らないのかを今日は考えてみましょう。

オーストラリアから帰国して、主宰するグローバル人材塾の新年会の打ち合わせで、幹事の一人である10期生とミーティングをしました。打ち合わせ後、雑談をしていて二人が同じ経験を1月にしていたとわかりました。

同じ経験とはフライトのキャンセルです。彼女は、日本からフィンランドに向けて発つ便が、私はオーストラリアから日本に帰国する便がキャンセルになってしまいました。興味深いのは、それぞれの国の地上職員の対応です。

世人塾の卒業生は日本から発つはずがキャンセルになり、日本人の地上職の方が恐縮してずっと謝ってらして、最後はこちらが「もう大丈夫です、フライトがキャンセルになったのは近藤さんのせいではないですから」と言わずにはいられなかったそうです。海外の経験ある彼女からすると、「一度謝ってくれれば、もうそれで十分」だったそうですが、日本人は丁寧だし謝りすぎなのでしょう。

お国変わって、私の場合はオーストラリアの地上職の方が対応してくれました。チェックイン・カウンターで、パスポートと航空券を差し出した途端、”Are you aware your flight was canceled?”と言われました。私はびっくりして、”What?”と言ってしまいました。なんの連絡も無いのに、キャンセルになったなんてわかるはずはありません。

翌日の同じ時刻発のフライトになること、ホテルが用意されることと、AUD30のミールクーポンが出ることが説明されて、バスの場所が示されて「はい、終わり(笑)」ついに最後まで一度も、謝りの言葉はありませんでした。日本人としてはかなり違和感がある対応をされたわけですが、その時にしみじみ納得したことがあります。

フライトがキャンセルになったのは、この地上職員のせいではない、彼女の責任ではないことになぜ謝る必要があるのかというのが、英語人の思考なんだなということです。

翌日、ビジネス・クラスの優先搭乗をして、先導してくれた地上職員について行ったところ、通路の左に停まっていた飛行機から降りてきた乗客が道をふさぎ、通路の右に停まっているらしい飛行機に乗りたい私たちが身動きできなくなり、止まって待つしかない状況になりました。私と隣にいた方は苦笑してしまい、「プロセス考えるの苦手な国らしいですよね」と言い合いました。

驚いたことに、その地上職の方から”Bad Airport”と言う言葉が出たのです。私と隣にいた人は爆笑してしまいました。「乗客である私たちが言うのはいいけれど、この空港の職員であるあなたが言っちゃまずいでしょ」が日本人の感覚です。

ただこれも冷静に考えると、地上職の方が飛行機から変な経路で乗客を誘導したわけではなく、彼女の責任で起こっている珍事ではないし、彼女の中に、「この空港を代表している」とか「この空港の一員である」という感覚はないことが明らかでした。

日本ではお客様が神様ですし、何か問題が起こった時、トラブルを起こした組織に属している人間は謝るのが当然です。英語圏では、自分に責任がないことに謝る習慣は無いというクリアーな例だと思います。

ついつい”Sorry”と言ってしまいがちな日本人ですが、特に交渉ごとの時に安易に謝らないことは非常に大切です。非を認めたと取られ、ネゴシエーションが不利になります。

英語で外国人と対等に仕事をするために、他にどのようなことに気をつけたらいいのか学びたい方は、グローバル人材塾・世人(せじん)塾の2時間オープンセミナーに是非お越しください。 詳細は、http://atglobe.jp/lp

鈴木美加子

グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師

NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)

株式会社AT Globe

強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。

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