Global Career Guide
元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。
今日のテーマは、欧米人は評価のタイミングが早い傾向にあるので、気をつけましょうという内容です。
ある研修会社が、日本語で研修教材を作成できる人を探していました。 研修の分野が私の専門ではなかったので、優秀だとわかっている知り合いを紹介しました。 これがなぜかはわからないのですが、彼が、らしからぬ雑な仕事をされたらしく、実際の講師が苦労して参加者からの評価も低いという結果になってしまったそうです。
研修会社のカナダ人社長はご立腹。無理もないですが、その一件で「彼は仕事ができない」と決めつけたようです。起業したての知り合いが仕事先を失うのは良くないし、本来お仕事のできる人だとリアルに知っていたので、説得しようと試みましたが無理でした。 1回で評価して、その評価が覆らないのは怖いですよね。
その後、彼なら絶対にできるというような仕事も声がかかることは二度とないという状況です。最初が肝心なのはどこの国でも同じでしょうが、単発で判断するは欧米人の癖です。
そう言えば会社員時代、私のオーストラリア人上司の前で、初めてプレゼンした部下がしくじり、「彼女は仕事ができないわね。」と決めつけられたことがありました。 英語力はあるし、プレゼンであがるようなタイプではないと、ドライランを事前に一緒にしなかった私も甘かったです。 この時も、評価を覆すのにものすごく時間がかかり閉口しました。
日本人からすると、いつも一緒に仕事をしていない人が15分の英語という外国語でプレゼンを見たくらいで、普段の仕事ぶりの何がわかるのだろうなのですが、 プレゼンテーション・スキルが必須のビジネス・スキルである英語圏ではそれがスタンダードなのです。「郷に入っては郷に従え」のことわざ通り、苦手な方はスキルを磨くしかありません。
以前、企業研修でアメリカに10年いた方が参加者の中にいらしたことがあります。彼に「向こうでは高校生くらいからプレゼンテーションを学ぶからさすがお上手ですね」と声をかけたら、「いやいや、小学生からやっています。Familyとかのお題でクラス全員の前で発表するんです」と教えてくれました。いやはや、文化の違いですね。自分の意見を持つように教育するアメリカと、人前で発言しないことを奨励する日本の教育がいかに異なるかを現していると思います。
小学生の時から鍛えられている人たちと、外国語でプレゼンを競争しなければいけない日本人はその分、努力しないといけないですね。主宰するグローバル人材塾・世人(せじん)塾では、毎回レッスンの冒頭で1分とか3分のスピーチをして録画もします。最後のレッスンで10分のスライドありの本格プレゼンをして、MVPを獲るのはそのクラスで一番英語力のある方ではなく、きちんとリハーサルしてある方と決まっています。英語にどれほど自信があろうとなかろうと、外国語である以上は母国語と同じだけの単語・フレーズ数を持っているわけはなく、リハーサルしてあるかどうかは出来栄えを大きく左右します。
プレゼンに限らず、初めて欧米人と仕事をするときは、自分の仕事のクオリティに十分気をつけてください。もちろん、常にベストが尽くせれば良いですが、なかなかそうもいかないので「最初が肝心」と一番最初の仕事はベストを尽くせるといいですね。
欧米人は、評価のタイミングが早いを覚えておいてください。
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
著書「やっぱり外資系がいい人のAtoZ」(青春出版社)
「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。