Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
春は新入社員が新たなスタートを切る季節、社会人10年選手が自分の将来を見直す時期でもあるようです。
個別キャリアカウンセリングのお仕事が続いていますが、気になることがあり、それを今日の記事にさせて頂きます。
冒頭の、「英文履歴書の作成をネイティブに依頼するのは、得策か?」ですが、みなさんはどうお考えでしょうか。
なんとか履歴書のスクリーニングを無事通りたい、英語で履歴書をどう書けばいいのかわからない、ネイティブに頼めば完璧だろうなど、諸事情で、英語ネイティブの方に一(いち)から英語履歴書を書いて頂くことを考える方も多いでしょう。
ネット社会の現在、検索すればリーズナブルな価格で、英文履歴書を作成してくれるサービスが簡単に探せます。
でも、ちょっと待ってください。
外資人事経験25年の身としては、下記に該当するリスクがあるなら、やめておいた方がいいとアドバイスさせて頂きたいのです。
1.候補者の英語レベルと、英文履歴書の英語レベルが合わない
例えば、TOEIC700点と履歴書に書いてあったとします。英文履歴書に文法のミスが全くなく、レベルの高い難しい英単語が2, 3現れたら、おかしいとすぐわかります。会って話したこともない日本人の英語レベルを憶測し、ネイティブの方が英語力を落として書くのは大変なので、自然と不釣り合いなGAPが、生まれてしまいます。
2.英文履歴書には、使わない英単語が出てくる
これは、依頼したネイティブの方に、人事もしくは採用のご経験がなく、どんな単語を英文履歴書に使うのかをご存じない場合に起こり得ます。直近、スカイプでご相談を受けた例ですと、transferred という単語が多く、オリジナルの日本語・履歴書をミーティングしながら送っていただいたところ、「異動」と書かれていました。単純に翻訳してしまったのですね。
日本企業では異動がよく起こると思いますが、それを英文の履歴書に、transferred と書く必要はありません。「この英文履歴書を書かれたのは、ご自分ですか?」と伺ってみたところ、案の定、「違います」とのお返事でした。
他人に依頼した英文履歴書を拝見して、人事が思うことは、必ずしも「ずるしてる」ではありません。単純に、候補者に対して、がっかりします。
転職という大事なイベントの主人公が、自分を紹介するツールを誰かに作ってもらうとは、あまりに主体性がなく、そんなことで外資でやっていけるんだろうかと心配になります。
さらに、面接の際に困ったことも発生します。
確かに候補者は、英文履歴書は自分で作成しなかったけれど、「面接で言ってることは全部本当」なのか、それとも、「面接でも自分を大きく見せるために虚偽を語っている」のだろうかと、面接官がつい考えてしまうのです。
すでに、「自分で履歴書すら作成していない」というバイアスがかかっていますので、まぁ、候補者には厳しい面接になるかもしれませんね。
英文履歴書は、自己をPRする最大のツールであり、同時に転職のプロセスにおける最初の入り口です。
そこを抜けたら、面接が待っています。英語力を試すために、面接が英語に切り替わることも当然あるので、付け焼き刃のメッキは簡単に剥がれてしまい、かえってマイナスになります。
それでは、英語で履歴書を書いたことがなく、ご自分の英語力に自信がない方はどうしたらよいかです。
まずは、ネットで英文履歴書の書き方を探して、ご自分で書いてみてください。
下記は、DAIJOB.com社の英文履歴書「書き方の基本」です。要点がわかりやすくまとまっているので、初心者にもかなり参考になるだろうと思います。
出来上がったものを、ネイティブで英文履歴書を添削することがプロの方、もしくは日本人で英語レベルが高い人事出身者に見てもらえば、候補者の英語力をベースにした、よい英文履歴書が出来上がると思います。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。