Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
「多様性への配慮」を本日のテーマにします。
グローバル人材の定義はいろいろ存在しますが、私は「いつでもどこでも誰とでも英語で仕事ができる人材」と定義しています。これだけでは漠然としていますので、「コミュニケーション」・「語学」の面から考えてみます。
以前、メルボルンで最もグローバル度が高いと思ったのは、バスツアーのドライバー兼ガイドさんのJohnでした。みなさん、海外でバスツアーに参加したことがあるようでしたら、その時のことを思い出してみてください。彼/彼女の英語、聞き取れましたか? NOの方が多いのが個人的な経験です。
ツアーが始まりJohnがマイクを持って話し始めてから2分で、「この方、相当経験があるかトレーニングを受けてるな」と感じました。全員外国人のツアー客に向けて、ゆっくり・口を開けてはっきり話そうとかなり努力してくれていました。
休憩時間の時Johnに話しかけたところ、「自分の英語はオーストラリア訛りが強いとわかってるんだ。僕のお客さんは、みんな外国人だから訛りをなるべく出さないように、聞き取りやすいように話すように注意してるよ。プライベートの時の僕とはぜんぜん違う英語かもしれない」と笑っていました。プロですね。多様性を理解し、相手に合わせて仕事をしようとしているグローバルなところ素晴らしかったです。
オーストラリア話が続きますが、全豪オープンを観に行ったことがあります。世界中から観客が訪れる多様性の高いグローバルなイベントです。コートへの各出入り口には必ず関係者が一人いて、お客さんの出入りを誘導していました。正規のチケットを持ってるのに、中になかなか入れず待たない状況が理解できず理由を質問しました。この時の大会関係者の英語が、ゆっくりはっきりで「さすが外国人対応に慣れてる」と驚きました。初めて全豪オープンに来る沢山の外国人に対応するのに、オーストラリア訛りの早口で答えていたら誰も理解できません。ちゃんとわかっていて、相手に合わせているのです。
所変わって日本で体験した、残念な例をシェアします。ある日本企業で管理職研修をさせていただいた時のこと。参加者は全員、日本語ができる外国人で海外からもこの研修のために来日しています。日本語ができると書きましたが、どのレベルでできるか蓋を開けてみないとわかりません。丁寧語・謙譲語・尊敬語がある日本の敬語は本当に難しいですし、英語から音を拾っているカタカナ語も外国人を悩ませます。
研修が始まり、実は参加者の日本語レベルにかなりのバラツキがあることに気がつきました。なぜか日本人担当者は気にかけていないようでした。私は用意してあった内容をそのままやったら理解できないと判断したので、午後の分を全部その場で差し替え、スライドも逐一やさしい日本語に読み替えたり、相手に合わせてデリバリーしようと努力しました。
研修が終わって、担当者の方がラップアップと翌日の予定などをお話に来られた時のこと、DJかと思うスピードで話され「自明の理」のように難しい言葉を使われたのを拝見して残念に思いました。相手と立場を逆にしたら、早口でない方が有難いし英単語のレベルが高すぎたら、そもそも理解できないかもしれません。
皆さんは、多様性と協働すること得意ですか? 日本式が当たり前と無意識に思い込み、外国籍の方に押しつけないグローバル人材を目指しましょう。この先、労働人口が減ると明確に見えている日本で仕事をしていく上で大事なスキルです。 多様性との協働は慣れの部分が大きいので、マインドを切り替えて「日本の文化」も「相手の文化」も尊重したいです。語学は文化を形成する大きな要素なので、外国人と日本語で話す時は配慮して生産性を下げない努力が求められます。
Xでも毎日発信しています。 ID: @Mikako_Suzuki 良かったらフォローしてください。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。